夢分析の理論家達が夢の対決!フロイト、ユング、ハイデガーその他の人々…
古本屋で、夢に関するまた面白い本を見つけたので紹介させてください。
不安症に悩むマーシャと名乗る人物が持ち込んだ、「ゴキブリの出てくる怖い夢」の報告書をもとに、
・フロイト派
・ユング派
・メラニークライン派
・現存在分析派(広義のハイデガー派)
・カルチュラルスタディー派
・ゲシュタルト心理学派
という、総計六つの学派からエース級の研究者が送り込まれ、
それぞれの学派の理論に基づいて、この患者、マーシャの夢分析を行い、その内容と成果を競いあうというもの。
フロイトやユングご本人ではなく、その学派のエース研究生が集ったという形ですが、まあ、事実上、「夢分析」の代表理論家達のコンペ、夢の対決篇みたいな内容になっている!
夢に関する理論や、夢分析に興味のある(私のような)人には何ともたまらない内容ですが、
我が意を得たり、と膝を打ったポイントは、大きく二つ。
「夢分析」というものは「唯一絶対の理論」なるものが確立されているわけではなく、学派や学者によって、同じ夢を題材に分析しても、まるで違う解釈になるようなものである点。これはユング派の研究者の方が本書の中で強く主張していることですが、「夢分析とは患者の治療の中で使われるべきメソッドであり、『こういう夢に対しては、こういう解釈をするべし』とマニュアル化できるような体系にはなり得ない」ということです。この点は、私も強調したい。
もうひとつは、この本に登場する六つの夢分析の中で、「これは男性性器のことだ」「これは性行為をしたいという欲望を表しているのだ」と、夢の中に出てきたイメージを何でもかんでも「性」の隠喩だとしてしまうのはフロイト学派だけであり、他の学派はもっと自由な隠喩として夢を分析していること。フロイト派が悪い、というのではないけど、私も常々、「夢分析ってのは、なんでもかんでも『あなたの性的な欲求不満が夢に現れてるのだ』と言われちゃうものなんでしょう?」と怪訝な印象を持たれているのはフロイト学派の責任とは私も思ってる。「なんでかんでもセックスに関連付け」をしてくるのは、いろいろある「夢分析」学派の中で、あくまでフロイト学派だけなので、どうもっと皆さんにも安心してほしい。
あと、もうひとつ、思いついたことがあった。私自身は、ミハイル・バフチンという学者の影響で夢分析を始めたのですが、バフチンの名前はこういう場には出てこないみたいだ。まだまだ世の中ではマイナーな存在なのか!?だとすれば、私自身の夢分析は、アマチュアながらもなかなか少数派に属する貴重な事例を溜めているのかもしれないと思い、やる気が出てくる。
▼孤高の思想家バフチンに関する参考書もひとつ、あげておきますね▼
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