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<四国車遍路旅>2024年度版(2)
<四国車遍路旅>2024年度版(2)
動画版はhttps://youtu.be/D_e8rPt2J9E
~ 鎮魂と般若心経の日々~
四国車遍路 徳島県、高知県編
Part 1
四国車遍路旅(4)
2024-10-6(日)
車遍路旅四日目の朝は、<道の駅いたの>の駐車場で、午前四時半ころに起きだした。朝の支度を終え、車内数息をした。
車内数息1セット目、5:15-5:45、座席数息200回、般若心経2回。
昨日、今日の出来事の<雑念>ばかり。おもに、参拝のやり方についてと、車中泊関連でのゴタゴタだ。
昨日は本堂の前で、心経を読んだ。だが、どうもしっくりしない。今日は建物全体が見渡せる場所でやってみよう。そう、ちょうど、写真を撮るように。
車中泊に関しては、気が狂いそうになるほど、イライラが多かった。まず<道の駅第九の里>では、19:00ころから、すぐうしろの外テーブルで、男女のカップルが飲み食いを始めた。話し声や車の開け閉めがうるさい。寝ていられない。
自分が横になった18:00ころには、誰もいなかったのに、他の駐車スペースにも、いつの間にか車が止まっている。そのうち、すこしウトウトしたが、ふと気づくと、空いている場所があるのに、わざわざ、自分の横にピッタリと車をつけた奴がいる。停車するや否や、シェードを張って、中を見えなくした。なにかよからぬことをやる感じだ。ふん!
気分転換にトイレへ行った。ダレた感じの若い奴がいきなり現れた。ふてぶてしい態度で、ちらっと俺を見た。なんなんだよ、この道の駅は!20:00、ついに頭に来て、場所を移動した。
10分くらい走って、<道の駅いたの>に着いた。新しくできた<道の駅>で、駐車場は広いし、トイレなども最新式だった。初めから、ここにすればよかったんだ。駐車場には、車中泊車が、ざっと見て、50台くらい止まっていた。トイレから少し離れたところに車を止めて、すぐに横になった。
すると、いくらもしないうちに、<軽>が横に止まった。アイドリングやドアの開け閉めがうるさい。そのうち、向かいにも軽バンが止まった。車内灯をつけ、堂々とアイドリングしている。よくよくみると、ガードマンの制服を着ている。夜間工事のアルバイトの爺たちだ。こりゃあ~、ラチがあかない。
場所を移動する。さらに端の方へ行く。と、こんどは、少し離れた白の<レクサス>がうるさい。バタンバタンとドアの開け閉めが断続的に続く。隙間からのぞくと、やや品のいい婆が、車を降りたり、乗ったりと、何かやっている。何をしているのかは、死角になっていて見えない。それが小一時間ほど続く。少しウトウトすると、バタンの音で起こされる。たまったもんじゃない。
またまた移動。さらにさらに端のほうへ行く。大きなキャンピングカーの一区画隣りだ。キャンピングカーが静かなのか、念のため、耳を澄ませて、再度確かめる。もうすでに21:00 過ぎたっだ。しかし、ここも安住の地ではなかった。道路に近いこともあり、車の騒音や、暴走族っぽいバイクのエンジン音などが聞こえる。なかなか寝付けない。
気分転換に、駐車場の中を通って、トイレまで行った。何台かの車は、堂々とアイドリングしている。こりゃだめだ、と思った。きれいなトイレで用を足し、戻りかけた。ふと夜空を見上げた。オリオン座がくっきり、はっきり見える。人間たちの喧騒をよそに、なんと静かで、美しいのだろう。
2番、極楽寺
7:20-8:05、般若心経は、山門全景、本堂正面、大師堂正面、合計三回。
朝イチなので人の姿がない。そこはかとなく、線香の香りがする。静かで、気持ちが静まる。歩き遍路と思しき中年の壮健な男性とすれ違う。朝の挨拶をかわす。心経の音読は、建物全体が見えるところでやる。昨晩考えた通り、その方が自分のための心経になる。古びたお堂に、善なる人間の気配がする。心が、善なる方角へ動く。
3番、金泉寺
8:25-9:05、般若心経は、山門全景、ベンチ、本堂全景、大師堂全景、計四回。
