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全国水族館の旅【50】世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふ

水族館の規模の大きさで言えば沖縄の美ら海水族館、大阪の海遊館、愛知の名古屋港水族館がよく横綱クラスにあげられます。ただし、淡水生物の専門展示ならば、他の追随を許さないほどの超メガスケールのハイパー水族館が岐阜県にあります
世界最強レベルの淡水生物水族館。その桁外れの超ハイクオリティ展示を拝むべく、筆者は岐阜の河川環境楽園を訪れました。


世界最強クラスの淡水専門水族館、こにあり!

改めて申します。アクア・トトぎふは、淡水生物の専門水族館としては日本最大級どころか全世界トップクラスの規模を誇っています!
多くの水族館好き・淡水生物マニアの心を強くとらえて離さない魅力的な飼育展示施設であり、筆者もアクア・トトぎふには強い憧れを持っています。岐阜市内からレンタカーを借り、国道21号線を走って、ワクワクしながら河川環境楽園(岐阜・愛知・三重の3県にまたがる環境教育と憩いの公園)を訪れました。

岐阜市の市街地からレンタカーで走り、河川環境楽園に到着。この広大な敷地の中にアクア・トトぎふが立っています。
河川環境楽園は自然学習の場であると共に、人々の憩いのスポットでもあります。飲食店がたくさんあるうえに、フェスティバルなどのイベントの会場にもなります。

河川環境楽園で筆者が絶対見たいと思ったのは、トゲウオ科の魚ハリヨの保護水域です。ハリヨは超希少な淡水魚であり、手厚い保護が必要とされている絶滅危惧種です
野外で希少生物の姿を拝めるのは、またとないチャンス。ハリヨたちの美しい姿を観察すると共に、彼らの保全のために何が必要なのかを考えていただきたいと思います。

園内には、希少淡水魚ハリヨの保護水域があります。ハリヨは極めて深刻な危機に瀕しており、岐阜県西美濃地方と滋賀県東部にしか生息していません
ハリヨが棲む水域。希少淡水魚の保護エリアなので、当然ながら生物採集をしてはいけません
いました、希少淡水魚のハリヨです! 求愛のダンスを行うことで有名な魚です。

ハリヨをたっぷりと観察したら、水族館の建屋とは反対方向に進み、国営公園エリアに行ってみましょう。国営の木曽三川公園には、木曽川水系について学習できる「自然発見館」が立っています。
木曽川水系に暮らす生き物たちの生体や資料を展示し、一般向けのフィールドワークも実施しておられる本館は、まさに地域の環境教育の要。アクア・トトぎふに入る前に、木曽川水系の生命について自然発見館で予習しておきましょう。

国営エリアの木曽三川公園へ。本園では、多くの地元民の方々が憩いの時間を楽しんでいます。
木曽三川公園に位置する自然発見館。地域の環境教育に貢献しておられる素敵な施設です。
自然発見館の水族展示。木曽川水系の生き物たちが大集合しています。
カネヒラ。濃尾平野より西の地域に生息するタナゴ類です。
名の通り、長いハサミを有するテナガエビ。オスのハサミはメスよりも長くなります。

それでは、満を持してアクア・トトぎふへ向かいます。「世界最大級の淡水生物水族館」という称号は唯一無二であり、トップの座はいまだに奪われていません。世界規模の淡水生態系の学習と、ダイナミックな淡水生物たちの展示にたくさんの人々が虜になっています。
日本と世界。地球上のあらゆる河川・湖沼生態系の真理を学びに、最強の淡水生物水族館へ繰り出しましょう!

アクア・トトぎふに通じる「オアシスパーク」の道。水と緑に調和した憩いの場であり、家族でのお出かけにオススメのスポットです。
水路の中にチョウザメ類を発見。アクア・トトぎふへの期待がますます高まります。
アクア・トトぎふ。世界最強クラスの淡水生物水族館、楽しみすぎます!

学術性もスケールもMAXの淡水生物展示

長良川クルーズで河川環境を体系学習

では、世界屈指の淡水生物水族館の観覧開始。本館が最強と謳われる所以の1つは、大規模な河川環境を模した展示エリアです。
岐阜県が誇る清流・長良川をイメージした展示空間は超圧巻! スタート地点となる4階では、長良川の清廉な渓流に棲む生き物たちと出会えます。筆者の推しである可愛いサンショウウオたちを、ぜひじっくり観察してみてください。

エレベーターで4階に上がり、いざ観覧スタート。広大な野外淡水環境をイメージさせてくれる展示空間が、目の前に現れます。
頭を出したクロサンショウウオ。雪解けの時期になると、池や沼に産卵します。
マホロバサンショウウオとヒダサンショウウオの展示水槽。サンショウウオ類の多くは個体数が減少しており、生体や生息地の保全が必要なのです。
ヤマトイワナ。生息地の減少や、別亜種との交雑により個体数が減少しています。

