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コロナ禍のエッセンシャルワーカーの人権〜米国の労働時間における男女格差が20-50%拡大〜

[最新ニュース]#新型コロナ #エッセンシャルワーカー #ビジネスと人権  

新型コロナウイルス発生によるエッセンシャルワーカーの女性たちの権利侵害について、ファッション誌の米国版VOGUEの記事と国際機関による提言に触れながら、ビジネスと人権の視点で解説します。

エッセンシャルワーカーの定義

新型コロナウイルス/COVID-19の未曾有の流行は、医療、所得、人種、階級、性別役割分担における格差を拡大させています。そして、もっと忙しく働き続けているエッセンシャルワーカーは、労働者としての権利が十分に尊重されない状態が続いています。

そもそもエッセンシャルワーカーとは、誰を指すのでしょうか。日本では、例えば、朝日新聞では、次のように定義しています。

ライフラインの維持に欠くことができない仕事に従事している人たちを指す。
医療従事者、薬局、スーパー、物流企業の従業員、公共交通の運転手、警察官、消防士、ごみ収集作業で働く人などが該当する。
<出典:朝日新聞 夕刊(2020年5月26日)

一方、米国ではエッセンシャルワーカーを"Essencial Critical Infrastructure Workers"と表現し、幅広い分野を含みます。下図のように、政府・自治体、ヘルスケア・公共衛生、金融、交通、水道、ダム、情報技術、通信、エネルギー(原子力発電関連)、食糧・農業、商業施設、化学、緊急サービス、防衛基地、重要な製造業が含まれます。

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<出典:CISA,"Guidance on the Essential Critical Infrastructure Workforce: Ensuring Community and National Resilience in COVID-19"

国によって定義は異なるものの、グローバルなレベルで考えると、これらの職業に従事する人びと、特に女性の権利が侵害されています。

COVID-19と女性の権利

2020年4月にリリースされた、女性支援のための国連主導のイニシアティブ・女性のエンパワメント原則(Women's Empowerment Principles:WEPs)による『COVID-19とジェンダー平等 〜民間セクターができること〜』では、COVID-19の発生による女性への影響を次のように分析しています。

<COVID-19による女性に対する複合的な影響>
●賃金格差と不安定な雇用(女性の方が低収入で預貯金も少なく、不安定な雇用)
●バリューチェーン( グローバルバリューチェーンの崩壊により、女性に大きな影響)
●医療現場(多くの女性が医療従事者として働くが、過小評価され低賃金)
●女性の健康(限られた医療資源がCOVID-19対策に 振り向けられ、産婦人科や周産期医療などの女性のための保健医療サービスが後回し)
●ケアワーク(平常時から家事は女性に過重負担。保育園、介護 施設、医療施設の職員の多くは女性)
●非必須セクター(リモートワークやテレワークが できない、観光業やホスピタリティ関連の業種・職種に従事している女性経営者・女性労働者の多くが経済的ダメージ)
●女性に対する暴力(ジェンダーに起因する暴力が指数関数的に増加)
●ドメスティック・バイオレンス(隔離とソーシャル・ ディスタンスによりDVと虐待のリスクが上昇)
●移動手段(女性は男性よりも公共交通機関を利用する傾向があり、感染リスクが上昇)
<出典:Women's Empowerment Principles『COVID-19とジェンダー平等 〜民間セクターができること〜』>

次に、具体的な事例を見てみましょう。

米国の介護士アイリーン・ハントさんのストーリー

米国オレゴン州の介護施設で働くアイリーンは、新型コロナウイルスが流行り始めてすぐ「7歳の娘を自分の母親の家に預けよう」と決断しました。認知症、アルツハイマー病、筋ジストロフィーなどの患者を抱える施設で働き続けることで、感染リスクが高くなると感じ、家族に感染させることを危惧したからです。

それから2ヶ月半、学校は休校になり、娘にはずっと会えず、別々に暮らす日々が続きました。アイリーンは毎晩「神様、どうか感染しないように守ってください。いつかもう一度、娘と一緒に過ごせますように」と祈っていました

