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『作楽(さくら)』をはじめとする5代目のモノづくり

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となみ織物5代目が制作する帯や着物のモノづくりを紹介。 その一つシリーズ『作楽』は、『楽しさをつくる。』それをコンセプトにモノづくりをしているシリーズです。今まで帯にはなかった…
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#紹巴織

作楽#26 『パズル』

◯キッカケ図案に出会った時、なにかを見た時、絵画なのか彫刻なのか、昔のハギレなのか、インスピレーションをもらった。そのとき、思い通りの図案があれば良いのですが、無い場合でも織物にしておきたいときがあります。 その場合は、地部分をつくる感じで織物をつくります。そしていくつかの色で試験織を織り、寝かして待つ。 それからしばらく時間が経ち、その織物を忘れていたとしても仕方ありません。なにかのキッカケ、たとえば新しいデザインや図案に出会った時にでも、そのつくっておいた織物や地紋を思

作楽#24 アフリカの渦

1、デザイン/渦 シンプルな文様、デザインは簡単そうに見えて、創造するのが難しい。。帯を制作していて、常に感じることです。原始的、根源的、プリミティブなモノというのは、シンプルでこれ以上差し引くことができない、だからこそ力強い。複雑なデザインを帯にする際も、その力強さが消えない様に、突き詰めていけば、シンプルに立ち帰れる様に意識して制作しています。 この渦柄も同様、全体に見ると、蕨の様な渦が複雑に絡み合っている様に見えますが、実際は地の濃い青が抜けた様に表現する渦と金銀糸

作楽#23 星と月(紹巴織)

1,デザイン デザインは名前の通り、星と月、それに太陽をモチーフに制作したもの。これらは、日本でも様々な帯や着物に使用されている柄。ただ、この星と月は西アジア、砂漠地方のものを元にしています。 文様が持つ意味としては、三日月は、進歩・発展。星は知識や希望を表す柄です。歴史上、現在もビザンチン、オスマン、ギリシア・・・などで大事にされている文様です。日本でも、月はいうまでもなく、星は五芒星として、魔除けとしても神聖に扱われてきました。 この帯では、左三分の一は星。右は三日

作楽#22 Henna ichimatsu(ヘナ市松)

1,デザイン この名古屋帯の意匠は『henna(ヘナ)』をモチーフに制作しています。 ヘナというのは、元々は古代のハーブ。インドやアフリカの北部の乾燥した土地に育ちます。 歴史としては紀元前5000年ほど昔から、髪や爪、皮膚を染め宗教的な儀式に使用されていました。インドのヒンドゥー教では、幸運の神様ラクシュミがこのヘナを好んだため、結婚式などで、ヘナタトゥーをすることで、お祝い、長寿・子孫繁栄、豊穣などの幸せをもたらす印ともされています。 また、ヘナで描かれたデザイン

作楽#17 投網に鯉(荒磯)/紹巴織

1,デザイン まだ、作楽がなかった時代のモノづくり。この帯は、図案家によって描かれた図案をベースにモノづくりしました。 デザインは、大きく広がった投網、それに掛かったか、掛かりそうになった鯉が一匹。着物・日本の文様で「鯉」といえば、「荒磯」(あらいそ、ありそ)柄が有名で、荒波に鯉が跳ねる文様を思い浮かべます。室町時代に大陸から伝わった名物裂の一種です。 「鯉」は登竜門の故事「黄河にある竜門というところには、激しい急流があり、そこはほとんどの鯉は遡ることができないが、さか

作楽#15 渦巻き/紹巴織

1,デザインお太鼓にすると、全体を占める大きな渦。意外に作楽に多いモチーフです。 (これから様々な渦が登場予定です) ◼︎帯の紹介#35 古代は文様は自然をお手本につくられ、この渦も生活に密接する水、波紋や流水などからきていると言われ、世界中に分布しているデザインです。 ケルト文様、縄文式土器など ◯紋丈 織りの帯を作る要素でつくり手として気にするのが、この紋丈。柄の長さです。これが長いほど、制作に時間と手間、コストが掛かります。ただ、大きい柄には、それをするだけの魅力

作楽#14 作楽ぼかし七宝繋ぎ文様/紹巴織

1、デザイン/七宝繋ぎ柄作楽シリーズはつくる楽しみ。という部分から、少し変わった柄が多いです。アリス英字とか。では、そのコンセプトで定番と言われる古典柄をつくるとどうなるか? ちょうど礼装用やセミフォーマルの帯をつくって欲しいとの声も頂いていましたので、制作した帯になります。 表には動きのあるデザイン。 裏はそれとは反対に静けさのある文様にしています。 糸使いも極めてシンプルに上げています。 こだわりは、地の部分。ここには鹿引織という技法を使い、鹿毛の刷毛で染めた様に、