本館の観覧スタイルは、上階から下層へ進みながら、たくさんの生き物たちと出会っていく様式となっています。その過程は、上流域から下流域へと長良川を下っていくかのようです。それぞれの流域にどのような環境があって、どのような生き物がいるのか、臨場感満点の展示で学ぶことができます。

長良川の流域探検はさらに続きます。一口に流域と言っても瀬や淵、滝壺など様々な環境が存在しており、それぞれの場所に応じて生き物たちが飼育展示されています。
ニホンイシガメ。日本の固有種であり、浮世絵に登場するほど古くから人々に親しまれてきました。
アジメドジョウ。古くから漁の対象となっており、とてもおいしいドジョウとして重宝されてきました。
滝壺の中をイメージした水槽。おいしそうなアマゴやサツキマスが展示されています。
世界最大の両生類オオサンショウウオ。近年、日本固有種と外来種のチュウゴクオオサンショウウオとの交雑が問題となっています。

長良川の旅はさらに続きます。流域環境にはポピュラーな淡水魚だけでなく、ユニークな生き物がたくさん棲んでいます。水域を取り巻く世界に生きるたくましい生命について、本館の生体展示で詳しく学習していきましょう。

ニホンカナヘビ。水田近くの土手でよく見かける爬虫類です。
可愛さとかっこよさを併せ持つガムシ。水生昆虫としては珍しく、水生植物や藻類を主食としています。
岐阜県に生息地する水生昆虫の封入標本。飛行能力を有する種類もいますが、多くの真水生種は一生の大半を水中で過ごします。
愛らしさ抜群のコツメカワウソ。彼らは日本の淡水生物ではありませんが、かつて日本には固有種のニホンカワウソが生息していました。
中流域のゆるい流れの水域をイメージした大型水槽。じっとしている印象の強いナマズやニホンウナギが、本館では元気に泳ぎ回っています。

本館では、生体展示を通して、環境保全問題の現状について深く学べます。岐阜県のみならず、国内全体で多くの淡水魚が数を減らしています。その主な原因は、我々人類の社会活動にあります。
どんどん便利になっていく反面、人々と水域との関わりが減っている現代。今だからこそ私たちはもっと自然に眼を向けるべきだと、本館の展示は強く訴えています。

岐阜県の希少淡水魚たちの展示。東海地方の淡水生態系の現状を詳しく学べます。
希少なタナゴ類シロヒレタビラ。かつては濃尾平野の広範囲に生息していましたが、水路のコンクリート化や水質悪化により個体数が激減しています。
小卵型のカジカ。本種は回遊する性質を有しており、川に人工的な構造物が設置されると、移動することができず、個体数の減少につながります。
超絶希少な淡水魚ハリヨ。岐阜県では、大規模な保護活動が進められています。
デメモロコ。濃尾平野と琵琶湖に分布していて、それぞれの地域で体の大きさや模様に違いが見られます。

大河はやがて下流に到達し、海へと流れていきます。長大な長良川は上流域から数多くの恵みを集め、生命の源を次の環境へ伝えているのです。大自然のつながりを感じながら、汽水域で暮らす生き物たちの姿を観察してみてください。

川の近くの土手や草地に棲むベンケイガニ類。産卵時には水中に入り、大量の卵を一気に解き放ちます。
河口の汽水域をイメージした水槽。春期や夏期には、イシガレイの幼魚が展示されます。
水際での陸上活動が可能なトビハゼ。エラに水を溜めて陸上でもエラ呼吸できるうえに、皮膚呼吸する能力も獲得しています。
河口の汽水魚では、多くの海の魚がやってきます。スズキやクロダイなどのおいしそうな魚がいっぱいで、思わず涎が出てきます(笑)。
長良川クルーズ、とっても魅力的でたくさんの学びがありました。今度はぜひ、河川に赴いてフィールド探索をしたいと思います。

壮麗な長良川の大自然を感じたら、東海地方を飛び出して、日本各地の淡水環境を見に行ってみましょう。次なる展示コーナーでは、釧路湿原と吉井川の生き物たちに出会えます。
北海道に広がる日本最大の湿原・釧路湿原。希少生物の生息地として重要な岡山県の吉井川。魅惑の生体展示と濃密な解説キャプションから、我が国の淡水域の素晴らしさを知っていただきたいと思います。

釧路湿原、岡山県の吉井川の淡水生物たち。日本各地には、魅力的な淡水環境が無数にあるのです。
北海道に生息する大型淡水魚イトウ。特大の個体では、全長2 m以上にも成長します。
日本の固有種ニホンザリガニ。成長速度が遅く、成熟するまで約5年を要します。
オオシマドジョウ。シマドジョウの仲間では、かなり大型の部類です。

世界各地の淡水から超スターたちが大集合!