アイリーンは、エッセンシャルワーカーの生活環境を考慮せず学校やデイケアを閉鎖した状態で経済活動を再開した政府の方針に失望しています。「誰が子どもの面倒を見ると想定して、経済活動を再開しているんでしょうか?」と憤ります。

女性のアンペイドワークに依存する新型コロナ対策

VOGUEの記事によれば、米国のほとんどの学校は秋以降開校予定ですが、パートタイムでしか登校しないスケジュールの予定で、子どもたちが自宅から学習する日々が続くそうです。

それにより、米国の女性たちは、自宅にいながら"トリプルシフト"を課せられていると言います。「自分の仕事(リモートワーク)」「子どもや家族のケア」「子どもの遠隔授業の補助(ディスタンスラーニング)」の3つです。「子どもや家族のケア」と「子どもの遠隔授業」は無償労働(アンペイドワーク)として、多くの女性に負荷がかかっています。

米国の最新のジェンダー研究によれば、女性の労働時間について、以下のような統計が出ています。

"幼い子どものいる女性は、パートナーの男性の労働時間よりも自分の仕事の時間を4−5時間減らし、家族のケアや遠隔授業の補助などアンペイドワークに従事している。その結果、労働時間における男女格差は20-50%拡大している"
<出典: "COVID-19 and the gender gap in work hours"より抜粋>

つまり、女性が家庭の事情を優先し、労働時間を削減せざるを得ないことによって、所得のジェンダー格差が広がっているのです。

エッセンシャルワーカーの女性の気持ち

米国では、新型コロナ流行初期に、約3,300万人の労働者(そのほとんどが有色人種のエッセンシャルワーカーかつ低賃金労働者、特にヒスパニック系)には、有給休暇が1日も付与されていなかったことが判明しました。それが原因で、症状が出ても検査も受けることなく、感染が拡大し、そのまま死亡するケースが増えたそうです。

その後、有給休暇に関する規定が新型コロナ緊急対策法("the Families First Act"及び"the Heroes Act")に盛り込まれましたが、本記事では、それだけでは男女格差の是正方法としての解決策ではないことを指摘しています。そして、雇用主に対し「子どもがフルタイムに学校に通うことができないとき、社員やその家族の体調が優れないとき、有給休暇を与えるべきだ」と提言しています。

アイリーンも、本有給休暇制度の対象には選ばれませんでした。エッセンシャルワーカーとしての心情をこう語ります。

「テレビコマーシャル(CM)でエッセンシャルワーカーに向けた偽善的なコンテンツがある。それを見て泣きたいけれど、実際感謝されているようには感じない」

本来、米国政府が策定した有給取得制度は、一部の労働者にしか与えられない"特権"ではなく、労働者としての当たり前の"基本的な権利"であるべきです。有給休暇制度だけ付与されても十分ではありません。

次に、国際機関の提言をもとに、より女性たちのニーズを満たすことができる包括的な企業の取組みについて考えてみましょう。

国際機関による女性の権利を尊重した提言

2020年3月に発表された国連児童基金(UNICEF)、国際労働機関(ILO)、国連ウイメン(UN Women)による雇用主への共同提言によれば、雇用主は社内の男女別データをしっかり収集し、政策を改善するためのファクトを政府に情報提供しながら、以下の具体策を提言しています。

<7つの具体策>
1. 柔軟な勤務形態の導入(フレックスタイム、特別休暇制度、リモートワークや職務変更)
2. 安全で適切な保育サービスを享受できるようワーキングペアレントを支援する(低所得者、移民・非正規労働者、 家事・介護労働者、障害者、単身世帯、親族からの支援を受けていない親などを優先した差別的でない保育制度)
3. 労働安全・衛生管理の強化による職場の感染リスクの予防と対策(労働者・顧客・消費者の保護、最前線のエッセンシャルワーカーの感染対策
4. 労働安全・衛生管理についての指導・訓練を行う(母乳育児支援のための授乳施設の衛生管理、食堂の衛生管理なども含む)
5. 発熱、咳、呼吸困難の場合には、適切な医療機関(病院・保健所等)を受診するように労働者に奨励する(家庭内暴力対策ホットライン、精神衛生対策のカウンセリング支援なども含む)
6. ストレスから身を守るために、労働者を支援する(感染リスクへのストレス、労働者・家族のストレス、子育てによるストレス、家庭内暴力や性的搾取リスクへのストレス)
7. 労働者とその家族の脆弱性に対処するような社会保障を充実させる(政府の取り組みだけではなく、企業の取組みも期待)
<出典:UNICEF/ILO/UN Women, "FAMILY-FRIENDLY POLICIES AND OTHER GOOD WORKPLACE PRACTICES IN THE CONTEXT OF COVID-19: Key steps employers can take"より抜粋。筆者仮訳>

