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英語の時制⑤-0c:仮定法(後半)(学校英語の復習)[丁寧で控えめな表現&敬語]

学校英語における仮定法の定番説明(3記事に分割)

 中学・高校での英語習得が不十分な人のために、学校英語の復習を記事化。分かりやすくするため、個人的な整理法やコメントも加えております。今後も少しずつ追加・修正していく予定です。

学校英語の仮定法と実用的な仮定法(TOEICパート2など)の違い

 この記事では「仮定法を使った丁寧で控えめな表現」をご説明します。学校英語では扱いが小さい項目ですが、TOEICパート2では主役級。現状、「仮定法(を使った丁寧で控えめな表現)」として扱われるべき表現が学校英語では「助動詞」の項目のなかで単なる慣用表現のような扱いしか受けていない、という見方もできるでしょう。複合的な文法項目なので、助動詞と仮定法のどちらで扱うべきか混乱するのも無理はありません。
 一方で、実用的には滅多に遭遇しない古めかしい表現が学校英語では今でも多数紹介されています。細かく見ると学校英語には意外と不備があり、なかでも特に仮定法は再編・再考が必要な文法項目と言えるかもしれません。

【英語の時制の基礎知識】 これまでの時制記事の復習
①時制には、大きく分けて2つの種類(階層)がある
 1. 基本時制(大きな階層:専門的にはテンス
  a. 現在時制動詞の現在形で表す
  b. 過去時制動詞の過去形で表す
  c. 未来時制will+動詞の原形で表す
     be going to+動詞の原形で表す
 2. 特殊な時間を表す表現(基本時制の下の階層:専門的にはアスペクト
  a. 進行形be+動詞の現在分詞で表す
  b. 完了形have+動詞の過去分詞で表す
②自動詞・他動詞とは別に、動詞には2つの種類(分類方法)がある
 1. 動作動詞:1回のまとまった動作を表す
 2. 状態動詞:同じ状態の継続を表す(心理・感情、知覚・感覚、その他の状態)
③英語の動詞の活用形
 1. 学校英語の活用は3通り+α
  3単元のsがつかない原形、過去形、過去分詞
  現在形は原形と同じ(3単元のsは例外)、be動詞は別枠、現在分詞(形)も別枠
 2. 厳密な意味での活用は5通り
  原形、現在形、過去形、過去分詞(形)、現在分詞(形)
④英語の助動詞にも活用形がある(仮定法との関連で必要なものだけ紹介)
 will, would  can, could  may, might  (shall), should

【仮定法の基本原理】直説法と仮定法、仮定法過去と仮定法過去完了
❶ 直説法と仮定法
1. 直説法は事実・現実を表す:英語の基本時制(≒動詞の活用形)をそのまま使用
2. 仮定法は事実に反する仮定・現実とは違うこと(可能性が低い想像・願望)を表す
 基本時制(≒動詞の活用形)を過去に1段階スライド(時制を1つ前にずらす)
  現在(&未来)→過去、過去→過去完了(=大過去)
❷ 仮定法過去と仮定法過去完了
1. 仮定法は、「事実・現実とは違う」ことを表すための英語特有のルール
 現在(発言時と同時):直説法は現在形、仮定法は過去形(仮定法過去)
 過去(発言時より前):直説法は過去形、仮定法は過去完了形(仮定法過去完了)
2. 日本語「もし/仮に」に相当する英語"if"直説法・仮定法どちらにも使う
3. 仮定法過去ではif節のbe動詞過去形はwereが原則、口語ではwasも可
4. 仮定法の現実との隔たりを現在と過去の時間的距離で表す」が定番説明
5. 直説法を使うか仮定法を使うかは、話し手の主観的判断

【仮定法の個別具体例①】 if節を使う仮定法の基本2種類
1. 仮定法過去(if節を使う仮定法1)
 形:If+S+動詞過去形, S+助動詞過去形+動詞原形
 和訳:もし〜なら、〜だろう(に)/するのだが
2. 仮定法過去完了(if節を使う仮定法2)
 形:If+S+動詞過去完了形, S+助動詞過去形+have+動詞過去分詞
 和訳:もし〜した(だった)なら、〜した(だった)ろう(に)/したのだが

