北米をバスで旅する 4
その淫靡な盛り場が手招きしていた。
店頭には猛禽類のような、鋭い鶏冠をもつ若者が屯していた。
エントランスで3ドルの入場料を払うと、黒い肌に金色のネックレスをかけた男が緞帳のようなカーテンを乱雑に開いた。むっと生々しい臭いと喧騒に満ちた空間があった。
ワン・ドリンクの注文を求められたので、バドを注文した。
入った途端に、脳天に瓶でも落ちる未来さえ警戒していた。
無鉄砲が無分別を着込んで、無軌道に歩んだ過去を恥じる。
ステージがあり、派手なビートを音響ががなり立てていた。
そこには踊り子がポールダンスを踊っていた。
高校時代に見たFRASH DANCEという映画を思い出していたが、眼前に繰り広げる現実と生々しさの落差に驚くばかりだ。
踊り子は純粋なブロンドではなかった。
スペイン系の血が入っていて、頭髪と下とは色が違っていた。
激しく髪を揺さぶってリズムに乗り、乳房が別の生物のように自在に弾んでいた。その姿を見て残念ながら、扇状的な気分にはなれなかった。そればかりか喉まで込み上げる鉄の味。その光景は余りにもカロリーが高すぎるし、僕らには食あたりを起こしそうな味だ。
嘴の黄色い雛が巣穴を間違えて潜り込んだ程度にしか、他の観衆は思ってはなかっただろうと思う。
好奇心は猫をも殺すらしいが。
九つの魂までは持ちはしない。
怯えを隠し、虚勢を張る夜だ。