故郷を走る 3 l 一陣の風のように
嬉野温泉で朝湯を堪能した。
やっぱり郷里の泉質は肌身に合う気がする。
私は晴れ男で定評があるので、よく願掛けとしてツーリングに誘われていた。それでもこの春先は天候不順で、島からの航路は欠航続きだった。雨具の準備も久々で、やはりこの後1時間余りは小雨に見舞われた。
佐賀市内に入り、やっと路面が乾いてきた。
商店街がちんまりとなってしまい、人影も疎らになっていた。目当てのお店は閉店後に解体されて駐車場になっていた。みつばちというお店で、ドリアと珈琲が美味しかった。ああ、これも幻の味になってしまったのか。
さて困ったと歩いていると、行列が出来たぎょうざ屋さんがあり、吸い込まれるように列に並ぶ。だが皆さん初見らしい。
その中のJKっぽい女子と並んでカウンターについて、歓談しながら頂いた。
実はここ。かなりの有名店らしい。
このツーリングの目的として、太刀洗で公開されている震電の復元機体の見学があったのだけど。どうも事故渋滞らしく動かない。次回に譲ることにする。
やむなく雲の中を泳ぐような三瀬山中を走って行く。
夜は、中高生の頃、同じ寮暮らしをしていた旧友と焼き鳥をつまんだ。彼とも4年ぶりになるだろうか。
「あのぎょうざ屋、当たりを引いたな。困った挙句に連絡貰っても、その場所だったらすぐにその店を紹介したな」
目尻を細めて、そう彼は笑う。旧友たちの近況にも、逝去した同級生や闘病している旧友の話が混じる。
「まあ、皆いい歳になったし、会えるときに会っておかないとな」
物寂しくなった後半生に。
潤いと彩りを求めている。
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