「もしも…」と考えるのはご法度かもしれないけれど。サッカー天皇杯で川崎がPK戦を制し3年ぶりV。柏はあの選手が出ていたならば…
スポーツでも人生でも「もしも…」と考えたくなることは山ほどある。そんなことを考えていたらきりがない。でも、やはり…。サッカー天皇杯決勝で、川崎がPK戦を制し3年ぶりに優勝を果たした。柏は2012年シーズン以来の頂点をめざしたが、あと一歩で涙をのんだ。あの選手が出ていたら、結果はどうなっていただろう。
国立競技場で9日に行われた天皇杯のファイナル。0-0のまま延長戦でも決着がつかず、PK戦にもつれこんだ。
そのPK戦では既定の5人目まででもタイの結果。サドンデスの展開に。そして10人目がシュートすることになった。PK戦のスコアは7-7。
10人目のキッカーは両チームともにキーパー。先行の川崎はGKチョン・ソンリョン選手がゴール右隅へシュートを決めた。続く柏のGK松本健太選手がキッカーを務める。
松本選手は右足でゴール左を狙う。しかし、これを読んでいたチョン・ソンリョン選手がセーブして勝負あり。PK戦8-7で3年ぶりに川崎が天皇杯王者となった。
終わってみれば、川崎の優勝は当然と思えるかもしれない。今季のJ1で川崎は8位。一方の柏は最終節までJ2降格争いに巻き込まれ、J1に残留したものの18チーム中17位でシーズンを終えた。
しかし、この決勝で柏の方が優位に試合を進めていた。シュート数は柏の19本に対して、川崎は7本にとどまっていた。そしてPK戦にまでもつれる展開。「もしも…」と考えたくなってしまう。この試合に柏のDFジエゴ選手が出ていたらと。
J1最終節の名古屋戦で、ジエゴ選手はペナルティエリア内でハンドの反則を犯し、一発退場。天皇杯の頂上決戦には出場停止処分が下された。
8月に、私は柏のホームで行われた広島戦を見ていた。柏の司令塔マテウス・サヴィオ選手は序盤からジエゴ選手にパスを供給していた。まるで、得点するにはジエゴ選手にしか活路はないと言わんばかりに。
FKでもサヴィオ選手のキックの先は、ジエゴ選手だった。この試合、スコアレスで引き分けとなったが、サヴィオ選手がいかにジエゴ選手を信頼しているかが伝わった一戦だった。
そのジエゴ選手が晴れの舞台である天皇杯決勝にいない。もしも出場していたら、柏ペースで試合を進めていた大一番で、サヴィオ選手からジエゴ選手への「ホットライン」でゴールは決まっていたのではと夢想するのだ。
劣勢をはねのけPK戦を制して天皇杯王者に輝いた川崎を祝福したい。そして、あと一歩まで詰め寄った柏にも拍手を送りたい。
「もしも…」と考えたいが、それは、やめることにする。頂上決戦で白熱した好ゲームを見られたのだから。