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性格曼陀羅(旧版)


性格曼陀羅


はじめに

 「性格曼陀羅(せいかくまんだら)」という性格理論を考案しました。この理論は進化論の視点を取り入れて、既存の性格論を再構築したものです。具体的には「ビッグファイブ」「MBTI」「4タイプ」などの性格理論を元にし、それらの要素を再構成して図上に配置しました。図の配置は必然的なもので、各要素の関係性が明確になるように配慮されています。そのため、直感的に理解しやすくなっています。
 性格曼陀羅には、多くの要素が含まれているため、個人の性格をより詳細に理解することができます。具体的には4×4×4×4の組み合わせで、256通りの性格パターンが存在します。これによって、個人の性格を多面的に把握することができます。
 また、性格曼陀羅は、一時的に性格が変動することも考慮しています。人は状況によって性格が変わることがありますが、この理論はその変動も包括しています。最初は少し複雑に感じるかもしれませんが、一度理解すると直感的にイメージできるようになります。
 性格曼陀羅は、個人の性格を包括的に理解するための有益な手段です。また、進化論的なアプローチにより、性格の本質的な側面が明らかになり、異なる性格間の相互作用がより理解しやすくなっています。そのため、個人の性格だけでなく組織論などにも応用できます。

参考にした性格理論

参考にした性格理論の簡単な説明

●「ビッグファイブ」

 ビッグファイブは、個人の性格特性を評価するためのモデルです。心理学の分野で広く用いられており、五つの主要な要因に基づいて人々の特性を評価します。

〇「神経症的傾向」(Neuroticism)
不安やストレスに対する感受性を示します。高い値を示す人は感情的に揺れ動く傾向がありますが、低い値を示す人は比較的穏やかで安定しています。

〇「外向性」(Extraversion)
社交性や社会的な関与を測定します。外向的な人は人との交流を楽しみ、エネルギッシュで社交的ですが、内向的な人は内省的で静かな傾向があります。

〇「経験への開放性」(Openness to Experience)
創造性や好奇心の程度を表します。高い値を示す人は新しいアイデアに対してオープンで柔軟な考え方を持ちます。

〇「協調性」(Agreeableness)
他者との関係性や共感の程度を示します。高い値を示す人は協力的で思いやりがあり、他人との関係を大切にします。

〇「誠実性」(Conscientiousness)
自制心や責任感を評価します。高い値を示す人は計画的で責任感があり、タスクを遂行することに優れた能力を発揮します。

●「MBTI(Myers-Briggs Type Indicator)」

 MBTIは、心理学者のカール・グスタフ・ユングのタイプ論を基に、キャサリン・クック・ブリッグスとイザベル・ブリッグス・マイヤーズによって開発された個性診断テストです。このテストは、人間の個性や性格を16種類のタイプに分類するための指標として利用されます。
 MBTIは、人間の性格を4つの二項対立軸によって、16種類のタイプに分類します。これらの軸とタイプは次の通りです。

〇興味関心の方向:「外向型(E)」と「内向型(I)」
外向型の人は社交的で外の刺激にエネルギーを向ける傾向があります。
内向型の人は内部の世界に向かってエネルギーを向ける傾向があります。

〇ものの見方:具体的な情報に注目する「感覚型(S)」と抽象的な情報に注目する「直観型(N)」
感覚型の人は具体的な情報や事実を重視し、現実的な取り組みが得意です。
直観型の人は未来志向で、抽象的なアイデアや可能性に魅力を感じます。

〇判断の仕方:論理的な判断を重視する「思考型(T)」と感情や価値観に基づく判断を重視する「感情型(F)」
思考型の人は論理的に物事を分析し、客観的な判断をする傾向があります。
感情型の人は他者の感情を理解し、価値観や個人的な関係性を大切にする傾向があります。

〇外界への接し方:計画的に進める「判断型(J)」と柔軟に対応する「知覚型(P)」
判断型の人は組織的で計画的な行動を好み、確実性を求める傾向があります。
知覚型の人は柔軟で臨機応変な行動を取り、自由な状況を好む傾向があります。

