【詩】 紫苑
血液混じりの尿をみて
俺の身体が崩壊してきていると
そういったあなたは
ひとしきり泣いてから
口元を緩めて
死ぬのは怖くないんだ
と呟きました
でも苦しいのは厭だなぁと
言葉を紡ぐあなたの目は
私の先の何処か遠くを見ていました
その夜
痰が絡んで苦しいから眠れないと
荒い呼吸をしていたあなた
それは痰ではなくて
身体そのものなのだと
身体そのものが苦しいのだと
そんな事実を何処かへ追いやって
頓服をひとつ
またひとつ
あなたの口に運びます
きっとこれでは足りない
翌朝の訪問診療を迎えて
オピオイドの持続皮下投与が始まりました
眠れるようにと優しさを添えて
ごく少量のミダゾラム
苦しみに灼かれるあなたを
そっと眠りの世界に誘います
おやすみなさい
ー了ー
拙作にお付き合い頂き誠にありがとうございます。願わくは、優しい夜の光が貴方を包み、穏やかな眠りの時間が訪れますように。
#終末期医療 #とは
#眠れない夜に #思い出す
#詩のようなエッセイ #祈り #命 #人生
#紫苑 #花言葉は #追憶
#目を覚ましたあなたは生きてると呟いたあとあなたの孫におはようと言ってから逝きました
いいなと思ったら応援しよう!
ご支援いただいたものは全て人の幸せに還元いたします。