また、女性のエンパワメント原則(WEPs)による『COVID-19とジェンダー平等 〜民間セクターができること〜』では、 民間企業がジェンダー平等と女性のエンパワーメントを推進するために必要な取組みを、次のように提言しています。

<リーダーシップ>
COVID-19に関する方針や危機対応策を、 社内外のステークホルダーの意見を踏まえた、 ジェンダー視点のあるインクルーシブなものにする
●対応策を効果的かつ持続的なものにする ために、政府、従業員・社員の代表との協議が欠かせない。そうした協議における女性の参画を確保する
COVID-19の危機的状況下においても、ジェンダー平等推進に取り組むという意思をCEOや経営陣が表明する
危機管理タスクフォースや対応担当チームにおけるダイバーシティを確保し、女性と男性が意思決定に参画できるようにする
●COVID-19の状況に関する正確な情報やアドバイスを社員に定期的に提供するためのコミュニケーション・チャンネルを確立する
●社内のITやコミュニケーション・インフラを補強し、リモートワークの環境整備・規模の拡大を進める
COVID-19の女性への影響への問題意識を広く共有し、他の企業にもWEPsに署名することを促す
<職場>
●家庭内でケア責任(育児、介護など)を担う従業員のニーズに対応する。子育て中の従業員のためのフレキシブルな就業時間の設定などを通じ、特にひとり親や障害を持つ子どもがいる従業員にも配慮した施策を実行する
●全ての従業員に対して、COVID-19の蔓延期及びその後も、全額支給で、柔軟な働き方を採用する。短期雇用者、契約雇用者に対しては、少なくとも生活賃金相当を支払い、 病欠や育児・介護休業、緊急時における有給休暇を利用できるようにする
男性従業員に対し、家事、育児、高齢な家族、障害を持つ家族の世話など、家庭内で のケアワークの責任を分担・共有するよう促す
●全ての従業員の身体的、精神的、感情的な健康を考慮する。外出制限によって、DVのリスクが高まることにも留意する。人事部などに DV被害にあっている従業員へのサポート担当者を決めておくことを検討する
●全ての従業員に対し、DV相談ホットライン、暴力サバイバーへの支援、産前産後のケアなど、あらゆる公的支援サービスの情報を 提供する
<市場(サプライチェーン等)>
●新たな地元のビジネス、特にCOVID-19の 打撃を受けている女性経営者のビジネス、 または、COVID-19への対応を支援しているビジネスを発掘し、積極的に製品やサービスを購入する。ビジネスパートナーや従業員にもそのように働きかける
●女性起業家・経営者は男性に比べて、平常時においても資本金の規模や担保の有無など資金調達において不利な状況にある。COVID-19 の影響で経営や債務の支払いが困難になっている女性起業家が、あらゆる金融支援・融資 に平等にアクセスできるような措置をとる
ジェンダー・ステレオタイプ、固定的性別役割分担、差別、不平等、有害なマスキュリニティ(男性らしさ)の解消に向けて、社内外のコミュニケーションを通じた積極的な対策を 講じる
<コミュニティ>
●COVID-19対応の最前線で活動している小規模の組織や個々の女性・男性への関心を喚起 し、ビジビリティの向上支援する
女性団体やシェルターなど、困難を抱える女性(高齢者、暴力被害者、シングルマザー、 障害のある女性等)を支援している組織や 団体に助成金等の資金を提供する
個人防護具、食料、サービスの寄付や、家賃や光熱費などの家計費の支払いの一時的な 猶予の提供などを通じて、地域住民の日常 生活を支援する
<透明性と報告>
従業員の安全対策の一環として、仕事や生活上どのような困難を抱えているか、健康状態はどうか、DVのような問題に直面していないか といった項目についてのアンケート調査を行う。可能な範囲でデータを公表し、公共的な社会・経済政策の策定に貢献する
●WEPsの取組みの一環として、ジェンダー視点に基づいたCOVID-19対応策を報告・情報共有する
<出典:Women's Empowerment Principles『COVID-19とジェンダー平等 〜民間セクターができること〜』>

