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海外社会学学説研究 概略

どうも!
セイタです!!
北京大学社修士課程で社会学を学んでいます。


この記事では、自分が北京大学で
どのような授業を受講したのか
・どのような授業の進め方なのか
・課題をどのようにクリアしていったのか
について執筆していきたいと思います。


対象としている読者は
・中国の大学に興味がある。
・社会学修士に興味がある。
・労働者の問題に興味がある
方を想定しています。
もちろん当てはまらない方でも全く問題なく読める内容となっております。


自分は2023年秋学期に
・マルクス・レーニン社会学古典著作精読(2コマ)
・労働問題(3コマ)
・海外社会学学説研究(2コマ)
・研究計画と論文執筆(2コマ)
計9コマ分を履修していました。


中国人の学生は12,13コマくらいの子が多かったですが、僕はインターンも就活も何もないので、少なめにとっています。

この記事ではその中でも《海外社会学学説研究(国外社会学学说研究)》という授業について書いていきたいと思います。比較的若い先生で、理論や古典をメインに研究しています。若いのに、このような領域で結果を残しているだけあって、頭の回転が早そうな先生です。また、この授業は北京大学内のすぐれた授業として表彰されていた(はず)です。




授業概略

まずはシラバスを紹介させていただきます。

本講義は、社会学修士課程の2年生を対象とした理論読解型のセミナーである。代表的かつ影響力のある西洋における社会理論の古典的著作3冊を精読することを通じて、西洋社会理論における異なる学派の基本的な理解を深めることを目的とする。あわせて、関連文献の読解力を養うとともに、学術的思考の訓練(例えば、問題を分析する能力)や、学術的表現能力の向上を図ることを目指す。

※シラバスをChatGPTにて翻訳後一部修正


このようにこの授業は理論を勉強する本となります。なお、この授業で学ぶのは以下の三冊です。
・ミルズ:『社会学的想像力』
・ディルケム:『自殺論』
・ウェーバー:『プロテスタンティズムの精神と資本主義の精神』


また、学生に求めるものとしてシラバス内には以下のような記述があります。

本講義は、大学院生向けのディスカッション形式の授業として設計されている。受講生を三つの読書グループに分け、それぞれが指定された三冊の書籍をテーマとして、グループ単位で読解・討論を行い、授業内で発表を行う。期末には、各グループが共同で発表を行うことが求められる。
さらに、本講義では各受講生が期末に約5ページの読書レポートを提出することが義務付けられている。この読書レポートでは、参考文献と必読文献の比較研究をテーマとすることが求められる。また、各受講生が提出する三つの読書レポートは、それぞれ異なる三冊の書籍に基づくものでなければならない。

※シラバスをChatGPTにて翻訳後一部修正


後述しますが、この授業は担当の先生が話をする時間は非常に短く、その代わりに学生が発表する時間が長く取られています。また、授業形式も独特ではありながらも、学びが最大化されるようにデザインされており、自分が将来授業をするときの参考になるなと思いました。




先生の経歴

次に先生の経歴について簡単に記述しておきます。この授業は孙飞宇(Sun FeiYu)先生により、開講されています。僕が授業は受けていた時は准教授だったのに、今見ると教授になっていました(笑)また、「長江学者」という優秀な学者に与えられる称号ももらっています。

北京大学 社会学系 师资力量


経歴は
・学部は北京大学社会学(Times Higher Education 2025 13位)
・修士が北京大学社会学(Times Higher Education 2025 13位)
・博士がカナダヨーク大学(Times Higher Education 2025 401-500位)
となっています。


この先生の実績を見ていたのですが、驚くほど毎年論文が掲載されています。しかも、権威ある雑誌が多いです。このように多産な教授はだいたい学生と一緒に書いているということが多いのですが、理論研究ということもあって、ほとんど単著です。驚くことに、修士の段階から理論に関する論文を出しています。


以上が、経歴から判断できる点です。それとは別に実際に授業を受けてみた感触としては良くも悪くもストレートな先生だなという印象です。例えば、僕が発表を終えたときには、「留学生が中国語でここまで発表できるなんてすごい」みたいなことを言われました。
※嫌味かなと思ったのですが、成績が最高評価だったので、本心から思っていたことが後でわかりました(笑)


また、学部がメディアで大学院から社会学部の子は「君は社会学を勉強したことはあるの?」と言われ、後で僕に「こんなこと言われて悲しい」みたいなことを言っていました(笑)


