Carver's Dozen レイモンド・カーヴァー傑作選

書影

【著書紹介文】
レイモンド・カーヴァーの全作品の中から、偏愛する短篇、エッセイ、詩12篇を新たに訳し直した〝村上版ベスト・セレクション〟。作品解説・年譜付。

*****

3年ほど前に一度よんで再読。
ベイカーズ・ダズンにちなんだ「12+1」にあえてランキングをつけてみると

①ささやかだけれど、役にたつこと
②ぼくが電話をかけている場所
③足もとに流れる深い川
④サマー・スティールヘッド(夏にじます)
⑤あなたお医者さま?
⑥収集
⑦でぶ
⑧大聖堂
⑨父の肖像 <エッセイ>
⑩レモネード <詩>
⑪使い走り
⑫おしまいの断片 <詩>
⑬ダンスしないか?

夫婦の不和、死、依存症、暴力、シュール、反省、復縁、ユーモア、障がい…

話がどう展開していくのか、予測がつきづらい。唐突に終わったりもする。ひとつの話が他の話にも乗り移っていく。

こうして読み終えて、タイトルだけをぼんやり眺めても、そこには風変わりな人たちの滑稽な営み、それでいて真剣に生きる姿が浮かび上がってくる。

あたたかいものが後に残ることが多い、ここのところの読書。

誰かに対して気の利いたメッセージを短文で送ることは簡単かもしれない。
だけど、僕が優れた小説に触れたい理由はそれこそ、頭でそれを理解して採り入れたいということよりも、いかにして「身体に」効いてくるか、というところにあるのだと思う。

カーヴァーの小説もまた、そういった手ごたえが十分にあった。
(たとえば僕が最も感動した「ささやかだけれど、役にたつこと」などは直截的に「身体に」効いてくるシーンで終える)

*****

例えばこれを書いている僕の暮らしを、誰かが小説にしていたら?
その小説を僕はどんな気持ちで読むだろう。

レイモンド・カーヴァーってどんな人なんだろう。

サリンジャーに対してそうであるように、カズオ・イシグロに対してそうであるように、村上春樹に対してそうであるように、マッカラーズに対してそうであるように、少しずつカーヴァーに触れていこうと思う。

「奥ゆかしさ」の存在に気づくとき、僕はいつもやさしい気持ちになれる。

そしてまた、僕は僕の足で立つことができる。

(書影と著書紹介文は https://www.chuko.co.jp より拝借いたしました)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?