〇神経症的傾向:「慎重型(T)」と「自己主張型(A)」
正式なMBTIには存在しませんが、簡略化したMBTIのテストを補うための指標として追加されたものに「慎重型(T)」と「自己主張型(A)」という要素があります。
ビッグファイブの性格診断ツールの中にある「神経症的傾向」の要素をMBTIに追加したものであり、この要素が高い値を「慎重型(T)」、低い値を「自己主張型(A)」といいます。

●「4タイプ」

 4タイプは、岡田斗司夫氏により提唱された人間の欲求特性を定量的に分類する手法です。
これらのタイプは、外向性・内向性と抽象的・具体的の特性の2つの次元に基づいて分類され、グラフ上で配置されることによって判定されます。それぞれのタイプには特有の欲求と行動傾向があり、個人の特性を示すものです。
 4タイプには「右回りの法則」「優位劣位の法則」「対角線の法則」といった理論が提唱されていますが、ここでは省略します。

〇「注目型」
特徴:注目されたい欲求が強く、情熱や自己の熱意を重要視します。
行動傾向:目立ちたがりで、人情深くおせっかいな一面があります。無視やないがしろにされることを苦痛と感じます。

〇「司令型」
特徴::勝負にこだわる欲求が強く、努力家で上下関係に敏感です。合理的なルールに基づいた勝敗判定を重要視します。
行動傾向:礼儀正しく、社会的地位や序列を気にし、向上心と努力を持ちます。他人への好き嫌いを表に出しません。

〇「法則型」
特徴:物事の法則やしくみを理解することに喜びを感じ、自主性が強いです。成功や失敗に対して理由を求めます。
行動傾向:一歩引いて現実を冷静に判断し、参謀的な役割を果たします。行動パターンが決まっていることが多いです。

〇「理想型」
特徴:理想的な目標や価値を重視し、物事をやり遂げることにこだわります。プロセスや手段を目的よりも重要視します。
行動傾向:正義感が強く、頑固なこだわりを持ち、自由で自己を大切にします。客観的な成功よりも内的な基準を重視します。

参考にした性格理論との構成要素の関係

・性格曼陀羅の構成要素の名称は図を見やすくするために付けたものです。
・性格曼陀羅において、構成要素の意味は他の性格理論とわずかに異なります。要素同士の関連性を考慮して決定しました。
・「外向性(外向)」や「新奇探索性(探求)」などは、これまで生殖に強い影響を与えてきた可能性がありますが、図では社会的な意義を重視して配置しました。

●ビッグファイブ

本来のビッグファイブにおいては、「認知的共感性(主観)」と「同調性(社会)」の代わりに「協調性」という要素が含まれています。この性格理論では、「協調性」を「共感性」と「同調性(社会)」の2つの要素に分け、さらに「共感性」を「認知的共感性(主観)」と「情動的共感性」に分けました。そして、構成要素には「認知的共感性(主観)」のみを取り入れました。「認知的共感性(主観)」は、MBTIでは「道理型(感情型)(F)」に相当する要素です。

協調性 → 共感性 + 同調性(社会)
共感性 → 認知的共感性(主観) + 情動的共感性

協調性、共感性、情動的共感性は構成要素に含まれていません。

 本来のビッグファイブでは、「新奇探索性(探求)」の代わりに「経験への開放性」という要素が含まれています。「経験への開放性」には、抽象的な事柄への興味、拡散的思考、芸術的感受性との関連性が指摘されています。
これらの要素は、この性格論では異なる構成要素に対応しています。抽象的な事柄への興味は「抽象的思考傾向(抽象)」(MBTIでの「直観型(N)」)に、拡散的な思考に関しては「拡散的思考傾向(拡散)」(MBTIでの「探索型(認知型)(P)」)に対応しています。芸術的感受性に関しては、「認知的共感性(主観)」(MBTIでの「道理型(感情型)(F)」)と、この性格論における「新奇探索性(探求)」との相互作用による影響が考えられます。

経験への開放性 → 新奇探索性(探求) + 抽象的思考傾向(抽象) + 拡散的思考傾向(拡散) + 認知的共感性(主観)

経験への開放性は構成要素に含まれていません。

外向 ← 外向性(高) {外向型(E)}
内向 ← 外向性(低) {内向性、内向型(I)}
主観 ← 認知的共感性(高) {間主観性、感情型(道理型)(F)}
客観 ← 認知的共感性(低) {客観性、思考型(論理型)(T)}

