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核兵器の怖さを知らない国が核兵器を持つ恐ろしさー恐怖の均衡はたくさんだ

 広島と長崎に投下された原子爆弾の威力は、なかなか想像できないものです。ただ、投下直後の人々や街の姿は映像や写真に残っているので、これらを記憶遺産にとの政府の推薦方針は歓迎できます。
 一方、ニューヨークで開かれている核兵器禁止条約の第2回締約国会議には、米英仏中露の核兵器保有5大国が条約に参加せず、日本政府も参加を見送っています。2023年11月29日の信濃毎日新聞によりますと、議長のメキシコのデラフェンテ前国連大使はガザへのイスラエル侵攻やウクライナへのロシア侵攻などを背景に「核使用のリスクはかつてないほど顕著だ」と危機感を表明しています。

2023年11月29日付信濃毎日新聞1面より

 当方でも、核兵器の持つ怖さの一端だけでも伝えたいと思い、広島で原爆の熱線を浴びて、表面がガラス状になった「原爆瓦」を収蔵しています。展示会やTwitterでたびたび紹介させていただいていますが、あらためてこの機会にご覧ください。

広島の原爆で被爆した瓦。転載禁止。

 こちらの瓦片は、爆心地近くの元安川でみつかったもの。右端は瓦が重なっていて熱線の影響を受けていませんが、残りはガラス質になった表面がケロイド状になっています。表題写真と下写真がその拡大部分です。

原爆の熱戦が当たった部分がガラス状に。転載禁止。

 たとえば瓦の表面をバーナーで焼いても、黒こげになるだけでこのようにガラス質に変化することはありません。原爆の激しい熱線により、一瞬にこのような状況になったのです。ここにもし人がいたらどうでしょう。焼き物の瓦とは違う、生身の人間は一瞬で焼け、爆風でちりぢりになったことでしょう。それはまさに、蒸発するという形容詞がぴったりなのではないでしょうか。それこそ、残るものがあるとすれば影だけでしょう。
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 もう1点、こちらは、爆心地から約1キロの地点で、道路工事の際に発見されたという原爆瓦です。

上側が瓦が重なっていて熱線を浴びなかったとみられる。転載禁止。

 さきほどの原爆瓦ほどではありませんが、やはり表面には火ぶくれのような変形が認められます。瓦の重なりの境界を見て取れるほどです。

ガラス状の変形がある。転載禁止

 原爆の恐ろしさは、もちろん爆発時の威力だけではありません。残留放射能による放射線の影響からしても大変なことです。広島でも、生き残ったり救援に入ったりした人たちが放射線の影響でたくさん亡くなられています。まさに、使ってはいけない兵器なのです。
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 しかし、米国の映画ではハリウッド版「ゴジラ」など、核爆弾を爆発させる場面がちょくちょく見られます。閃光が発せられるだけの描写など、核兵器を「威力の強力な爆弾」という程度にしか認識していないように思えます。それは、アメリカだけのことではないでしょう。

 当時の記録や、こうしたモノとともに惨禍を語りつぐことで、その認識を変えていくのが大切なのではないでしょうか。まずは、自分の声の届く範囲から伝えたい。核兵器が使われた場合に、その下で被害を受ける人たちの姿を共有することが大事です。現在ウクライナで続いているロシアの侵攻は、通常兵器での戦いではあっても、一度始まればなかなか止まらない戦争の姿をあからさまにしています。核兵器を使うとなれば、それも局地的に止めることなど不可能でしょう。核という最後の選択を下した人たちには、その下で蒸発する人のことなどみじんもないでしょうから。

 今回の会議には、NATO加盟国のドイツ、ベルギー、ノルウェーがオブザーバーながら参加しています。核兵器使用の危機感が動かしたのではないでしょうか。まずは、核兵器の削減に踏み込んでいくこと。これこそが恐怖を和らげる第一歩なのではないでしょうか。

  追記 2024年10月11日、日本被団協のノーベル平和賞受賞が発表されました。核兵器の危険性を訴え続けて世界に核兵器の実態を知らしめて核兵器廃止運動の基礎をなしていたと。大変喜ばしいとともに、形式的な懇談などで相手にしなかった日本政府においては、核兵器禁止条約の調印と批准を強く求めたい。

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信州戦争資料センター(まだ施設は無い…)
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