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『光る君へ』とのシンクロ率約85%【読書感想文】永井路子『この世をば』(上)

キンドルアンリミ。

『光る君へ』を観ていて気になって読んでみた。

道長といえば、月を見ながら「この世はわしのものじゃ!」といきがっていたが、讒言によって太宰府に流され、非業の死を遂げて怨霊になった人、と学校で習ったが、それは道真が混ざっているということをドラマを見ながら気づいた、という程度の知識しかなかったが、ドラマのおかげもあって楽しんで読めた。

当時の文化や習俗が物語の中で分かりやすく説明され、ちょこちょこ差し挟まれる家系図で背景が補完される親切設計。

歴史小説でありながら、良質なサラリーマン小説、家族小説、夫婦小説でもある。

90点。

ついでながら、『光る君へ』は私にとって、ドラマというメディアを見直すきっかけになった作品だ。

大河ドラマといえば、派手な合戦シーンや熾烈な勢力争いのイメージがあるが、このドラマでは男女の情感の交流や機微が繊細に描かれ、見応えがあった。

さらにこの小説を読むことで、ドラマで得た知識やイメージが読書体験をより豊かなものにしてくれることも再認識した。

本書を読むと、まるで原作であるかのように、俳優たちの姿が生き生きと脳裏に蘇り、没入感を深めてくれる。

今回はその配役ベスト3 をあげてみた。

【ピッタリde賞】
第3位 藤原実資(秋山竜次)
清少納言のファーストサマーウイカさんも捨てがたいが、小説での出番が少なかったので、秋山さんをあげた。

一癖ありそうで、文句も多そうだけど、一目置かれてもいて、そう悪い人でもなさそうな感じがぴったり。

小説では道長に敵意を持っていると書かれているが、ドラマでは中立を保とうとする堅物という印象があった。

コミック・リリーフとしてもさすがの貫禄だ。

第2位 藤原詮子(吉田羊)
道長のよき姉、一条天皇の厳しくも愛情深い母親として、そして宮廷で暗躍する政治家として、女らしく、したたかにも振る舞う姿は羊さんにぴったり。

彼女が登場すると、ドラマでも小説でもピリリと引き締まる。

第1位 藤原道長(柄本佑)
前述の通り私にとっての「道長真像」は、月を見ながら、おねえちゃんの腰に手を回しながら、「だーっはっはっは!」と笑いながら、寿司を2個づついっぺんにビールで流し込む政治家のようなイメージだったので、当初この配役は意外だった。

『光る君へ』を観はじめたのは、家人が「佑くん」のファンだからだが、いらいろ観て(観させられて)いるうちに、私も好きになった。

小説にも描かれてあるように、人が良くて、要領が悪く、「何たること、何たること」が口癖の、どこか憎めない道長を、見事に演じている。

番外編【ピッタリde ないで賞】
源明子(瀧内公美)
小説で最初に登場した時、ドラマではそれらしい人を見かけないから、割愛された人物なのかと思った。

幼く、はかなげで、まだ新婚の道長を惑わす妖精かネコのようなたたずまい。

しばらくして、瀧内さん演じる明子と気づいて驚いた。全然違う…… 

瀧内さんを初めて知ったのは、佑くんと共演したR18+指定映画『火口のふたり』。劇場で観たが、なかなかハードな濡れ場のある作品だ。この映画のヒロインが明子役と同じ人だということも、家人に言われるまで気がつかなかった。

瀧内さんは妖精というより、妖艶とか嫣然という感じがする。

そういうわけで、私の脳内の『この世をば』(上)には、最後まで瀧内さんは登場しなかった。

兄の藤原俊賢役の本田大輔さんはピッタリだったんだけど。

この小説の明子には誰が似合うだろう?

裕木奈江だろうか。いや、斉藤由貴か?

いつの時代だ。

もちろん平安時代である。





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