前記事⑤-0a

【仮定法の個別具体例②】 if節を使う仮定法の簡単な応用
 1. 仮定法過去完了仮定法過去の組み合わせ(if節を使う仮定法3)
 形:If+S+動詞過去完了形, S+助動詞過去形+動詞原形(+now)
 和訳:もし(過去に)〜だったなら、(今は)〜なっているだろう(に)/するのだが
 2. "were to / should"で未来を表す(if節を使う仮定法4):仮定法未来と呼ぶ人も
 形:If+S+[were(was) to, should]+動詞原形, S+助動詞過去形+動詞原形
 和訳:もし(これから)〜すれば/することがあれば〜なるだろう(に)/なるのだが

【仮定法の個別具体例③】 if節を使う仮定法の慣用表現
 1. as if/though (if節を使う仮定法5)
 形a:as if/though+S+動詞過去形(仮定法過去)
 和訳:まるで〜であるかのように
 形b:as if/though+S+動詞過去完了形(仮定法過去完了)
 和訳:まるで〜であったかのように
 2. if it were not for ~ / if it had not been for ~ (if節を使う仮定法6)
 形a:if it were not for ~(仮定法過去)
 和訳:もし〜がなければ/なかったら
 形b:if it had not been for ~(仮定法過去完了)
 和訳:もし〜がなければ/なかったら
 3. if only ~(!) (if節を使う仮定法7)
 和訳:〜でありさえすれば/〜しさえすれば/〜ならいいのに

【仮定法の個別具体例④】 従属節からifを省略する仮定法(倒置)
 1. if省略(古めかしい表現、「if節を使う仮定法」の応用)
  a. 仮定法過去
 
形1:Were+S+…, S+助動詞過去形+動詞原形
 形2:Should+S+動詞原形, S+助動詞過去形+動詞原形
  b. 仮定法過去完了
 
形:Had+S+動詞過去完了形, S+助動詞過去形+have+動詞過去分詞

【仮定法の個別具体例⑤】 if節がなく主節だけの仮定法慣用表現

 1. wish
 形a: I wish+仮定法過去の従属節
 和訳:〜なら(いいのに/よかったのに)なあ
 形b: I wish+仮定法過去完了の従属節
 和訳:〜だったら(よかったのに)なあ
 2. it’s time
 形: It’s (about/high) time+仮定法過去の従属節
 和訳:もう〜してもよいころ・時間だ/早く〜しなさい

【仮定法の個別具体例⑥】 「もし/仮に」を表すif節の代替表現
 1. with : ~があれば(仮定法過去)/~があったら(仮定法過去完了)
 2. without / but for : ~がなければ(仮定法過去)/~がなかったら(仮定法過去完了)
 3. otherwise : そうでなければ/さもなければ(仮定法過去も仮定法過去完了も)
 4. to不定詞 : ~すると/することで/すれば/したら(仮定法過去も仮定法過去完了も)
 5. 分詞構文 : ~していたら(仮定法過去も仮定法過去完了も)
 6. 主語・副詞句 : ~だったら/であれば(仮定法過去も仮定法過去完了も)

【仮定法の基本原理(追加)】 過去時制と仮定法
❸過去時制(過去&大過去)と仮定法
1.
英語の時制では「過去形は過去時制の目印」が基本中の基本
2. 過去完了(形)は大過去(=過去のさらに過去)の目印」も実は重要
3. 仮定法も考慮すると、過去形過去時制・仮定法過去のどちらにも使う
4. 過去完了(形)
大過去・仮定法過去完了のどちらにも使う
 3と4
ただの過去・大過去なのか仮定法なのか判断・区別が必要
 鍵は、if助動詞の過去形(動詞ではなく):仮定法の最も重要な目印2つ
5. ifと助動詞過去形がどちらも出現しない仮定法表現
 動詞の過去形・過去完了(形)+仮定法の目印を把握(各自で挑戦)