増殖 ← 神経症的傾向(低) {楽観性、自己主張型(A)}
生存 ← 神経症的傾向(高) {悲観性、慎重型(T)}
適当 ← 誠実性(低)
堅実 ← 誠実性(高)

自然 ← 同調性(低)
社会 ← 同調性(高)
安定 ← 新奇探索性(低)
探求 ← 新奇探索性(高)

拡散 ← 拡散的思考傾向 {探索型(認知型)(P)、帰納的思考傾向}
収束 ← 収束的思考傾向 {計画型(判断型)(J)、演繹的思考傾向}
具体 ← 具体的思考傾向 {感覚型(S)}
抽象 ← 抽象的思考傾向 {直観型(N)}

●MBTI

 この性格論において、構成要素の意味は、本来のMBTIとは僅かに異なっています。性質同士の関係性を考慮して決定しました。

外向 ← 外向型(E) (外向性)
内向 ← 内向型(I) (内向性)
主観 ← 道理型(感情型)(F) (認知的共感性、間主観性)
客観 ← 論理型(思考型)(T) (客観性)

増殖 ← 自己主張型(A) (楽観性)
生存 ← 慎重型(T) (神経症傾向、悲観性)

拡散 ← 探索型(認知型)(P) (拡散的思考傾向、帰納的思考傾向)
収束 ← 計画型(判断型)(J) (収束的思考傾向、演繹的思考傾向)
具体 ← 感覚型(S) (具体的思考)
抽象 ← 直観型(N) (抽象的思考)

●4タイプ

 この性格論において、構成要素の意味は、本来の4タイプとは僅かに異なっています。性質同士の関係性を考慮して決定しました。

外向-主観 ← 注目型
外向-客観 ← 司令型
内向-主観 ← 理想型
内向-客観 ← 法則型

図の見かた

各様式の名称

 図には、大きな円の中に上下左右に四つの小さい円が配置されています。小さい円のそれぞれの名称は以下の通りです。

上:行動様式
左:感情様式
右:思考様式
下:認識様式

分類の仕方

・各様式では、2つの二項対立軸によって、4つの型のいずれかに分類されます。
・各様式それぞれで分類された4種類の型の組み合わせによって性格が形成されます。
・それぞれの軸の対となる2つの要素は、片方が顕在化するともう片方が潜在化します。
・それぞれの軸の対となる2つの要素のうち、他者との関係の中で、どちらかがより多く顕在化することによる、要素に対する無意識の選好に基づいて分類されます。
・この性格理論では、性格は無意識の好みによって形成されるもので、少なくとも先天的な能力との直接的な関係はありません。

影響の連鎖

 各様式は完全に独立しているわけではなく、互いに影響し合っています。つまり、一つの様式が他の様式に影響を与え、その影響がさらに連鎖的に他の様式に影響を及ぼすということです。基本的には、この影響はすべての様式を右回りに循環します。(認識→感情→行動→思考→認識→…… の順になります。)

 同様に、各様式内においても、それぞれの要素は連鎖的に影響を及ばします。基本的には、要素の影響は右回りに循環します。

個人の価値観に対する影響

 各様式は、どれも性格に多くの影響を与えますが、下に向かうほど個人の価値観に対してより強い影響を及ぼします。図の下に位置する「認識様式」が、他の様式に比べて、個人の価値観に対して強い影響を与えます。一方で、図の上に位置する「行動様式」は、相対的に影響が弱くなります。「感情様式」と「思考様式」はこれらの中間に位置します。

