【おもしろいの正体:17】おもしろさに「刺激」は必要か。
最近、
コンテンツの方向性は
ふたつに分かれている。
アニメを見ているとわかるのですが、
最近作り方が、刺激的なものと
わざと刺激を作らないものに
分かれる傾向があります。
ガンガン闘う呪術廻戦みたいなものと、
なーんにも起きない、ほのぼの日常もの。
そしてそのどっちにも需要がある。
それぞれの良さがあるんですね。
意外に刺激のないものの方が
見続けられる。途中で挫折しない。
疲れたくないという今の気分にも合っている。
この感じ、昔はなかった気がします。
ワクワクする、とか、ドキドキする、とか
そんな感覚さえ余計なものに感じてる。
どんだけ疲れてんじゃ、って感じです。
一方で残酷なものとかグロいものも多い。
極端。なんか屈折してます。
作り手も大変ですね。
刺激的なものは
リスクが大きい。
刺激を求めない人が多い中で
おもしろい、を作るのは難しいです。
癒されるものを作るのはわかりますが、
勘違いすると
なんでもないものを作ってしまう。
しかも作るとき考えるのが楽なので、
考えなしになんとなく作ってしまう。
手抜きとウケるものの違いに気づかない。
刺激的なものはリスクが大きいです。
危険な橋を渡るくらいなら
なんとなく受け入れられるものを作る。
それが当たり前になってる。
しょうがない部分も多いですが。
CMは、時代の気分を
真っ先に反映してしまうメディアなので、
それが顕著に現れています。
刺激的なものは
冒険するリスクが大きすぎる。
すぐ怒られるからね。
昔だって怖いのは同じだったけど、
なんかうまく誤魔化してた。
皮肉なギャグとか、意味深なカットとか
そういうものを埋め込むやり方をしてた。
そんなやり方が難しい時代になっています。
「すこし愛して
なが〜く愛して」
の凄さ。
昔、お酒(サントリーレッド)のCMで
大原麗子さんが出てたやつ、
覚えてる方は結構年配だと思いますが。
シリーズで何作かあるのですが、
例えばこういうモノローグ。
記憶だけで書けた自分に驚いてます。
最後に電話の音がするのがいいですよね。
このシリーズって当時はただ
いい感じだな。と思ってましたが、
今の時代だと、オンエアは
むずかしいかもしれませんね。
男目線で、女性を家で待ってる人、
と描いてるので。
そういえば当時から、
この女性は奥さんじゃないよなあ。
だけど恋人でもない。って
薄々は気づいてました。
そうして見ると、このコピー、
全く違うものに見えてきます。
ああ、そういう意味か、って。
すごいですよね。深すぎます。
もちろん、このお酒が、
そういうふうに付き合ってほしいお酒だ。
ってことです。
すごく商品コピーでもあるわけです。
すこし、と、ながく、
はひらかなじゃないとダメです。
これ、漢字にすると「少しと長く」が
ただの「量とか時間」になってしまう。
ひらかなだから愛の単位になるのです。
刺激って
尖っていれば
いいものではない。
本当に丁寧に考えれば、
トゲトゲしてなくても刺激は作れます。
刺激って言っても
触ってチクっとするものもあれば、
辛さが後から来るものもある。
直接的な刺激はそのとき強くても、
ひとくち水を飲めば消えてしまう。
それよりはずっとあとを引くものの方が
結果的には効率がよかったりします。
その分、作るのは難しいですが。
次回は刺激の王様「ギャグ」について。
【おもしろいの正体:18】ギャグCMは死んだのか。
気が向いたら、また遊びに来てください。