作楽#13 英字アリス帯/紹巴織

1,デザインこの帯のデザインは「不思議の国のアリス」の英字を元に制作しました。英字の帯、染帯ではあるかもしれません(それも見かけたことはありませんが・・・)が、ありそうでないデザインです。 昔は文字が意匠の中に入った帯、『かな』や『漢字』を使ったものはありましたが、今はほぼ見られません。もしかして、『文字』というのは相性は悪いのかも・・・。 図案をつくっている最中の社内は、上のような空気も漂っていました。 ちなみに、この帯を制作した時期としては、先日紹介した、『白ウサギ

作楽#11 アリス /紹巴織

1,デザイン帯の元は図案。その図案は①図案展で競り落とす、②自社で図案を描く・制作する、③なにを元に(例えば、人間国宝の作品から許可を頂き、制作する)、などパターンはいくつかあります。 会社としては①〜③までバランス良く、私の場合②、③が多いです。ちなみに「作楽」は②がほとんどです。この②の場合、デザインするときは、様々なところからヒントを頂きます。この帯に関しては「不思議の国のアリス」の本からイメージしました。 おそらく子供のときに読んでいたはずですが、久々に読んでみま

作楽(名古屋帯)#9 バームクーヘン/紹巴織

1,デザイン 小さな円を重ね合わせた渦の図案。 人間がはじめの頃につくったであろうデザイン、例えば線や縞、格子、渦・・・。そういった原始的な図案を作楽シリーズでは帯の形にすることが多くあります。 普遍的な柄をアレンジする、配色で遊び、モノづくりする側も楽しく制作させて頂きます。 今回は、【青】。最初は単に渦、と呼んでいたところ、見た目からいつの間に柄名はバームクーヘンに。一度、愛称がつくと、もうバームクーヘンにしか見えなくなります(笑)。 他にも【茶】、【ベージュ】な

作楽#8 あさ蛍/紹巴織

1,デザイン京都の堀川通り、朝の光で照らされたイチョウをモチーフに制作した袋帯です。 帯のデザインとする時には、イチョウではなく、もう少し抽象性の高い樹木をモチーフに、黄金のような綺麗な光がスーッと入っていく様子を表現しました。横段上に取った細かな地紋は、空気が動き出すのを織りで表現、イメージとしては光が上から下に入って来る、青いホタルは光に惹かれるように、上へスーッと動くそんな流れです。 のちのち、羽織にする際にこの地紋に大きく着目して制作を進めましたが、この帯にとってそ

作楽(木花) #6 木花梅鉢/紹巴織

1,梅鉢紹巴織で織り上げた作楽シリーズの中の木花梅鉢です。 梅鉢は古典柄、梅の花を正面から見たところを図案・デザイン化された文様。加賀の前田家の紋でも有名です。 京都で梅といえば、北野天満宮の『梅』=菅原道真も愛した、古来より日本人と密接な関係を持つ花です。 2、デザイン・配色通常、1色もしくは2色でシンプルに表現される梅鉢を黒で縁を取りながら、括りを入れ、4色+αの多色で製織できる設計をしています。梅鉢の中はグレーを地色とミックスすることで柔らかく、唐草の中に入る水色・

作楽#3 カトレア/紹巴織

1,カトレアをモチーフにした袋帯柔らかな色合いを織で表現した、作楽シリーズ、カトレアの袋帯です。カトレア(カトレヤ)は洋ランの一種で、大きな花。花の佇まいや様子から、『魅力、貴賓、優美』という意味を持っています。 2,織は紹巴織緻密な表現が得意とする織物。この帯ではその特長を生かし、地は①オフホワイトと②白に近いグレーをミックスした③色をつくり出し、花は出来る限り縁をボカシています。 特にこのボカシを拡大すると・・・。 遠くから見ると、筆で描いた様に柔らかな表現をする

作楽#2 作楽数珠/紹巴織

作楽シリーズの一番最初に制作した帯 1,帯デザインについて文字通り数珠をデザインした帯になります。数珠、英語で書くとROSARY(ロザリオ)。祈りに通じる柄です。もちろん、その意味も持ち、また人と人を繋ぐ、繋いだ人がまた人を繋ぎ続ける。そんなデザインでもあります。 通常、帯を制作する工程の一番最初は図案からはじまります。 これには①図案家等に描いてもらうもの。 となみ織物で多いのは人間国宝や画家、作家などの②着物とは離れた世界の作品を元に図案を起こすモノ。 そして、③モノ