日本ではエッセンシャルワーカーの労働組合が賃上げ要求

日本でも、各国と同様に、エッセンシャルワーカーへの負担は大きく、感染リスクが高いことから退職者も増え、人材不足です。その人材不足を補うために、エッセンシャルワーカーの新規求人が急増しているようです。

米国の場合は、将来的な労働訴訟を防ぐ意味としても、早急に緊急対策を制定したと言われています。日本でも、すでに、エッセンシャルワーカーからの最低賃金の引き上げ要求が労組から提案されています。

今回のパンデミックのような期限の見えない緊急事態には、あらゆる職場で過酷労働・強制労働が発生している可能性が高く、後々に労働訴訟が起きてもおかしくありません。賃金だけではなく、エッセンシャルワーカーの処遇について見直す機会でしょう。

まとめ

COVID-19のようなパンデミック時には、政府の緊急対策や隔離政策(都市ごとのロックダウンなど)によって、企業活動にも私たちの日常生活にも、大きな影響を与えることが明らかになりました。日々の経済社会活動が停止・急激に変化したことで、一気にあらゆる分野の人権リスクが高まっています。

ビジネスと人権に関する指導原則」に則ると、脆弱な人びと(つまり今回のテーマとしては、エッセンシャルワーカーの女性)への負の影響を防止・軽減・救済することが企業の義務であり、雇用主は影響のある範囲全体の労働者の人権を尊重する必要があります。

しかし、エッセンシャルワーカーの権利は、単に当事者やその家族だけではなく、パンデミックという緊急事態にサービスを受益している私たちも一緒に、彼らの権利を考え、よりエッセンシャルワーカーが働きがいのある環境になるよう、アクションを起こすことが重要です。

Social Connection for Human Rights/ 鈴木 真代

<参考にした記事・レポート>

Women's Empowerment Principles『COVID-19とジェンダー平等 〜民間セクターができること〜』(2020年4月)
朝日新聞デジタル, ”「エッセンシャルワーカーに報いて」最低賃金アップ主張”, 2020年7月18日
Forbes Japan, ”コロナ高死亡率の米国のヒスパニック系、研究が指摘するその要因”,2020年8月6日
CISA,"Guidance on the Essential Critical Infrastructure Workforce: Ensuring Community and National Resilience in COVID-19",March 2020 
UNICEF/ILO/UN Women, "FAMILY-FRIENDLY POLICIES AND OTHER GOOD WORKPLACE PRACTICES IN THE CONTEXT OF COVID-19: Key steps employers can take", April 2020
Caitlyn Collins,Liana Christin Landivar,Leah Ruppanner, William J. Scarborough, "COVID-19 and the gender gap in work hours", Gender, Work and Organization, June 2020 

