〈教育実践:積極的生徒指導〉ICTのより善い使い方を自分たちで考える
はじめに
本実践は「第7回 NITS大賞 優秀賞」に選出して頂いた取組です。
これも全て、子供たちの未来のために日々試行錯誤されている先生方のお力と、その思いに真っ直ぐに応えてくれた生徒の存在があってのことです。
この場を借りて、栄誉ある賞を頂くことができたことに、心から感謝申し上げます。
ところで、NITS大賞って?
「独立行政法人教職員支援機構が、先進的で他校の参考になるチーム学校の取り組みを全国から募集・表彰するコンテスト」と説明されています。
エントリー要件は、「学習指導要領の着実な実施、学校における業務改善への取組、ポストコロナ時代の新たな学びの実現、特色ある学校づくりなど、一人一人の子供を主語にする学校教育の実現に向けて、多様な人々との協働を含め、のびのびと楽しく誇りをもって学校改善に取り組んだ実践活動を実施していること」だそうです。
つまり、一人一人の子供を主語にする学校教育であり、それが多様な人々との協働的な実践であれば良いといったところでしょうか。
ただ、前度または同年度を含む期間に取り組んだ実践活動が対象となります。
エントリー方法
エントリー方法は、エントリーシート(A3サイズ)と連絡シート(A4サイズ)の2つを記入して期限内に提出するだけです。
(例年9月〜11月頃が募集時期となります)
この手軽さがNITS大賞の大きな強みです!
もしあなたが・・・
うちの学校の取組を全国の学校に紹介したい!
チーム学校としての本校の結束力をPRしたい!!
一度で良いから、専門家の評価を受けてみたい!!!
でも、実践研究に挑戦してみたいけど、論文を書く時間がない それに、教育論文を書くのは何か難しそう・・・
そんな思いがあるのなら、是非とも来年度にNITS大賞に挑戦されてみてはどうでしょう?
私自身、子供たちや先生方と創り上げたこの実践が「少しでも他の学校の役に立つ嬉しいな」といった思いで応募しました。
審査方法と評価基準
一次審査では、エントリーシート(A3サイズ)をもとに、書類審査が行われます。
二次審査では、10分間のオンラインプレゼンテーションをもとに審査が行われます。
評価基準は以下のとおりです。
困難をどのように乗り越えたのか
どのように周りと協働していったのか
なぜそのような結果が得られたのか
それを可能にしたリソースをどのように確保したのか
ちなみに、第7回NITS大賞に選出された学校のエントリーシートと活動発表の動画は、以下のリンクからご覧になれます。
また、本校の実践である「デジタル・シティズンシップの醸成 ~学校全体の対話によるガイドラインの創造~」に関しては以下のリンクから内容を確認する事ができます。
PDF:1.22MB
動画を見る
本実践の意義
さて、本実践の具体的な内容をご説明します。
生徒一人に一台ずつ整備されている学習用に配布されている端末(1人1台端末)によって、学びの可能性が大きく広がりました。
その反面・・・
学習目的の使用や、他者への配慮を欠いた行動など、
端末の使用に関するトラブルが多く発生しているのも事実です。
このようなトラブルが起こったとき、みなさんならどう対応されますか?
もしかして・・・
端末を没収したり、使用を禁止したことはありませんか?
(まさに、私がそうでした・・・)
ただ、結局イタチごっこで問題は解決しませんでした。
端末の指導に心身をすり減らしている同僚もいました。
この時、ICTの利用に関して、大人が管理していくことには、限界があることに気づいたのです。
だったら、逆にこれらの課題を生徒が自分事として捉え、主体的に解決していくことができたら素敵だと思いませんか?
