【一般書評】夜と霧
初めに
皆さんに,2つ問いたいと思います.
「人間はどの様な状況下でストレスを感じるか?」
「人間の魂は結局,環境によって否応なく規定されるか?」
これらの問いに対する答えは後述します.
本書は,かの強制収容所に送られた著者ヴィクトール・E・フランクルがその収容所生活を経て得られた経験を精神医学的な観点からまとめている一冊です.
ちなみに著者はウィーンに生まれ,フロイト,アドラーに師事して精神医学を学んだという過去を持っています.
なぜ,ユダヤ人が迫害されたのか?
本書の内容について触れる前に,まず自分が長年感じてきた素朴な疑問を解消しておきたいと思います.そう,
「なぜ,ナチスはユダヤ人を迫害したのか?」
その起源はキリスト教とユダヤ教の教義の差にあるそうです.
キリスト教では,人間は原罪を背負いながらも十字架のキリストを信じることによって自由になれる.
ユダヤ教では,神自身を信じることで自力で自由になれる.
従って,ユダヤ人はイエス・キリストを救世主として認めない.という立場を取っているため,その後ヨーロッパ全土に広がったキリスト教徒から蔑まれ,迫害の憂き目にあったのです.
言ってしまえば多数決に負けたということです.
どちらが正しいというわけではなくとも,
・異なる解釈をしている
・少数派
というだけで迫害を受けたということです.ここではあまり深く述べませんが宗教(というか信仰)の正しいあり方とは何なのでしょうか?
人間がストレスを感じる状況下とは?
さて,本書の内容について触れると同時に,冒頭の質問に対して自分なりの答えを述べたいと思います.そう,
「人間はどの様な状況下でストレスを感じるか?」
この問いに対する答えは,
「先行きの見通せないかつコントロールできない状況下に置かれること」
だと思います.まさに強制収容所での生活は強大なストレスを感じる環境であり,その環境は全くと言っていいほど先行きを見通せずコントロールできない究極の状況ではないでしょうか?
事実,以下のような文章が示されていました.
「元被収容者についての報告や体験記はどれも,被収容者の心にもっとも重くのしかかっていたのは,どれほど長く強制収容所に入っていなければならないのかまるでわからないことだった,としている」
仮に,先行きの見えない状況であっても,それを自分でコントロールできるのであれば人は進んでいけるものだと思います.
つまり逆説的に言えば,先行きが見通せてコントロール出来る感覚が得られる環境に身を置くことがストレスフリーで生きていくための大きな指針になるかもしれません.
例えば,就活などにより新天地に行く際にはヒアリングなどにより事前調査を実施してみるのが大切かもしれません.
人間の魂は結局,環境によって否応なく規定されるか?
もう少し簡単に言えば,以下のようになるかと思います.
「環境が人間をどうあるかを決定するか?」
自分は,これまで「是」としてきましたが,本書を読んで「否」に変化しました.(というか是としてきた自分を恥ずかしくすら思ってしまいました...)
そのように思うに至ったのは,次の文章によってです.
「強制収容所にいたことのある者なら,点呼場や居住棟のあいだで,通りすがりに思いやりのある言葉をかけ,なけなしのパンを譲っていた人々について,いくらでも語れれるのではないだろうか.そんな人は,たとえほんの一握りだったにせよ,人は強制収容所に人間をぶちこんですべてを奪うことが出来るが,たったひとつ,与えられた環境でいかにふるまうかという,人間としての最後の自由だけは奪えない,実際にそのような例はあったということを証明するには充分だ.」
この極限の状況下においても
人は自分自身がどうあるかを選択できるというのです
言い換えるなら,「人間はひとりひとり,どの状況にあってもなお,自分がどのような精神的存在になるかについて,何らかの決断を下せる」ということではないでしょうか.
自分は人間は環境に依存する生き物であると思っていましたし,事実として全く影響されないわけではないと思います.しかし,
「それでも選択できる」
これは,我々を大いに勇気づけてくれる言葉であり,同時に言い訳を許さないという側面も持っています.
おびただしい被収容者のように無気力にその日その日をやり過ごすか,あるいは,ごく少数の人々のように内面的な勝利を勝ち得るか.
我々はもう一度,自身の精神的あり方について考えなければならないのかも知れません.
環境に言い訳することなく,自分がどうあるべきかを常に自身に問うていきましょう.
最後に
いかがでしたでしょうか?
今回は,ヴィクトール・E・フランクルの著書「夜と霧」の書評を執筆しました.
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今後も皆さんの人生に有益な記事を連載していきますので
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今日も最後まで読んでいただき,ありがとうございました.
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