哀しみを癒やす話 〜涙の効用について〜
人は産まれた瞬間に泣き始めます。この世に生を受けて初めて感じるのは哀しみでしょうか。それとも、泣き出すほどの喜びでしょうか。
涙を流すのはヒトだけではありませんが、豊かな感情を起点に泣くことができるのは人間に備わった独特な性質です。
情動に伴う「涙」には、どんな秘密が隠されているのでしょうか。
泣くと気持ちが楽になることを経験から感じている方も多いと思いますが、医学的にも涙とストレス緩和については多数の報告があります。
ストレスによって交感神経が過緊張状態になっているところで、泣くことが副交感神経を優位にさせ、セロトニンなどのホルモン分泌が促されて気持ちが落ち着いてくる、と解釈されます。「反射的に流れる涙」と「感情に伴って流れる涙」の成分が違うことも知られており、過剰なストレス物質を外に排出しているという説もあります。
分かりやすくまとまっている日本語の文献がありましたので、詳しい解説はそちらにお任せすることにして(↓下記リンク↓)、
Hideho Arita, Emotional tears are induced by activation of medial prefrontal cortex. 日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)129, 99~103(2007)
ダウンロードリンクhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/129/2/129_2_99/_pdf/-char/ja
ここでは喜劇と悲劇について考えてみたいと思います。喜劇に人気が集まるのは分かります。面白いからです。シェイクスピア時代から発展して、現在ではお笑い芸人のコントも広義の喜劇に含まれると思います。私はお笑いが大好きです。
一方で、救いようのない「悲劇」にも大きな需要があることも事実です。
なぜ悲劇が娯楽になるのでしょうか。
人の苦しみをみるのが楽しいのでしょうか。ゾクゾクとした快感を覚えるのでしょうか。…そういう趣味の方がいることも否定しませんが、大衆文化として求められる悲劇は、泣くためにあるといっても過言ではないと私は考えます。悲劇的な展開からラストシーンで報われてハッピーエンドを迎えるようなものも、涙をさそう作品というものは、笑いとはまた異なる魅力があります。
最後に泣いたのは、いつですか?
幼い頃にはちょっとしたことでも泣いていたのに、成長するにつれて泣くことが悪いことのような気がしてきて、我慢して、我慢して、泣くことを忘れてしまった人もいるかもしれません。
泣くことは、悪いことなのでしょうか。
たしかに例えば仕事中に突然泣き出して何も手につかなくなって、理由を聞かれても嗚咽混じりで何を言っているのか分からないような状態になったら、周りは困惑するでしょう。
泣くことは、悪いことなのでしょうか。
難しい状況だなと思いますが、私はそれを悪いこととは思いません。そんなに泣きたくなるような大きな感情の動きがあったなら、やむを得ないことだと思います。どうしても迷惑を気にするなら、後でひとりになってこっそり泣くという方法もありますが、実は、周りに人がいるところで泣いた方がリラックス効果が高くなるという報告もあるのです。もうね、泣きたければ泣けばいいんですよ。
しかし、哀しいのに泣けない不自由な大人は、泣き方を忘れてしまっているかもしれません。そこで活躍するのが「悲劇作品」です。作品の悲しさに自分の哀しさを混ぜて、涙と一緒に流してしまうという作戦です。心の琴線は人それぞれですが、いくつか観ていけばヒットするものもあるでしょう。
小説も劇場もドラマも良いものですが、素早く涙にアプローチすることを考えると2時間前後で完結し、映像と言葉と音楽の三重奏で迫り来る「映画作品」が最高です。悲劇と分類していいのか悩ましい作品もありますが、悲劇的な展開を含み涙を誘う、私の好きな映画を幾つか並べてみます。
「きみに読む物語」
「イミテーション・ゲーム」
「ライフ・イズ・ビューティフル」
「博士と彼女のセオリー」
「50回目のファーストキス」
「ボヘミアン・ラプソディ」
「幸せのちから」
「きっと、うまくいく」
「永遠の0」
「容疑者Xの献身」
「そして父になる」
「博士の愛した数式」
「こんな夜更けにバナナかよ」
…タイトルみてるだけで泣けてきました。
「泣けばすむと思ってる」?
ええ、そうです。いいじゃないですか。
そんなときだってあります。
自分の感情を受け入れて、どっぷり浸かる日があってもいい。もっと泣けばよかった、もっと笑えばよかったのかな…って、ちょっと福山好き過ぎますね。マジイケメン。失礼しました。
拙文にお付き合い頂けたことに至上の感謝を。貴方の哀しみが少しでも癒えますように。
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