淡水生物ファンの皆様、お待たせしました。いよいよ世界中の大スターたちとの出会いが始まります!
厳かなで清廉な日本の淡水環境に対し、コンゴやアマゾンの大河は力強く果てしない超広大な水域といった印象があります。流域の広さも、生き物の大きさも桁違いの超ビッグスケールの世界。最強の淡水生物水族館の真髄を、篤とご覧あれ!

いざ、世界の淡水生態系をめぐる冒険へ! 未知の大水域の学習に、子供も大人もワクワクしてきます。

淡水の巨大魚は、生き物好きにとって究極のロマン。その中でも、ナマズ類は群を抜いて大型化することで知られています。そう、インドシナ半島を流れるメコン川に棲む巨大淡水魚メコンオオナマズです!
約1300種類もの魚たちがひしめくメコン川。メコンオオナマズの雄大な姿を観察していると、世界的な超大河の規模を感じ取れます。

巨大なメコンオオナマズ。本館の個体は2 mほどもあり、悠々と泳ぐ様は圧巻です。
メコンオオナマズを間近で観察。本当に、でかすぎる!
メコン川に棲む淡水エイ類であるプラークラベーン。成体になると、メコンオオナマズに負けない巨体となります。

メコン川の源流はチベット高原に始まり、約4200 kmもの超々距離を流れて海に到達します。その過程で様々な国を通り、それぞれの地域で膨大な数の生命を育んでいます。生命のつながりに国境はなく、地球は1つの故郷なのだと強く実感できます。
本館のメコン川の生体展示は、多くの国の広範な地域をフォローしています。優美で力強い生き物たちを拝みながら、メコン川の軌跡を感じてください。

中国の山間部に棲むオオアタマガメ。メコン川は中国の雲南省にも流れています。
中国に生息するアユモドキの一種シニボティア・ロブスタ。アジアの温帯域から熱帯域にかけて、60種類以上のアユモドキ類が生息しています。
ダニオトイデス。メコン川の中流域から下流域にかけて生息しています。
オスフロネムス類の体型は独特で魅力的。水面近くに巣を作って、産卵する習性があります。
パオ・バイレイ。淡水に棲むフグ類であり、体表は「皮弁」という毛状の突起物で覆われています。

次なる世界のリバークルーズはコンゴ川です。河川の全長は約4667 kmにも及び、アフリカのジャングルを果てしなく流れています。
熱帯雨林に恵みを与え続ける超大河川。不思議なアフリカの淡水生物たちが待っています。

クルーズ船を模した内装で雰囲気は満点。アフリカの淡水世界の探究へ繰り出しましょう。
立ち並ぶたくさんの大型水槽。アフリカならではの不思議な魚たちが大集合しています。
ゴライアスタイガーフィッシュ。鋭い牙と強力な顎を備える肉食魚です。
シノドンティス・プレウロプス。目が大きくて可愛いですね!
デンキナマズ。発電器官を有しており、500 Vの電気を30秒以上も放つことができます。

コンゴ川と並び、アフリカの著名な巨大淡水環境の1つがタンガニーカ湖です。面積およそ32000k㎡(岐阜県の約3倍の広さ)、最大水深1471 mという桁外れの超ビッグレイクであり、300種類以上の淡水魚の生息水域となっています。
多種多様なシグリッドをはじめ、神秘の湖には魅力的な淡水生物がいっぱい! 生体展示はもちろん、キャプションを通して、特殊な魚たちの生態を理解しましょう。

タンガニーカ湖の淡水生物の飼育水槽。たくさんのシグリッドが縦横無尽に舞っています。
タンガニーカ湖のシグリッドたちの紹介パネル。キャプションに記してあるように、彼らは哺乳類顔負けの熱心な子育てを行います。
本館の研究によって判明したシグリッドの秘密。なんと、ペリソダス・ミクロレピスは捕食スタイルに右利き・左利きがあるのです!

そして、世界の淡水環境の横綱クラスとして名を馳せているのが、南アメリカの超大河川・アマゾン川です。大陸を横切り、大西洋に注ぐ流域の長さは約6516 km、流域面積は約7050000 k㎡。文句なしに、アマゾン川は世界最大の河川です。1つ1つの支流ですら、日本のどんな河川より規模が大きいのです。
水域も陸域も、世界トップクラスの圧倒的な生物多様性を誇るアマゾン。謎と神秘に満ちた大自然の世界、本展示を通してイメージしてみてください。

究極の大河川・アマゾン川へ! ナマズ類もパクー類も、とっても大きい子ばかりです。
ポルカドットスティングレー。斑点が特徴的な淡水エイ類です。
淡水カメの一種マタマタ。石に化け、水底で待ち伏せるハンターです。
アマゾンツノガエル。落ち葉や木くずの下に隠れ、目の前を通った獲物を勢いよく捕食します。
鳥類の飼育展示もあります。ルリコンゴウインコにはジャングルの背景がよく似合います。

