大事な人のことは、しっかり守らないと。FA移籍の人的補償。「候補に挙がった」ソフトバンク和田投手。複雑な思いを抱えながら「チームのために投げるだけ」
大事な人のことは、しっかり守らないと。フリーエージェント(FA)移籍をめぐり、人的補償の候補になったとされるソフトバンクの和田毅投手のことを思うと切なくなる。長年、ホークスで投げてきて、チームの顔的存在といえる42歳左腕。「この件について触れたくない」と語ったベテラン選手。ホークスには最初から和田投手を守っていてほしかった。
今回の件は、西武の山川穂高選手がソフトバンクにFA移籍したことが発端だ。これに対して、西武は人的補償としてソフトバンクの選手を獲得することができる。
ソフトバンク側はルール上、28人を人的補償から守ることができる。その中に和田投手が含まれていなかったのだ。
そして一部報道では、西武の獲得を予定していた選手が和田投手だったと伝えられている。
ソフトバンクとしては、ある計算が働いたという。西武には若い先発投手がそろっている。昨季11勝の平良海馬投手(24)、10勝の高橋光成投手(26)と今井達也投手(25)、9勝の隅田知一郎投手(24)、6勝の松本航投手(27)らだ。
西武は先発投手を人的補償として獲得することはないと、ソフトバンクは推測したのだろう。それでベテランの和田投手をプロテクトの28人から外したとみられる。
ソフトバンクの戦術も分からなくはない。多くの有力選手を守りたいのは当然だからだ。若い先発投手が豊富なのに、ベテランを取ることはないだろうと見たかもしれない。
しかし西武としては、和田投手は喉から手が出るほど欲しい存在だったに違いない。和田投手は長崎で自主トレを行っているが、ここには阪神の大竹耕太郎投手やロッテの小島和哉投手ら15選手が加わっている。まさに「和田塾」ともいえるだろう。
これだけ信頼されているベテラン投手ならば、西武としては「コーチ」的な意味合いも含めて獲得したいと思うはずだ。
結局、西武が人的補償としてソフトバンクから獲得したのは、リリーフ投手の甲斐野央選手だった。獲得候補に和田投手の名が報道されてから、両球団が協議して決まったとされる。
ソフトバンクに残る形となった和田投手だが、複雑な心境だろう。考えようによっては「いなくなっても仕方ない」と見なされていたわけだから。
和田投手は米国に移籍した時期を除き、ホークスで17年在籍している。ホークスでは通算158勝を挙げ、チームの日本一に何度となく貢献した。
当の和田投手は、この件について「自分としては、その件については触れたくない」と多くを語らない。正直な気持ちをぶちまけてしまえば、チームとの関係はさらに複雑になってしまうだろうから。
「自分にできることはチームのために一生懸命投げるだけ。その準備をするだけ」の言葉に胸を打たれる。
今季から指揮を取る小久保裕紀監督は、開幕投手候補に和田投手の名も挙げている。和田投手は「今年に関しては目指していっていいのかな」と意欲的だ。
複雑な思いを乗り越えて、和田投手には開幕投手の座をつかんでほしい。「俺がチームの顔だ」と言わんばかりのピッチングを楽しみにしている。
ソフトバンクは、大事な人をしっかり守ってあげてほしかった。和田投手には、ぜひとも開幕マウンドに立ってほしい。「チームの顔」は晴れの舞台にこそ、ふさわしいから。
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