小児期における危機回避モデルの提案
嬉々として幼稚園に通う息子は三歳という年齢相応に危険を顧みず遊びに没頭します。ソファで飛び跳ねて足を踏み外したり、走って滑って転ぶのは珍しいことではありません。
大怪我の危険性が高くなければ、ある程度は好きにしていたらいいというのが私の立場です。過保護に安全を提供すると、却って自身の身体能力を見誤ったり必要な感覚や運動能力が培われないと考えるからです。
ところが三歳児。
事故のリスクが高くなる年頃です。
自我意識も強く発達してきますから、ただ禁止するだけでは効果が乏しいばかりか、面白がって危険行動がエスカレートしていくかもしれません。
では、どうするか。
渡邊家ではベア・グリルスに登場いただきます。
例えば公園の岩場。
大人の背丈よりも高い丘に岩を伝って登ろうとしています。片手にはジョウロ。さすがに両手が使えた方がいいし、滑ったときにジョウロの先端がひっかかったり刺さったりするかもしれません。とはいえお気に入りのジョウロを彼が簡単に手放すとも思えない。ここでベア・グリルスの登場です。
ジョウロだよ、と息子が応えるとベア・グリルスは肩をすくめていいます。
息子はコナン君ポーズで考えてから、パッと明るい表情で応えます。
「コレは置いてく!パパ、持っててくれる?」
息子よ。今はベア・グリルスです。
…まぁいいでしょう。岩場を登って遊ぶときに両手をフリーにして安全に配慮するという当初の目的は達成されました。
こうして息子はサバイバルとは進んで危険を冒すものではなくて、危険と隣り合わせの環境で如何にして安全を確保し生存確率を上げられるかというものだと学び始めます。身近な遊びの中にこそ、大切な学びの機会があるものです。
危機回避の学習において重要なのは、危険なものを遠ざけて触れないようにすることではありません。構造上の欠陥のあるような遊具は是正する余地があると思いますが、日常に潜む危険を完全に排除することは不可能ですから、小さな危険に敢えて触れながら、経験を通して学習していくのが生きた智慧を身につける有効な手段と考えます。ただ禁止するのではなくて、想像力を働かせて危険を予測できるように促したい。勇敢なるベア・グリルスのように。
春の陽気の散歩道、息子が地面を指して言いました。
「アリだよ!ベア・グリルスが食べて美味しいって言ってたよね!」
…しまった。
ベア・グリルスは悪食です。
アリを食べない方がいい理由を探しながら、私は空を仰ぎました。
拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方にベア・グリルスの加護がありますように。
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