人の姿が目立つ。三々五々というよりは、ひっきりなしだ。本堂正面の、木製の長腰掛は覚えている。20年前に来た時、ここに座って、少しの時間、ぼうおっとしていた。夜行バスでろくに寝られなかったのだ。そのうち、横で、襷掛けしたおばちゃんたちの<ご接待>が始まった。<ザボンキャラメル>の箱を配っている。自分も一つ勧められて、もらった。
そうだ、やや陰気な中年女性から話かけられたのも、ここだ。何を言っているのか、ちょっと意味が理解できない。聞き返すが、要領を得ない。体調がよくないこともあり、あまり興味を示さなかった。そのせいか、そのうち、何も言わずに行ってしまった。なにか、切羽詰まった感じがして、関わり合いになりたくなかった。
心経を読んでいるとき、涼しい風が吹いてきた。小鳥の鳴き声も聞こえた。それに、青々とした銀杏の木があり、熟れた銀杏が、ポトンと落ちた。遍路たちの般若心経が、そこかしこから聞こえる。三人連れのおばさんや夫婦連れだ。前に来た時も、頭の中で、ぼうおっと般若心経が聞こえていた。
4番、大日寺
10:00-10:30、般若心経は、山門全景、本堂全景、大師堂全景、計三回。
山門は、見覚えがある。本堂、大師堂などは、まったく覚えていない。3番から4番までは、車でけっこう走った。20年前は、この道を歩いたのだろうか。どこをどう歩いたのか、すべては忘却の彼方だ。
山門をくぐる。上を見上げると、<鐘>がある。目の前の左手に太い綱があり、下に引くと、<突き棒>が動くようになっている。そっと突いてみた。
日差しは強いが、日陰に入ると、涼しい風が吹いてくる。外で活動することが、それほど過酷ではなくなった。メモ書きを書いているベンチの前に、<南無賓頭盧尊者=ナムビルズムソンシャ>の、朱色の座像がある。新しいのだろう、ピカピカしている。頭をなでようとしたが、やめた。誰も撫でていないのだ。
休憩タイム
11:00-12:00、<なごみ湯>は<道の駅いたの>に一番近い温浴施設だ。入館料は¥600、従業員の中年の女性が親切だ。三日ぶりに、頭をごしごし洗う。昼食は、<道の駅>の国道沿いに<吉野家>があり、久しぶりに牛丼セットを食べた。そのあと<道の駅いたの>に戻る。風は涼しいが、カンカン照りで、車の中にいられない。メモ書きのパソコン入力をしようと思ったのに、思惑が外れた。さいわいなことに、近くに<コメダ>があるので、退避する。アイス コーヒー¥500は、地元の埼玉より安い。二時間ほど、パソコン打ちができた。
17:00、<コメダ>引き上げ、駐車場で荷物整理。<道の駅>に戻り、夕日などを撮る。くつろぎの時間。車の窓に防虫ネットを取り付ける。就寝の準備。
車内数息2セット目、6:15-6:50、座席数息200回、般若心経2回。
はじめは周囲の騒音などで集中できない。ただ、ドアを少し開けると、涼しい風が入ってくる。日中の暑さを思えば、かなりいい。虫の声なども聞こえる。と、バイクの爆音だ。しかも、ご丁寧に、国道を往復している。
100回以降は、しだいに騒音にも慣れてくる。夜になり交通量も減ったようだ。150回を過ぎたころには、<居眠り>をしていたらしく、数をまったく忘れてしまう。何回か、適当なところから数えなおす。
190回あたりで目を開け、残りの10回は、しっかり数えて終わる。締めの心経もしっかり読めた。昼間も札所で何回も読んだ。読むたびに、自分なりの心経の読み方が、うまくなっていくような気がする。
19:00、トイレに行って、横になる。明日も4:30に起きよう。
四国車遍路旅(5)
2024-10-7(月)くもり
四日目の朝は、愛媛県板野町にある<道の駅いたの>の駐車場で、午前四時半ころに起きだした。昨晩は、夜の八時前、道の駅に暴走オートバイが六台ほど集結した。うしろの国道を、一人ずつ、ものすごい爆音を轟かせて、走っていく。いつまで続くのかと思っていると、意外にも、九時前には、みなして隊列を組んで去っていった。
そのあとは、昨晩のようなイライラ、ゴタゴタはなく、比較的静かだった。ただ蒸し暑くて、なかなか寝付けない。窓を少し開けたりして、微調整しながら、ウトウトしていた。午前0時には、だいぶ涼しくなり、窓をぴったり閉めた。夜間排尿で、一、二時間おきに起きたものの、まずもって、よく寝られた方である。
