餓 王 鋳金蟲篇 幕間
適齢期というものがある。
恥ずかしながらの年齢を刻み、後悔の多い半生を振り返って、初めて文章になるような経験値をつんだ。
それでも何度も途中で筆が止まってしまった物語を、今は不思議なほど順調に書き進めている。
この長い物語は、20代初めに着想した。
というか阪九フェリーの雑魚寝で、夢に見た。
何度か書いているけれど、私の夢はちゃんとストーリー仕立てで、伏線もあればオチもある。しかも登場人物の名前もはっきりと憶えている。
餓王という神話めいた長大な物語を書いている。
その語り部は、ナラ・シムという聖職者である。
物語の挿絵を探していて、運命のような一枚をひき当てた。
まさにイメージ通り。
自分の頭にあった絵が誰かの手によって描かれている。
浅黒い僧服に身を包み、左手には錫状棍を持っている。
かつてアーリア純血の黒騎兵を率いた男が、最下層の遍歴の旅を強いられている。彼は蛇のDNAを融合させられて、特殊能力を持つ。
まず温度を視ることができる。
そして長命を得ている。
また肉体が損傷しても冬眠に入れば、覚醒時には恢復している。
その代償として温度感覚を失い、低い体温を焚火や日光で温めないと活動休止に陥る。
この絵に扶けられて物語を紡いでいる。