アマゾンの巨大魚として超有名なのが、世界最大級の淡水魚ピラルクーです。本館の展示においても、その存在感は驚異的! すさまじい大きさと威厳で、来館者を圧倒します。
大きさも種類も非常に多様な生き物を育むアマゾンは、生物マニアにとって永遠の憧れの環境です。

ダイナミックなピラルクーの姿。世界最大級の淡水魚の迫力は圧倒的です!
ピラルクーの模型。成体の全長は、3 mを大きく超えることがあります。
知名度ではピラルクーと並ぶピラニアナッテリー。危険な肉食魚と言われていますが、アマゾンでは人間によく漁獲されて食べられています。
デンキウナギ。種類によっては860 Vもの電気を発生させることが可能であり、生き物が放つ電気としては最強の出力を誇ります。

壮大な世界の淡水ワールドクルーズを終えたら、屋外展示で生体を観察しに行きましょう。開放的な空の下で生き物の美しく姿を拝めるだけでなく、魚たちへの餌やりも体験できます。五感と心で水の生命を感じる瞬間は、大人にとっても子供にとっても貴重な思い出となるはずです。

屋外に並ぶ円柱型のオープン水槽。様々な種類の淡水魚を至近距離で観察できます。
上方から見たオープン水槽。水底に映る魚たちの影がとっても趣深いです。
ウグイやコイなどの淡水魚が飼育されている大型水槽。ここでは、魚たちへの餌やり体験ができます。
餌を与えると、魚たちが一気に集まってきます。体験展示を通し、水の生き物たちの活動を感じられることが本館の大きな魅力です。

本館では、愛らしい陸棲動物たちも飼育展示されています。アルダブラゾウガメの餌やりは人気であり、多くの子供たちが喜びながら参加していました。もちろん、大人の方々も積極的にチャレンジし、生き物たちの食事行動をじっくり観察してみてください。

アルダブラゾウガメ。餌やり体験にチャレンジして、摂食の様子を間近で観察しましょう。
人気者のカピバラ。南アメリカに生息する大型の囓歯類です。

アクア・トトぎふ。世界最大級の淡水生物水族館の展示クオリティを体感して、脳も心も激しく感動しました。淡水生物の生態と、淡水環境の尊さを超濃密に学べました。

地球の水の約0.01%と言われる河川や湖の淡水(極地の氷などを含めると淡水は地球の水の約2.5%)。その0.01%の流れの中に、とてつもなく多様で魅力的な生命が力強く息づいています。淡水環境の学習を通して、生き物たちのたくましさを改めて理解しました。

世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふ 総合レビュー

所在地:岐阜県各務原市川島笠田町1453

強み:木曽川水系を中心とした東海地方の淡水生物の網羅的な生体展示、多様性と迫力に満ちあふれた世界各地の個性的な淡水生物、河川環境を模したスケール感満点の開放的な展示空間

アクセス面:河川環境楽園内に大きな駐車場があるので、レンタカーや自家用車での来館がオススメです。岐阜市や名古屋市からスタートするなら、休憩含めて1時間ほどのドライブで到着できると思います。なお、東海北陸自動車道の川島パーキングエリアから河川環境楽園へ直接入園することができます。名鉄笠原駅から河川環境楽園行きの路線バスが出ていますが、バス利用の場合は事前に帰りの便をしっかりとチェックしておきましょう。超すごい水族館なので、予定よりも長い観覧時間になる可能性は大いにあります。

岐阜県が誇る「世界最大級の淡水生物水族館」であり、生き物大好きな子供たちから筋金入りの生物マニアまで誰もが超満足できる大規模展示施設です。長良川をはじめとする東海地方の淡水環境の学習から始まり、世界中の名だたる巨大淡水域の生き物と出会う旅へ繰り出す構成となっています。展示スケールの大きさも相まって、冒険的な心持ちでワクワクしながら観覧学習ができます。
国内外の希少な淡水生物との出会いにマニアは大満足。メコンオオナマズやピラルクーといった迫力満点の大型魚類の生体展示には、子供たちのテンションも最高潮に高まるでしょう。強烈な個性を有する多種多様な淡水生物たちに、誰もが惚れること間違いなしです。

壮大な世界の河川環境・湖沼環境へと来館者を誘う最強の淡水生物水族館。この大興奮を多くの生き物好きの方々に体験していただきたいので、筆者は全世界の人々に本館を強く推します!

海外の熱帯域を感じさせる内装も、本館の魅力の1つです。世界の淡水ワールドに心が引き込まれてしまいますね。


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