前記事⑤-0b

【仮定法の個別具体例⑦】 仮定法を使った丁寧で控えめな表現1

 1. wouldを使った丁寧な表現(will vs would):依頼、許可を求める表現
   a. Will you close the window? : 直説法
   b. Would you close the window? : シンプルな仮定法過去
   c. Would you mind if I closed the window? : 仮定法過去+"mind if"
   d. Would you mind closing the window? : 仮定法過去+"mind -ing"
 (直説法では、"Will you mind ~?"ではなく"Do you mind ~?")
  ※"Would you ~?"は、相手への依頼や自分の行為の許可を求める表現
  ※"Would you ~?"は、学校英語の「助動詞」で通常扱われる表現
  ※"Would you mind -ing?"は、「動名詞」で通常扱われる表現
 2. "I wonder if ~"を使った丁寧な表現 : 遠回しな依頼(≒遠慮)
   a. I wonder if you can help me. : 直説法現在+直説法if
  ※「助けてくれるかな」というような直接的な依頼表現
   b. I wonder if you could help me. : 直説法現在+仮定法過去if
  ※遠回しにすることで少し丁寧な依頼になる、が定番説明
   c. I wondered if you could help me. : 動詞過去形+仮定法過去if
  ※より遠回しになり丁寧さが増す、が定番説明 : wondered は直説法?仮定法?
   d. I was wondering if you could help me. : 動詞過去進行形+仮定法過去if
  ※さらに丁寧さが増す、が定番説明 : "was wondering"は直説法?仮定法?
   e. I've been wondering if you could help me. : 動詞現在完了+仮定法過去if
  ※学校英語では紹介されていないようですが、実用上は普通
 3. wonder 以外に thinkhope も似たような意味で使うことが可能
  Do you think you could help me?

【仮定法の個別具体例⑧】 丁寧で控えめな表現2(学校英語では「助動詞」)

以下は、後日公開予定の「助動詞」記事で詳しく扱う予定です。
 1. wouldを使った丁寧な表現(will vs would)
 a. I'd like something to drink.
 b. I'd like to do it.
 c. I'd rather not do it.
 d. I would say ~.
 e. That would be great.
 2. couldを使った丁寧な表現(can vs could)
 a1. Can I ~?
 a2. Could I ~?
(vs "May I ~?")
 b1. Can you ~?
 b2. Could you ~?
 c1. Can it be true?
 c2. Could it be true?
(vs "Might it be true?")
 3. may vs might
 a. May I ~?
 b1. You may be right
 b2. You might be right.
 c. Might it be true?
 d. "may well" vs "might well"
 e. "may as well" vs "might as well"
 4. shall vs should
 5. 慣用表現"had better"

◉繰り返しになりますが、学校英語ではこうした中途半端な扱いの「仮定法を使った丁寧で控えめな表現」はTOEICパート2では主役級で、日常会話でも頻出する表現です。さらに言えば、実は多くの場合に助動詞の過去形が仮定法の唯一の目印です(現在や未来のことを過去形で表すのは、文法的には仮定法の原理の応用)。

【仮定法の基本原理(追加)】 日本語と英語の敬語体系の違い

❹英語の敬語は「仮定法で時制を過去にずらす」が原則

 1. 英語は仮定法を応用することで丁寧で控えめな表現を実現
 2. 直説法直接的な意味合いが仮定法間接的なニュアンスに
 直説法は現実的で断定的
 仮定法は主観的な考えや思い(妄想)という体裁(≒遠慮)
 「過去形にすることで現実と距離を置く」(≒慮)、がほぼ定番説明
 3. 日本語の敬語に相当:和英の敬語体系の違いを意識することが鍵
 "Please close the window."等の「お願い命令文」に要注意
 "Excuse me. Tell me the way to the station."にも要注意
  ※"please / excuse me"を使っていても命令文なので無作法
 尊敬語・丁寧語・謙譲語を駆使する日本語とは大違い

参考にした総合英語書籍
 アトラス
 INSPIRE
 Evergreen/Forest
 ジーニアス

以下をクリックして時制編の関連記事をご覧ください。学校英語で説明が足りない点を補ってもらうための教材です。

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