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書評「セルフケアの道具箱-伊藤絵美著」-選択理論と認知行動療法を比較できるチャンス本‼-【選択理論を何でもありで学ぶメルマガ(4号)】

辛さを和らげる100 のワークをまとめた、ありがたい本

認知行動療法の人気カウンセラーである伊藤絵美さんの「セルフケアの道具箱」は、ストレスの辛さを和らげ、ストレスと上手に付き合うセルフケアのための100 のワークをまとめた本です。

この本の目次は、

第1章 とりあえず、落ち着く
第2章 誰かとつながる
第3章 ストレッサーに気づいて書き出す
第4章 ストレス反応に気づいて書き出す
第5章 マインドフルネスを実践する(身体、行動、五感を使って)
第6章 マインドフルネスを実践する(思考、イメージ、感情に気づいて手放す)
第7章 小さなコーピングをたくさん見つけよう
第8章 生きづらさの「根っこ」を見てみよう
第9章 「呪いのことば」から「希望のことば」へ
第10章 「内なるチャイルド」を守り、癒す

となっています。この目次からはわかりにくいですが、この本は、「認知行動療法」 「マインドフルネス」「コーピング」「スキーマ療法」などの理論や手法について、「セルフケアのためにふだん使いしたい人」の立場から、エッセンスを抽出し、わかりやすく説明し、整理し、まとめあげた労作です。

ストレスに対するコーピング(対処法)として、「とりあえず、落ち着くこと」「誰かとつながること」「ストレッサーとストレス反応を書き出して外在化すること」「マインドフルネス(外部ストレッサー、自分の知覚や行動、心身の状況等について、淡々と意識を向け、気づいて、ふーんと手放す)」「サポートネットワークのリストづくり」「コーピングレパートリーのリストづくり」などの方法を、体系的に100個も教えてくれる、ありがたい本です。

選択理論と認知行動療法を比較するのに最適な本

しかしながら、私には、ちょっと違った角度から、もっと大きな意味のある本でした。

というのは、この本は「認知行動療法」 「マインドフルネス」「コーピング」「スキーマ療法」について、これらの関係性や全体像をきわめて簡潔に整理して、まとめてくれており、選択理論学習者にとっては、選択理論と認知行動療法を比較するのに最適な資料だということです。

「選択理論をふだん使いしたい人(私)」の立場から、認知行動療法を選択理論の上にどの程度、どのように乗せることができるのかをみてみたい、また、選択理論と認知行動療法を比較すると、それぞれが「相手を照らしあう鏡」になり、それぞれの意味や強みがよく見えてくるのではないかと考えました。

「認知行動療法によるセルフケアの図式」

そこで、さて、この本によると、「認知行動療法によるセルフケアの図式」は、ざっとまとめると、

「ストレス反応の原因となるストレッサー(状態、できごと、対人関係)
⇒ ストレス反応(認知+感情+身体反応+行動が一体の辛い状況)の発生
⇒ストレッサーやストレス反応に淡々と気づく(マインドフルネス)
⇒ストレッサーやストレス反応の辛さを和らげるコーピング(対処法)の実践」

というものになると思われます。
なお、この記事では、「スキーマ療法」「内なるチャイルド」と選択理論の関係についてまでは扱えてませんのでご容赦ください。

「行動の内的コントロール心理学」としての選択理論の要点

一方、「自分の行動の内的コントロールの心理学」としての選択理論の要点を、ここでは次のようにまとめることとします。

①自分は自分の行動を内的コントロールしている
②自分の行動は、「自分に入ってきた情報」をうけて、「自分が知覚した現実」と「自分が願っていること(願望)」とのギャップ(満たせていない欲求)を埋めるために引き起こされる
③自分のすべての行動は「行為行動、思考行動、感情行動、生理反応」の4つの要素が一体となって構成されており、これらは連動して変化するという意味で「全行動」と捉えられる
④全行動の4つの要素のうち、感情と生理反応は直接コントロールできないが、行為と思考を変えることで間接的にコントロールできる(改善できる)

「認知行動療法によるセルフケアの図式」を選択理論にのせる

そこで、先にまとめた「認知行動療法によるセルフケアの図式」を選択理論の土台にのせてみるには、その図式において、
「ストレス反応の原因となるストレッサー(状態、できごと、対人関係)」を外部情報としてとらえ、その次にプロセスとして、上記の「選択理論の内的コントロールの考え方①~④」を挿入したのち、セルフケアの図式の残りの部分が「自分の内的コントロールによる全行動」であることを示せばよいと考えられます。