後、一番最後の授業の日は、授業後に大きな教室を貸切って、ピザパーティーを実施したりしてくれました。北京大学に来てからは授業のメンバーとそのようにご飯を食べたのは初めてだったので少し驚きました。ただ、すごい良い経験でした。




授業の進め方

次にどのように授業を進めていったのかについて説明させていただきます。この授業は独特な形式をとっています。まずはシラバスの授業スケジュールをご覧ください。

第1部:導入・イントロダクション、講義概要および進行方針の説明

第2部:C・ライト・ミルズ『社会学的想像力』第2回〜第5回
テキストの導読
・『社会学的想像力』を中心にした議論

第3部:エミール・デュルケーム『自殺論』第6回〜第9回
・テキストの導読
・『自殺論』を中心にした議論

第4部:マックス・ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』第10回〜第13回
・テキストの導読
・『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を中心にした議論

第5部:グループ発表と総括 第14回・第15回
・各グループによる発表
・総合的なディスカッション

※シラバスをChatGPTにて翻訳後一部修正


冒頭でも述べた通り、この授業では3冊の古典を読み進めていきます。その際に学生は三つのグループに以下画像のように分けられます。このようにして、学生がすべての古典に触れれるようにデザインされています。ちなみに私はグループAでした。『社会学的想像力』がとっつきやすそうだったので、読書感想文として取り組みたいなと思ったからです。



各古典に対してそれぞれ4回の授業で1冊が終わるようになっています。そして、各本の第1回目の授業はその分野の専門家、例えば、ウェーバー研究を行っている人を他の大学からよんで、講義をしてもらいます。


残りの3回が学生の発表になります。なお、非常に熱心な先生で発表の前に時間を取って、読書会という名目で学生の発表に対してクオリティチェックを行います。また、学生の発表後は先生がコメントをします。毎回よくそんなに色々話せるものだなと感心します。


このような個別での中間発表が終われば、期末での発表となります。期末での発表は各グループ毎で行うのですが、形式は割と自由です。ただ、中間発表のように本の内容をまとめた発表は「それでは中間発表と変わらない」と評価されていました。逆に、あまりにも本の内容から離れた発表はそれはそれで「離れすぎている」と評価されていました。なお、僕のグループは2人の学生のみが発表することになったので、僕は何も話していません(笑)




課題

次に課題について簡単にお話しさせていただきます。


この授業の成績は
・授業での発表 75%
・読書感想文 25%

によって成績が決まります。


この授業での発表の中に、中間発表と期末発表が含まれます。上述の通り、僕は期末発表はノータッチです(笑)なお、テーマがディルケムの『自殺論』だったので、もしやるとなったら、社会学の大家であるギデンズが『自殺論』を評価した論文があったのでそれを紹介するつもりでした



中間発表は『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』が僕たちのグループのテーマでした。僕は第3章『ルッターの天職観念』を担当しました。短いプレゼンですが、別途記事にしようと思います。




また、読書感想文はミルズの『社会学的想像力』です。シラバスには「下記の関連文献とこの本の比較研究を実施しなさい」と書かれていました。


そのため、最初は、必死に上記の文献にあたっていたのですが、提出期限が近付くとTAより「別に比較研究じゃなくてもいいよ」と言われました(笑)結局僕は上記の本とミルズの比較で読書感想文を書きました。我ながら非常によく書けており、この2年間で最もよく書けたレポートの一つだと思います。




この授業に使った時間

自分は以下のアプリを用いて、分単位で勉強時間を計測しています。なので、この授業にどの程度の時間を使ったのかを最後に紹介させていただきます。
※タスク管理とボモドーロ技術を使った時間管理が一体となったアプリで愛用しています。


・授業時間:100分×15回=25時間
・3冊の古典閲読:54時間
・中間発表:12時間
・期末レポート:26時間
・予習復習その他:8時間
合計:125時間


古典を読むのに時間がかかったので、トータルの時間が結構長くなりました。また、『自殺論』が24時間程度で、『プロテスタンティズムの精神と倫理』及び『社科学的想像力』はそれぞれ15時間程度で読めました


なおこの授業の成績は「A+」です。「A+」は最高の評価であり、GPAで4.0に相当します。理論系の授業で唯一の非母語話者として授業を受けて、最高評価を取れたのはうれしかったです。



ということで、今回の記事は以上となります。
最後まで読んでいただきありがとうございます。



このマガジンでは引き続き、北京大学社会学修士の授業について執筆していきます。


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