ライバルの存在が自らを強くする。ラグビー早明戦で感じた宿敵あっての歴史。それが大会そのものの活性化につながるはずだ
人やチームはライバルの存在があってこそ、自らのレベルアップにつながる。そう感じさせた一戦だった。99回目を迎えたラグビーの早明戦に互いの意地とプライドが垣間見えた。明治のワンサイドゲームに終わると見られた試合だったが、終盤に早稲田の反撃で逆転可能な点差にまで縮まった。互いに高め合うことで、大会の盛り上がるにもつながるのだ。
3日に国立競技場で行われた伝統の一戦。かつて旧国立競技場で行われていた頃は、チケット入手のために、はがきによる抽選が行われていた。大量に送って、やっとゲットできる人気のカードだった。
関東大学対抗戦Aグループは、すでに帝京大の全勝優勝が決まっている。今年の早明戦は優勝をめぐる試合としては「消化試合」の扱いだったが、3万1915人がスタジアムに押し寄せた。
試合は前半を終えて27-3と明治がリードして折り返した。4トライをすでに奪った明治に対して、早稲田はペナルティゴール1本のみでノートライだった。後半に入っても明治が2本の連続トライなどで、後半21分の段階で41-3と大量リードしていた。
ライバル相手に大敗は許されない。ここから早稲田の反撃が始まる。6分後に早稲田がようやく1本トライを取り返すと、早稲田タイムが始まった。
さらに後半27分、30分と連続トライ。10分以内に3トライを挙げたのだ。ギブアップの姿勢を見せない。明治にトライを追加されたが、早稲田はそこから約5分で3トライを連続して奪った。ノーガードの打ち合いだ。
後半40分を回り、早稲田は38-46とひとケタの差に縮めた。そして追加時間が発表された。「7分」。これにスタンドがどよめいた。この勢いならば、7分で早稲田が試合をひっくり返せるかもしれないからだ。
ワンサイドと見られた一戦が、一気にどちらが勝ってもおかしくない展開に。スタンドのファンは手に汗を握るゲームとなった。
最後は明治がギアを一段アップし、2本のトライを決めて58-38と突き放しノーサイドを迎えた。終わってみれば明治の快勝。しかし早稲田も意地を見せた試合となった。
ライバルに簡単には勝たせない。その思いが、早稲田の後半の猛攻につながったと言えるだろう。こういうライバル関係の歴史があるからこそ、大会のレベルアップにもつながったと言える。
プロ野球では巨人と阪神。Jリーグでは同じ自治体にあるチーム同士のダービーマッチがあり、ライバル同士の火花が散る。ライバルの存在が人やチームの成長につながるのだ。
バスケットボールに目を向けると、今年、沖縄で行われた五輪予選で日本が出場権を獲得し。注目を浴びた。プロバスケのBリーグの試合でも入場者数が増える大きな要因となっている。
それでも五輪は毎年行われるわけではない。ファンの注目を浴び続けるには、ライバルの存在が不可欠ともいえる。
2016年にスタートしたBリーグは、今季8年目を迎えた。日本代表や外国人選手らの活躍で大会も面白みを増しているが、やはりライバルの存在は不可欠と言えるだろう。
全国的にライバル同士の戦いと思われる関係は、まだ見当たらない。リーグが10年経っていないのだから仕方ない部分もあるが、やはりライバル関係の一戦があればこそ、大会の注目度も増すだろう。
ライバルの存在が人やチームの成長につながる。そう思わせてくれた楕円球をめぐる熱い一戦だった。