つまり、

「ストレス反応の原因となるストレッサー(状態、できごと、対人関係)」(=外部から自分の内的システムに入ってきた情報)↓
                        ↓
【選択理論による行動の内的コントロールを意識するプロセス】
①自分は自分の行動を内的コントロールしている
②自分の行動は、「自分に入ってきた情報」をうけて、「自分が知覚した現実」と「自分が願っていること(願望)」とのギャップ(満たせていない欲求)を埋めるために引き起こされる
③自分のすべての行動は「行為行動、思考行動、感情行動、生理反応」の4 つの要素が一体となって構成されており、これらは連動して変化するという意味で「全行動」と捉えられる
④全行動の4つの要素のうち、感情と生理反応は直接コントロールできないが、行為と思考を変えることで間接的にコントロールできる(改善できる)
【上記により、以下を「自分の内的コントロールによる行動」と捉える】

⇒ 全行動としてのストレス反応(認知+感情+身体反応+行動が一体となった辛い状況)の発生
⇒ストレッサーやストレス反応に淡々と気づいて「そうか、ふ~ん」と手放す(全行動としてのマインドフルネスによる知覚)
⇒ストレッサーやストレス反応の辛さを和らげるために「全行動としてのコーピング(対処法)」を実践する

となります。このように、認知行動療法によるセルフケアは、選択理論では「自分の行動の内的(セルフ)コントロール」にあたると考えられます。

この本の「認知行動療法」と「選択理論」は何が違うのか?

そして、ここで、「認知行動療法によるセルフケアの図式」と「選択理論の図式」をごくシンプルにまとめて比較すると、

【認知行動療法によるセルフケアの図式】
ストレッサー(刺激)⇒ストレス反応⇒コーピング(対処法)の実践

【選択理論の図式】
外部情報⇒ 本人の内的行動システムによる行動選択⇒ 全行動の実践

というように、この本で見る「認知行動療法によるセルフケアの図式」には、選択理論のような「本人の内的行動システムによる行動選択」の部分がありません。つまり、「行動の内的コントロールシステム」や「人は自分の行動を内的コントロールしている」という概念がないということのようです。

一方、選択理論の方では、「ストレッサー(状態、できごと、対人関係)」を「自分の内的コントロールシステム」に入ってきた「情報」としてとらえ、「情報」を内的システムで処理して、「ストレス反応としての全行動」「辛い状況を和らげるコーピング(対処法)としての全行動」を選択したり、実践している、と捉えることになります。

以上のように考えてくると、この本の「認知行動療法によるセルフケア」と選択理論の一番大きな違いは、「本人の内的行動システムによる行動選択」という概念の有無であり、この概念が、選択理論を「内的コントロールの心理学」として特徴づけているのだと改めて気づくことができました。

他の心理学やカウンセリングを「選択理論にのせる」とは?

そして、今回の記事を書いていて思ったことは、認知行動療法にかかわらず、いろいろな流派の心理学やカウンセリングについても、先述した「選択理論の内的コントロールの考え方①~④」をプロセスの途中に組み込むことができるものであれば、「選択理論の土台に乗る」と考えてよいのではないかということです。

その結果、選択理論の学習実践者としては、内的コントロールによる効果的な行動(行為、見方、考え方)の選択肢を他流派から幅広く学び取り、活用することができると思います。

一方、他流派の方にとっては、「選択理論の内的コントロールの考え方①~④」を組み込むことで、本人の主体性と自己決定を促したり、自立と自律の意識づけや、「他人事」でなく「自分事」としての意識付け、「今の状況も自分が選んでおり、未来に向かって今よりもよい状況を選び直すことができる」という意識付けなどが、より効果的に行えることになると思われます。

以上、認知行動療法を大胆に「セルフケアの道具箱」という1冊の本で代表させて、自分が考えている「選択理論」と比較検討を試みた、大雑把な記事ですが、皆さんのご参考になれば幸いです。

今後も、上のような、「選択理論を何でもありで学ぶメルマガ」を、月2回程度発行していきたいと思います。よかったら、ご購読をこちらからお願いいたします(下の画像をクリックしていただいても結構です)。↓









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