悲劇にならなくて良かった。サッカーW杯最終予選。日本がオウンゴールの失点。すぐさま相手のオウンゴールを引き出しドローに。中村選手のクロスが救った
悲劇にならなくて良かった。そう思える試合だった。サッカーワールドカップ(W杯)最終予選。日本はオーストラリア相手にオウンゴールで失点。このまま敗れれば痛い1敗となるはずだった。しかし、すぐさま相手のオウンゴールを引き出して同点に。勝ち点1を確保した。MF中村敬斗選手の絶妙なクロスが日本を救った形となった。
15日に埼玉スタジアムで行われたオーストラリアとの一戦。この日、国内は衆院選が公示され熱い戦いが始まったが、サッカーも選挙に負けずとも劣らない戦いが繰り広げられた。
これまで最終予選3連勝と勢いに乗る日本。しかも、これまで無失点と安定した試合運びを見せていた。
ホームで戦う試合だけに勝ち点3が欲しかった。しかし、この試合の初得点はオーストラリアだった。
不運な形だった。後半13分、相手の右サイドからのクロスに、DF谷口彰悟選手がクリアしようとしたボールが味方のゴールネットを揺らしてしまった。痛恨の失点。谷口選手は頭を抱えて倒れてしまった。
これで敗れれば、最悪の形の敗戦となる。しかし、周りの選手たちは谷口選手に「大丈夫」と次々に声を掛けた。
日本は後半31分。途中出場の中村選手が左サイドをドリブルで侵入する。ゴールライン間際からクロスを上げると、相手選手に当たってオウンゴールを誘発した。1-1。スタンドから大歓声が上がる。
「オウンゴールにはオウンゴールを」。これで谷口選手は救われたに違いない。このまま敗れていれば、谷口選手は重い十字架を背負う羽目になりかねなかったから。
1994年にアメリカで行われたW杯。コロンビアの選手が痛恨のオウンゴールを喫して敗れた際に、帰国後殺害される事件が起きている。オウンゴールでの敗戦は見ている者に、想像以上の衝撃を与えるのだ。
日本でそんな事件は起きないだろう。それでもオウンゴールでの敗戦は心理的なダメージを引き起こすのは間違いない。
だからこそ、中村選手の切れ味あるクロスで同点に持ち込んだのは大きかった。日本を、そして谷口選手を救ったプレーだった。
ホームでの一戦だけに勝ち点3が欲しかったのは事実だ。それでも10月のサウジアラビア、オーストラリアとの2連戦で1勝1引き分けと勝ち点4を手にしたのは大きい。
アウェーのサウジアラビアではこれまで未勝利だった。ここで快勝して、ホームのオーストラリア戦では最低限の勝ち点1を手にしたのだから、日本に十分に合格点を与えていいはずだ。
オウンゴールで敗れれば悲劇だった。しかし相手のオウンゴールで同点に追い付いた試合。むしろ喜劇のように思えてくる。谷口選手には、これからも温かい応援を送りたい。
日本は来月、インドネシア、中国とのアウェー戦に臨む。ここでしっかり2連勝すればいい。
悲劇を免れた日本。これがさらなる精神的強さを生むだろう。がんばれ日本!がんばれ谷口選手!