#130 ICE999、 ついにやってきた!
昨年10月に、『#75 乗れなかった、銀河鉄道999』という記事を書きました。思ったより読んでもらえず、『銀河鉄道999』は古すぎたかな?と思いました。でもその記事で、「次は 999 に乗ってみせるぞ!」的なことを書いたので、やはり締めくくりを書いておきたいと思います。
ICE999 にまつわるストーリー
ドイツ国鉄の新幹線は、ICE(= Inter City Express:発音はイーツェーエー)といい、白いボディに赤のストライプがあるなかなかかっこいい車体だ。そして、フランクフルトから友人の住むシュトゥットガルトへ走っているのが、ICE999。
途中、自宅の近くのダルムシュタット中央駅にも停車するので、意気揚々と 999 に乗りに行ったのが、昨年10月だった。日本のアニメ『銀河鉄道 999』の熱烈なファンだったということはないのだが、やはりあのアニメの世界観にはひかれるものがあり、999 という列車番号がついた ICE にどうしても乗りたかった。
クルーズ船での出会い
昨年8月にフィンランドのヘルシンキで行われた AI 関係の研究シンポジウムに参加して、素敵な友人と出会った。彼女は中国出身で、僕より25歳若い25歳。母親が僕の1歳下、父親が2歳上なので、ちょうど親世代、僕にとっては娘年齢の友人になる。僕の住んでいるダルムシュタットから南に1時間半ほど行ったところの街、シュトゥットガルトに住んでいる。
彼女と初めて話したのは、シンポジウムの参加者が招かれたフィンランド湾のクルーズ船上でのパーティーという、これもまた素敵な出会い方だった。彼女は人気者で、各国の男性が彼女と話そうと一生懸命だった(中でもウイーン出身のある男性のアプローチはあからさまだった💦)「10月頃になったらまた会おう」と約束して別れ、約束通り10月下旬、ICE999 のチケットを取ってダルムシュタット中央駅で列車を待った。
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どうしても乗れない ICE999
当日の10月21日、ICE999 はいきなりキャンセルになった。ドイツでは、新幹線が遅れるのではなくキャンセルになる(つまり、来ない)のは特に珍しくない。仕方なく各駅停車で途中駅まで行き、そこから別の ICE の切符を取り直してどうにかシュトゥットガルトへたどり着き、再会を果たした。彼女はヘルシンキでは普通の服を着ていたが、普段は出身地方の民族衣装で通しているとのことで、並んで歩くのに緊張したのを覚えている。
当時、僕は精神的にかなり調子が悪く、彼女は「あなたの話は、全部聞く」とひたすら僕の話に耳を傾けてくれた。「どうしてそんなに優しくしてくれるの?」と聞いても、「あなたの友達だから」としか答えなかった。
さて次だ。一ヶ月半後の12月2日、「そろそろ調子良くなった?」ということで、シュトゥットガルトにある評判のうなぎ屋さんに行こうということになった。次こそはと再度 ICE999 の切符を取り、ホームで待った。しかしその日のドイツ南部は記録に残るほどの大雪!
ICE999 はまたしてもキャンセルされ、代替列車となった別の ICE もさらにキャンセル、結局フランクフルトまで一度出て、そこから別の ICE に乗り、やっと辿り着いた。その日はお互いの話を半分ずつして、うな重にヒラメの薄造り、豚の角煮にだし巻き卵と日本食を堪能した。
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乗る人に準備ができたら、やってきた ICE999
12月から4ヶ月が経ち、先々週の4月13日。なんと ICE999 はダイヤ改正でダルムシュタットには止まらなくなった。同時に僕も新しい研究プロジェクトへの所属が決まり、10月や12月の頃と比べると、生活が格段に整ってきた。「次は乗れるかも」と思って、フランクフルト中央駅で ICE999 を待った。
三度目の正直で ICE999 はホームに現れ、3分遅れて出発したものの、なんと1分の遅れもなくシュトゥットガルト中央駅に到着した。「すべてが整いました」ということだと思った。その日は念願のシュトゥットガルト市立図書館へ行った。蔵書より建築が有名な建物で、多くの人がこの壮大な吹き抜けに見入っていた。
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カウンセラーの先生の考え
このことをいつもお世話になっているカウンセラーの先生に書いて送った(「書くカウンセリング」を受けている)。
すると、先生は「私は少し違う解釈をしていますよ」と次のように書いてくれた。先生のメッセージをそのまま紹介してしまおう!(実は了解済みです^^)
そう考えれば、10月と12月、二度も ICE999 に乗れなかったこと、4月は乗れたこと、このことが自分に多くのことを教えてくれているように思う。
何かがおかしかった友人
5月から所属することになった研究プロジェクトの関係で、次にシュトゥットガルトへ遊びに行けるのは当分先になると思われたので、今回は彼女の好きなステーキハウスに行くことにした。土曜日の夜で予約は取れなかったものの、当日並んで席を確保、出先から帰ってきた彼女と合流した。しかし何かが違う……
席につくなり、彼女は「久しぶり〜元気だった?」も言わずにメニューを眺め、オーダーし、出てくるとひたすら食べ始めた。お互い会う時には、前回から会う時までに出かけた先の絵葉書を買ってきて交換することにしていたので、僕が出かけたヴュルツブルクの絵葉書を渡すと、「ありがとう」も言わずに、黙ってカバンにしまっておしまい。10月も12月も、夜は彼女の自宅近くのバーで遅くまで飲みながら話したが、今回は「じゃあ」と翌日の約束もせずに帰ってしまった。
今度は僕が、ベストリスナー
ホテルの部屋で、これはいけないと思って彼女にメッセージを送った。僕の調子が悪かった10月、彼女は貴重な時間を使って「あなたの話は全部聞く」と僕の話に耳を傾けてくれた。次は僕の番だ。
翌朝、彼女は約束の時間に30分遅れてカフェに現れ、座るとすぐに、
と前置きして、それから約5時間、彼女がここ数ヶ月抱えているという問題について、話してくれた。内容についてはここでは書けないが、中国が社会的、文化的、政治的に抱えている問題点と関連が深かった。日本にもいろいろ問題点があるが、中国には報道されず多くの日本人が知らない世界があるようだ。
普段人と話す時には使わないような強い言葉も使って、彼女は精一杯思いを語ってくれた。実は、どうしても行きたかった博物館が二つあり、一緒に行く約束をしていた。でもそんなことはどうでもよくて、ただ彼女の話を聞こうと思った。ちょうど10月に、彼女が僕の話を聞いてくれたように。彼女には、
と聞かれた。ちょっと意地悪して、質問に質問で答える。
少し和らいできた彼女の表情を見て、少し分かってくれたのかな、と思う。
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人生は回る
彼女の問題点は解決していない。解決には時間がかかるだろう。僕は5月から心機一転新しい研究プロジェクトに所属するが、こちらも前途多難だろう。でも、お互いにベストリスナーでありたいと思う相手がいて、今回そのことを確認することができた。カウンセラーの先生の言うように、「決められたルートと違う方法でも、目的地にはちゃんとたどりつけるよ!」と思って、力強く歩いていきたい。あの日 ICE999 に乗れなくても、ちゃんと友人には会えたことを思い出して。
実はその友人は、先日始めたプロジェクト「しあわせ探求庁」にとても興味を持ってくれ、時期は未定なもののゲストとして登場予定だ!乞うご期待^^
今日もお読みくださって、ありがとうございました☕️🍩🕯️
(2024年4月22日)
サポートってどういうものなのだろう?もしいただけたら、金額の多少に関わらず、うーんと使い道を考えて、そのお金をどう使ったかを note 記事にします☕️