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作楽#26 『パズル』

◯キッカケ

図案に出会った時、なにかを見た時、絵画なのか彫刻なのか、昔のハギレなのか、インスピレーションをもらった。そのとき、思い通りの図案があれば良いのですが、無い場合でも織物にしておきたいときがあります。

その場合は、地部分をつくる感じで織物をつくります。そしていくつかの色で試験織を織り、寝かして待つ。
それからしばらく時間が経ち、その織物を忘れていたとしても仕方ありません。なにかのキッカケ、たとえば新しいデザインや図案に出会った時にでも、そのつくっておいた織物や地紋を思い浮かべることができれば、起こします。変更の必要があれば、出会ったデザイン用に多少の手を加え、改良、そして上に柄を乗せて帯づくりしていきます。

こんな風に、柄部分と地部分に時差があるモノづくりも時々行っています。


今回の帯は、これに近いモノづくりでできた帯になります。デザインは乗っていて、これで完成形。
ただ、まだまだこの地紋の可能性を感じるため、頭の中では無地状態で待機しています。


◯織組織:紹巴織/宵待草地紋


通常の紹巴織は、1色あたり2本の糸を使います。それが常に地部分には3丁通り、帯地をつくります(言い換えると、無地を織るだけでも常に3つの杼が通っています。)。普通であれば、これだけ色数を使えれば、シンプルな柄は十分に制作できます。ただ、紹巴織では、この地部分を非常に大事にした織物に、ここでキッチリと土台を築き(崩れない様に)、その上に緻密な柄を乗せていくモノづくりですので、これだけの手間を掛けてつくります。

そして、今回の織物は、その紹巴織の地部分の糸1色あたり2本の糸を1色ずつ色を変えています。そして、常に3丁通るため、3×2で、地部分には常に6色の糸が通ることになります。

それを表に出したり、他の色を助けたり、混ざって違う色となったり、そんな一色何役もの役割を持たせます。そうすることで、複雑な地をつくる可能性ができます。

あとは、それを指示する意匠図・紋図次第。作り手次第で、どこまで広がるか分からない可能性を持った織物になります。


◯織物、帯として

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織組織としては、6色の糸が常に地に通るため、複雑なことができます。今まで3階建だったものが、6階建になり、その組み合わせも膨大。

この膨大な組み合わせも一つずつ数学的に試していけば、なんとかなりそうですが、この織物では横に通る糸との関係でも、表に出る・目に見える色が変わってくるため、ある意味で予測不能。→いまのところ経験で何とかするしかありません。そのため、帯の形にする前には、試験織として色見本を数多く取りました。

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その試験織は、通常の帯の6−7倍くらい取ったので、この複雑な織組織のパターンを残しておこうとして、帯にしてしまったのが、この袋帯パズルです。
デザインはパズル柄、試験織段階では、ただ単に市松だったのが、それよりもお洒落。そして、難解さ・時間を掛けたことをデザイン自体に入れたい、と思ってパズルにしてみました。

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パズルの縁取りは、一色で出し。それ以外は、6色の組み合わせと地紋で変化を付けています。収拾不能とならないために全種類のパターンを帯にいれるのではなく、まずよく使うものを中心に配置しています、

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地の糸だけでこれだけの色数を作ることができますので、デザインと組み合わせることが上手くできれば、面白いモノが作れると思います。たとえば、白黒グレー濃淡だけとか・・・。


◯裏地/きりんひょう

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