個人の価値観に対する影響(小):「行動様式」
個人の価値観に対する影響(中):「感情様式」「思考様式」
個人の価値観に対する影響(大):「認識様式」

社会的性質と非社会的性質

 各様式の構成要素は、各々の様式内において、図全体で見たときの中心に近づくほど、社会的な性質になり、外側にいくほど非社会的な性質になります。

〇社会的性質

認識様式:「外向」
感情様式:「堅実」
行動様式:「社会」
思考様式:「具体」

〇非社会的性質

認識様式:「内向」
感情様式:「適当」
行動様式:「自然」
思考様式:「抽象」

 非社会的性質だからといって、それが劣っているというわけではありません。人間の性格や個性には様々な側面がありますが、すべての性質には社会的な意義があります。社会的性質は、他者との関係を築き、協力して生きるために重要ですが、非社会的性質も重要な役割を果たす場合があります。
 例えば、独自の趣味や個人的な時間を大切にする人などがいます。独自の趣味や能力を持つことで、社会に新たな価値や刺激をもたらすことがあります。また、個人的な時間を持つことで、自己を見つめ直し、内省する時間を得ることができ、それが他者との関係にプラスの影響を及ぼすこともあります。
 社会的性質と非社会的性質は、互いに補完しあい、個人としての豊かさを生み出す要素となります。一人一人が自己の特性を尊重し、他者とのバランスを取ることで、社会全体がより豊かなものとなるのです。だからこそ、非社会的性質も大切にするべきであり、その性質が社会的な意義を持つことを理解することが重要です。

古い性質と新しい性質

 各様式は、進化の過程において左から右に向かうほど、古い性質から新しい性質へと変化します。
図の左に位置するのは「感情様式」であり、最も古くからある性質です。一方、図の右に位置するのは「思考様式」であり、最も新しい性質です。「認識様式」と「行動様式」はこれらの中間に位置します。

古い:「感情様式」
中間:「認識様式」「行動様式」
新しい:「思考様式」

 同様に、各様式の構成要素も、左にいくほど古く、右にいくほど新しい性質へと変化します。

〇古い性質

感情様式:「適当」
認識様式:「主観」
行動様式:「安定」
思考様式:「具体」

〇新しい性質

感情様式:「堅実」
認識様式:「客観」
行動様式:「探求」
思考様式:「抽象」

 社会性の問題と同様に、これらの要素も古くからある要素であるからといって、それが劣っているというわけではありません。実際、どの要素も必要不可欠な性質を持っています。これらの要素は、それぞれが特有の役割を果たし、バランスよく組み合わさることで、人間の多様な能力と特性を形成しています。古い性質も、進化の過程で重要な役割を果たし続けているのです。それぞれの要素が相互に補完しあい、人間の個性や行動の多様性を支えているといえるでしょう。

性格と能力の関係

 この性格理論では、性格は無意識の選好によって形成されるもので、少なくとも先天的な能力との直接的な関係はありません。個々の人がそれぞれ無意識に好み、傾倒する要素があり、それらの組み合わせによって性格が形成されます。性格と能力はどのような関係にあるのか、というような問いは、この性格理論では問題にしていません。能力や特性は多様で個性的なものであり、それが個人の魅力や多様性を生み出します。人々の特性をより多面的に理解し、個々の性格を尊重することが重要です。

ミームについて

 性格曼陀羅における重要な概念の1つが「ミーム」です。ミームとは「文化的な情報を人々が模倣して伝え合い、競い合うことによって次の世代に受け継がれる仕組み」を指します。この概念は進化生物学者のリチャード・ドーキンス氏によって「利己的な遺伝子」(1976)という本で提唱されました。
   ミームは脳から脳へと伝わる文化の単位であり、メロディやキャッチフレーズ、服の流行などがその例です。ミームは文化の伝播を理解するのに役立つ概念であり、社会や文化の変化を理解するのに役立ちます。
 ミームは、遺伝子の適応進化と類似させて考えることができます。遺伝子が体の特性を形成するのに対し、ミームは文化を形成します。そして、遺伝子と同様に、ミームも競争して次の世代に伝えられます。遺伝子とミームの進化は関連しており、相互に影響しながら進化しています。
 ミームは比喩ではなく、実際に存在するものであり、生物の進化においても教育(文化の伝承)が重要な役割を果たします。例えば、一部の鳥の鳴き声や動物の狩り方は遺伝子には含まれていない情報であり、親から子への教育によって伝えられます。同様に、人間社会においても言語や慣習、技術など様々な文化がミームによって伝承されています。
 ミームは情報を記録し複製する能力を持ちますが、遺伝子の進化よりもはるかに速く進行します。遺伝子の進化には数千年がかかりますが、ミームは数日や数時間で変化することがあります。そのため、現代ではミームの進化が遺伝子の進化よりも大きな影響を持つと言えます。
 性格曼陀羅は、人間の多様な性格が「ミームを模倣して伝え合い、人々の間で循環させることによって、文化の適応進化を促すメカニズム」として機能していると考えます。この考えが、性格曼陀羅において基本的な視点となっています。



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