<参考情報>
補足的に、国際人権NGO・Human Rights WatchのチェックリストUN Womenによるチェックリストをご紹介します。

Human Rights Watch, 新型コロナウイルス感染症:人権チェックリスト
[一般市民への継続的な情報提供]
Q1: 政府は新型コロナウイルス感染症の世界的流行の拡大について一般市民に時宜を得て正確でアクセスしやすい情報を提供しているか?
Q2: 政府は新型コロナウイルス感染症否定論に反論し、新型コロナウイルス感染症について事実に基づく妥当な懸念を表明したジャーナリストや内部告発者などの訴追に積極的に反対しているか?
Q3: 政府はあらゆる形のインターネット遮断やインターネット上の情報へのアクセスの幅広い制限を解除したか?
Q4: 政府は情報格差(デジタル・デバイド)の解消に取り組んでいるか?
Q5: 政府はインターネット上の情報へのアクセスのしやすさや価格を改善しようとしているか?
[検査と治療の提供]
Q6: 国にいるすべての人が権利として、差別を受けることなく質の高い医療にアクセスできる状態になっているか?
Q7: 政府が強制的な検疫や隔離のための施設をもつ場合、そこにいる人に医療、感染からの保護、食料と水を提供しているか?
Q8: 政府は貧しい人やLGBTの人、障がい者、先住民など歴史的に取り残されてきた集団の医療への障壁を取り除こうとしているか?
Q9: 政府は出入国管理法の執行を恐れて治療を避ける人が安全に治療を受けられるような策を講じているか?
Q10: 検査キットや人工呼吸器が公平に使用されているか?
Q11: 政府は医療へのアクセスを制限する国際貿易制裁の実施を止めたか?
[医師や最前線で働く人の保護]
Q12: 医療従事者に適切な防護具が提供されているか?
Q13: ウイルスへの曝露リスクがあることを理由とする報復から医療従事者を保護するために策を講じているか?
Q14: 企業や政府は公共交通機関、食料雑貨店、配達、倉庫、刑務所、在宅ケアなど必要不可欠な職で働く従業員のために新型コロナウイルス感染症に対する適切な予防措置や検査へのアクセスを確保しているか?
Q15: 政府は刑務所、拘置所、入管収容施設での密集を緩和し「社会的距離を取ること(ソーシャル・ディスタンシング)」を可能にするため収容されている人の数を減らしているか?
Q16: 大半の未決拘禁者、軽罪で収監されている者、起訴されていない被拘禁者、非暴力犯罪を犯した未成年など、拘禁されるべきではない人を釈放しているか?
Q17: 当局は高齢者、基礎疾患のある人、障がい者、妊婦など新型コロナウイルスへの感染から重大な病気になる危険がより大きい受刑者の釈放を検討しているか?
Q18: 政府は人権活動家、ジャーナリスト、政治活動家など政治囚その他の不当または恣意的に投獄された者を解放したか?
Q19: 政府は密集する留置場・拘置所に人を増やさないためにセックス・ワーカー、非暴力の薬物犯罪者、「道徳的犯罪」で逮捕された者など刑事罰を受けるべきではない者の逮捕を止めるよう警察に命じているか?
[水と衛生設備へのアクセスの改善]
Q20: 政府は領土内にある密集キャンプで生活する難民、庇護申請者、国内避難民、移民に対する支援の指針として人道支援基準のベスト・プラクティスを使用しているか?
Q21: 政府はすべての人が清潔な水に継続的にアクセスを確保できよう、給水停止の一時停止を含めた積極的な策を講じているか?
[国境を超えた支援]
Q22: 政府は他国の新型コロナウイルス感染症対策を助けるために資金を集め運用する国際的な取り組みに貢献しているか?
[非常事態権限と治安部隊による権利濫用への対処]
Q23: 非常事態権限が合法で必要に応じた方法で使用されているか?
Q24: 非常事態権限は期限つきで、立法府や司法府の監視対象になっているか?
Q25: 政府は、人権義務の違反(一時停止)を関係人権条約機関に報告しているのか?
Q26: 治安部隊が「ソーシャル・ディスタンシング」を徹底させたり医療用品の配達をしたりしている場合、当局は権利濫用を防ぎ隊員の責任追及をするための措置をとっているか?
[その他の権利を犠牲にすることを避ける]
Q27: 新型コロナウイルス感染症の世界的流行に対応するために政府が行っているデジタル監視技術の使用は、プライバシー権・集会の自由・表現の自由を守るように厳密に制限されているか?
Q28: 使用されている技術は、4月に100以上の市民社会団体が打ち出したデジタル監視の8つの条件を満たしているか?
Q29: 政府が国境を閉鎖している場合、難民申請を認めているか?
