ドラマ『舟を編む~私、辞書つくります~』は、私にとって宝物のようなドラマになりました
とうとう最終回を迎えてしまったドラマ『舟を編む~私、辞書つくります~』。まだ余韻に浸っています。
毎話毎話感動の連続で、言葉に対する想いがもっともっと深くなって、このドラマが愛おしくて愛おしくてたまらなくなりました。このドラマと出逢えて本当に幸せでした。
全十話の感想を書こうと思ったら、本一冊書けてしまうくらいの想いが溢れ出てきてしまいそうです。
池田エライザ演じる主人公・岸辺みどりの成長物語ではありましたが、登場人物一人一人に丁寧にスポットを当てていて、みんなの辞書作りに対する熱量が嘘偽りなくストレートに伝わってきたところに説得力がありました。
「大渡海」の辞書編集チームのメンバーはもちろん、宣伝部に身を置きながらも"もう一人の辞書編集部員"として常にいい働きをしてくれた西岡。"究極の紙"作りに、みどりと共に粉骨砕身奮闘してくれた宮本。装丁オファーに応じてくれた後、何度も悩みながら最高の表紙を生み出してくれたブックデザイナー・ハルガスミ。
一冊の辞書が完成するまでの、気の遠くなるような長い年月を共に闘い続けてきた仲間との絆はかけがえのないものであって、こんなやりがいのある仕事に携われる辞書編纂者の人たちが心底うらやましく感じました。
みどりが宮本との会話から気になって確かめた「血潮」という言葉。「千入」という"ちしお"しか「大渡海」に入っていないことにみどりが気づき、そこからもう一度「用例採集カード」100万枚を「大渡海」25万2,000語の見出し語と照らし合わせる作業が発生したときにはドラマなのにドキドキしました。
「穴の空いてるかもしれない舟にみんなを乗せて、海には出せません」
この馬締の言葉に大学生のアルバイトたちも奮起してくれて、2か月かかる作業を2週間でやり遂げることができたときには、まるで自分もそこに参加したような気持ちになりました。
宮本とみどりの想いが通じ合った時の二人の会話も忘れられません。母親との幼い頃からのわだかまりの経験から、愛する人が突然いなくなってしまうことを恐れるみどりの不安の吐露を打ち消す宮本の優しい言葉が胸に響きました。
最終回は「大渡海」監修の松本先生が食道がんになってしまい、コロナ禍で面会もできない中で迎える校了までの日々がまず描かれました。
馬締はコロナによって生まれたたくさんの言葉たち…集団感染、クラスター、ヒト・ヒト感染、咳エチケット、不要不急、パンデミックetc…。それらを「大渡海」に載せるべきではないかと言い出しました。
荒木は時間がないと反対しますが、そこに松本先生の奥様が…。奥様が持参したのはなんと、松本先生が集めたコロナ関連の「用例採集カード」と執筆された言葉の説明原稿。
みどりはじめ、辞書編集チームは松本先生の情熱に情熱で応えたいと。荒木も「やってくれたな。辞書の鬼」と。
ここから校了まで松本先生の情熱をなんとか「大渡海」に盛り込むために、再び奮闘する辞書編集チームの面々。3月末日、無事に校了を迎えることができました。
その後の松本先生からのメールも感動的でした。コロナ禍において、より誰かと何かと″つながる″ことの大切さを実感した今だからこそ、この松本先生の言葉の意味が心に沁みます。
馬締の奥さん、香具矢の存在も大きかったですね。いつもみどりのよき理解者であり、馬締を寛大な心で受け止めてくれる最高のパートナー。
コロナ禍で自分のお店を一時閉めて京都に行くと一人で決めた香具矢。「大渡海」の校了までみどりも馬締も香具矢の苦しみに寄り添うことができなかった…でもそういう二人が好きだからと。香具矢のこの強さが馬締を支えてくれているんですね。二人の愛の形は、二人だけの唯一無二のものだと痛感しました。
そうして迎えた刊行祝賀会。松本先生はリモートでの挨拶でしたが、辞書編集部員一人一人へ感謝の言葉を。その言葉に涙涙でした。
最初は辞書作りに何の興味もなかったみどりの心は、作業をしていく中で大きく変化していきました。
このドラマは心に残したい言葉たちが満載で、どれもこれも全部書き留めておきたいくらいでした。
馬締のこの言葉も私にとって大切な言葉になりました。
「それでも言葉にしてください。今、あなたの中に灯っているのは、あなたが言葉にしてくれないと消えてしまう光なんです」
自分が思ったことをそのまま口にするのが憚られる瞬間もあります。でもたとえ上手く伝えられなくても、自分の中に灯った小さな光である言葉をきちんと伝えていこうと改めて思いました。消えないうちに…。
言葉って、本当に素晴らしい!
私も言葉とずっとかかわり合いながら、生きていきたい!
そんな気持ちにさせてもらえたドラマ『舟を編む~私、辞書つくります~』。私にとって宝物のようなドラマになりました。
みどりの最後のナレーションが、これからの私の人生における言葉とのかかわり合い方の道しるべとなってくれるように感じます。
長い文章最後まで読んでくださり、ありがとうございました。