車内数息1セット目、5:15-5:40、座席数息200回、般若心経2回。
朝の数息を始める前には、洗面し、水を一杯飲む。これは自宅でもやっていることで、車中泊でも同じことをやることに決めている。車内でハミガキ、電気シェーバーの後、排尿瓶などを持って、トイレへ行く。<多目的トイレ>に入って、瓶などを洗い、出てきて、一般トイレの洗面台で、顔などを洗う。これで朝の数息をする態勢が整ったわけだ。
20回までは、自分の吐く息、吸う息の音を聞いていた。ほかにも、耳鳴りの音、心臓の鼓動、胃腸の動く音なども聞こえた。それ以降は、あまり努力のいらない<鼻呼吸>に移行した。とたんに<雑念>が出た。昨日の車遍路での出来事などだ。とりたてて、反省点はない。充実した巡礼ができた。
そのあとは<漠としたイメージ>の中を漂い始めた。体が暑くなり、100回目で上のスウェットを脱いだ。少し態勢を整え、200回を目指す。
頭の中に、はっきりしたイメージが見えた。中央にアスファルトの道、両脇に堅固な塀があり、家並みが続いている。どこかで見たことがあるような、ないような場所だ。とたんに数を間違えた。いくつまで数えたのかも、まったく忘れた。だいたいの感じで、また数を数え始めた。
<ウトウト>していたに違いない。頭がカクンとうしろに落ちる。また数の数えなおしだ。そんなことを何回か繰り返した。したがって、100回以降の数は、正確ではないと思う。
締めの心経を終え、目を開けた。始める前は暗かった駐車場に、車が15台くらい止まっていたのが見えた。
5番、地蔵寺
7:30-8:00、般若心経は、山門全景、本堂全景、大師堂全景、計三回。
境内の真ん中にある<大銀杏>が青々している。本堂は工事中で足場が組まれている。大師堂の正面欄干には、色彩豊かな彫り物があり、とくに鹿と紅葉が目についた。
心経は三回とも、建物全体が見える場所でやった。この方が、建物の印象が頭に残るので、やはり正解だ。
大銀杏の下には、長椅子、ベンチなど、五、六脚、おいてある。二十年前に来た時にも、ここで休憩したのだろうか。何一つ覚えていない。
早朝の札所、まだ遍路たちの姿はない。と、うしろで<鐘>が鳴った。ふと、横を見ると、白人の体格のいいカップルが、頭には菅笠、金剛杖を手に持って、本堂の裏手のほうへ歩いて行く。<五百羅漢>があるようだ。あとで、自分も行ってみたが、有料なので見るのをやめた。拝観料をケチったというよりは、さほど興味がなかったのである。
境内が、不謹慎だが、公衆便所のような臭いがする。と思ったが、これは熟れた銀杏が落下していたからだろう。
あと、ベンチでメモ書きを書いているとき、大きな黒い<蚊>がまとわりついてきた。すかさず、<ドコデモ蚊取>を取り出したが、その前に、ノートでふり払ったら、<輪袈裟>にぶつかって、つぶれてしまった。
ノートには少し<血>がついた。人間の血だろう。殺生をしてしまったことで、気持ちが少し揺れた。自分の<いのち>とでも言うべきメモ書きを使って、巡礼の象徴である<輪袈裟>も汚したのだ。だが、すぐに立ち直った。<蚊>に食われたら、どれほど<かゆい>か、思い知っているからで、それに、自分は、<蚊>に黙って血を吸わせるほどの人間じゃない。後悔することはないのだ。
6番、安楽寺
9:00-9:50、般若心経は、山門全景、本堂脇、大師堂中、外。計4回。
道路沿いの札所の駐車場で、5番札所でも見かけた、<カブ>で札所巡りをしている若者から会釈された。そのあと、境内の中で出くわした。少し立話をした。沖縄から来ている。春頃に本州にわたり、能登や北海道を回り、いまは四国の札所を巡っているのだという。無精ひげに短髪、日焼けしている。迷彩服仕様で、やや小柄だが、屈強そうだ。
話していると、謙虚なところがあり、四国の見所などを聞いてきた。まよわず、<佐田岬灯台>を薦めた。辺境の中の辺境で、そういう話になると、だれにでも薦めてきた自慢の場所だ。