Q30: 政府は移動制限や「必要不可欠でない」医療処置の制限が中絶ケアを受ける権利を損なわないようにしているか?
Q31: 避妊薬や適切な妊産婦医療が今でもすぐに利用可能か?
[経済的影響への対処]
Q32: 新型コロナウイルス感染症がもたらす経済的悪影響を軽減するための政府の計画は、低所得・未登録・非公式部門の労働者を含むすべての労働者の基本的な経済的権利の保障を前提としているか?
Q33: 政府は人が適切な住居を失うのを防ぐための策を講じているか?
Q34: 政府は自宅が職場から遠い移住労働者やホームレス、非公式のキャンプで暮らす者を支援するためのサービスを準備しているか?
Q35: 政府は学校で出される給食に頼っていた貧しい子どもたちへの追加支援を準備しているか?
Q36: 政府は休校や移動制限のため保育を過度に引き受けなければならない可能性の高い女性を支援しているか?
[心理社会的な支援]
Q37: 新型コロナウイルス感染症による「ソーシャル・ディスタンシング、や経済的被害や愛する人を失うことなどが引き起こす心理的損害をふまえ、政府は市民が精神衛生サービスを受けられるようにしているか?
[子どもの学習の継続]
Q38: 政府が学校を休校にした場合、すべての子どもが自宅で学習できるようにする策を講じているか?
Q39: 政府は障害のある子どもを含めて歴史的に取り残されてきた集団が遠隔教育システムにアクセスできるようにしているか?
[家庭での暴力やマイノリティに対する暴力への対処]
Q40: 国家当局は外国人に対するヘイトスピーチや反移民のヘイトスピーチに反論しているか?
Q41: 政府は家庭での暴力の犠牲者を支援するために資源を投入しているか?
<出典:Human Rights Watch『新型コロナウイルス感染症:人権チェックリスト』
●UN Women副事務局長によるCOVID-19チェックリスト(政府、自治体、議会、その他の意思決定者を対象とする10の質問)(筆者にて要旨を抜粋)
1. 移動が制限されている状況では、過去の感染症を踏まえ、女性に対する暴力が増加することは明らかである。(中略)女性が支援リソースやホットライン、シェルターにアクセスできるようにするために、あなたはどんなことを実施しているか。
2.あなたは、 経済対策の対象者をどのように意思決定し、誰を受益者として想定しているか。(中略)女性の政治家や意思決定者から指導を受けているか。女性優位の労働市場を代表する雇用者や労働組合が発言権を持っていたか。女性団体、女性シェルター、NGOに相談したか。インフォーマル・セクターで働く女性を考慮したか。
3. 女性は男性よりも低収入で経済力がない。もし現金給付を考えているのであれば、女性の経済的な男性への依存を緩和するために、家計ではなく個人を対象としているか。
4. 経済が減速・停止した場合に備え、女性が大半を占めるシングルペアレントを対象とした介入を準備しているか。
5. 世界中の高齢者、特に 80 歳以上の高齢者の大半は女性である。(中略)行政は高齢者の状況を把握しているか。彼らが一人暮らしなのか、支援を受けているのかを知っているか。一人暮らしで、外出しないように言われている場合、誰かが介護をしてくれるように計画を立てているか。今、誰もが頼りにしている情報が、高齢者にまで届いているか確認したか。
6. 高齢者介護は、女性が行っていることが大半である。(中略)彼女たちが感染から守られていることを確認するために、あなたは何をしているか。彼女たちに報酬が支払われていることを確認しているか。その金額は十分か。
7. 多くの国では、男性よりも女性の方が医療保険に加入している割合が少ない。検査や医療に対する女性の権利が守られていることを確実にするために、あなたは何をしているか。
8. 農業や食料生産は低賃金で、多くの女性が従事している。労働条件、給与、土地へのアクセスなど、彼女たちの権利を守るために何をしているか。
9. 多くの学校は閉鎖され、リソースのある学校は、オンラインや遠隔教育に移行した。男子が勉強を続けている間に、女子が年下の兄弟や祖父母の世話を請け負わないように、どのようなことをしてきたか。
10. 子どものいる親が安全な状況で子育てを継続するために何をしているか。女性の健康をどのように守っているか。
<出典:UN Women,"Checklist for COVID-19 response by UN Women Deputy Executive Director Åsa Regnér"(筆者仮訳)>

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