つまり、端末の利用を大人主導で管理するのではなく、主語を「子供」に置き換え、生徒自身で課題を解決していくということです。
そこで、本実践では、ICTの利用における納得解を生徒と教員の対話によって創り上げていきました。
その具体的な手立てが、「1人1台端末ガイドライン」の策定です。
ここでは、情報の収集、課題の分析、対話によるガイドラインの策定、その実践と評価といった一連の取り組みを、生徒主体で展開します。
注意すべきは、ガイドラインを策定することが決して目的ではないことです。
生徒が目の前の課題を解決していく「過程」で、ICTをより善く活用するための資質を高めていこうと考えました。
指導の実際
1.情報の収集
初めに、生徒は、全校生徒、教員、保護者の計440名を対象に事前調査を実施しました。
その際、質問項目の検討から分析方法の決定、アンケートの作成に至るまで、生徒が中心となって行いました。
これは、調査の立案と実施を生徒の手で行うからこそ、当事者意識が高まると考えたためです。
2.課題の分析
さらに、事前調査の結果分析も生徒が行いました。
こちらが、その活動によって、生徒が見出した「解決すべき課題」です。
生徒・教員・保護者の立場から計18個選択しています。
なかには、驚くような課題も含まれていますが、決して本校だけの問題ではないと考えます。
3.対話による納得解の創造
次に、この18個の課題を解決するために、二つの柱となる対話の場を設けました。
一つ目の柱が、生徒と教員の対話の場である、リーダー研修会です。
リーダー研修会には、実行委員の生徒と全職員の計80名が参加しました。
当日は、生徒と教員が徹底的に意見を交わしました。
二つ目の柱が、生徒同士の対話の場である、全校一斉学級会です。
全校一斉学級会では、生徒の自治的な活動を推進するため、各クラスから司会団の生徒を募りました。
司会団の生徒は、学級会の進行や記録を行います。その他にも板書計画や、その材料となる実態調査を自分たちの力で進めました。
どのクラスにも、支持的な風土が存在し、自分事として1人1台端末のより善い活用方法を考えている様子が見られました。
※授業の様子をより細かく知りたい方は、本記事の一番下にあるリンクへ
4.自治的な実践
話し合い後は、各クラスで決定した約束事を一箇所に集約しました。
こちらが、それによって完成した「1人1台端末ガイドライン」です。
このガイドラインは、拡大印刷して校内に張り出しています。
さらに、創り上げたガイドラインが単なる飾りとならないよう、生徒の自治的な実践を求めていきました。
例えば、各学級の広報係の生徒は、自分のクラスの約束事をポスターにしました。
このポスターは生徒がAIを用いて制作したものだそうです!
(ICT活用に関しては、生徒の方がすごいなぁと心から思います)
そして12月上旬には、取組の集大成として、臨時生徒総会を実施しました。
総会では、活動の成果や課題について生徒が自らの言葉で語りました。
また、発表内容は動画にして公開することで、地域にも情報発信を行っています。
5.評価
最後に、全校生徒を対象とした事後調査の結果の一部を紹介します。
「1人1台端末の正しい活用方法について考えることができたか」に対しては、全校生徒の94%(327名)が「とてもそう思う:56%(196名)」「そう思う:38%(132名)」と回答しました。
この結果から、生徒が端末の使用に関して「落ち着いて内省しよう」とする姿が見て取れました。
※より細かな実践の評価を知りたい方は、本記事の一番下にあるリンクへ
おわりに
本実践は、生徒とともに1年間かけて少しずつ創り上げた取組です。
もし、「本実践をご自身の勤務されている学校でも取り入れてみたい!」と思っていただけたなら、以下のリンクから「活動支援マニュアル」をご覧になられてください。
マニュアルからは、実際に使用した教材をダウンロードしたり、生徒の作品(ポスターや動画)も閲覧したりする事ができます。
本実践が、少しでも同じような課題を抱えている学校の少しでも力になれれば幸いです。
今後は、ICTを活用した理科教育の実践についても少しずつ発信していけたらと思います。(本職は理科の先生なので・・・)
よろしければ、次回の記事も読んでいただけると嬉しいです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?