それと、人と触れ合いたいようで、歩き遍路のことも話した。中高年の日本一周とは違い、彼には暗い影のようなものは感じられなかった。野宿などで、何日も風呂に入ってないのかもしれない。少し臭った。だが久しぶりにいい若者に出会った。
彼と出っくわす直前、山門をくぐった時、突如として、20年前の記憶がよみがえった。そう、あの時、雨が降っていた。ポンチョなどを着こんで、これから7番札所へ向かうところだった。まいったなとは思ったが、まだ、全然、めげていなかった。
7番、十楽寺
10:00-11:00、般若心経は、外側の山門全景、本堂全景、愛染明王正面、大師堂正面と脇、合計5回。
7番札所も、まったく記憶に残っていない。今回お参りした愛染明王のお堂も初めてだ。両脇に入り口があり、左側は縁結びの門・夫婦円満、良縁であり、右側は縁切り門・悪縁退散である。
門の中は、コンクリ階段になっていた。二階に上がると、三畳間ほどの空間になっていて、愛染明王が鎮座していた。このまま素通りするのも、気がひけて、正面で心経を読んだ。狭い空間なので、自分の声がよく聞こえた。人が上がってこないか、多少冷や冷やした。
そのあと、本堂や大師堂などのお参りを終え、明王堂の並びにある、ちょっとした休憩スペースの長腰掛に腰かけて、メモ書きを書いていた。と、先ほど、5番 地蔵寺で見かけた白人のカップルが山門の方から現れた。男性とは、彼が隣に座るときに、目礼を交わした。女性は座らずに、手水舎の方へ向かった。
なにか言葉をかけてもよかったが、気おくれした。白人といっても、ヨーロッパ系で、ドイツ人ぽかった。言葉が通じる由もない。しばらくして、メモ書きを書き終わり、白人男性の前を、会釈して通り過ぎた。
駐車場の車に戻り、車内整理などをしているうちに、ふと、白人カップルに<ご接待>しよう、と思った。封の切ってない<塩飴>を取り出して、本堂の方へ行った。
境内に人の姿はなかった。もう出発したようだ。と、思ったとき、休憩スペースの端に、きちんと並べられた二つの大きなバックパックが目に入った。アッと思う間もなく、白人男性が左手から現れた。封の切ってない納経帳を手にしているところを見ると、納経所へ行っていたようだ。
彼に、<ごせったい>と少し大きな声をかけ、<塩飴>を手渡した。少しびっくりしたようだが、<ありがとう>の言葉が返ってきた。目の前の、大きな白人に気後れしたのだろう。応対する言葉が出てこなかった。とはいえ、こちらの気持ちは伝わったはずだ。親切な日本人に出会った、と彼らの遍路旅の記憶に残ればいい。
ところがだ、この話には、リアルな後日談がある。その後、何日かして、21番太龍寺のロープウェイ乗り場で、ベンチに腰掛けている彼らを見かけたのだ。男性の顔は定かでないが、女性は、愛想のない、個性的な顔立ちをしていたので、記憶にはっきり残っている。
再度、彼らの方をちらっと見た。<塩飴>を<ご接待>した日本人だ、とは気がつかない。もっとも、すれ違った程度だ。俺だって、男性の顔をはっきり覚えていない。あ~あ、貴重な<塩飴>一袋、損した気分になった。
休憩タイム
12:00、昨日と同じ<吉野家>で昼食、頭大盛牛丼セット、¥830。
13:00、昨日と同じ<コメダ>でメモ書きの清書。アイスコーヒー¥500。
15:00、小雨の中、<コメダ>を出て、<道の駅いたの>へ向かう。日差しもなくなり、天気も下り坂だ。車中泊の準備をしよう。
ちなみに、<コメダ>とは、<道の駅いたの>から10分くらいで行ける喫茶店のことである。
車内数息2セット目、16:00-16:20、座席数息80回、般若心経1回。
これといった<雑念>も出ず、順調にいくかと思ったが、50回すぎからは、<ウトウト>しだし、完全に<居眠り>してしまったようだ。ふと気づいたときには、数を数えていたことさえ忘れていた。お疲れのようである。
数息が終わると、17:00になっていた。おにぎりなどで、軽めの夕食。そのあと、ゆっくり就寝準備。
19:00、消灯。駐車場は静かだ。夜間に雨。翌朝まで、何事もなく、平和に過ごせた。あと、窓の開閉を微調整することで、車内温度を調整することを学んだ。