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#77 仕事につまった時の万能薬 〜伊雑宮のご利益〜

みなさんは仕事につまってどうしようもない時にはどうするだろうか?今日はそんな時に効く万能薬を紹介したい。僕が勝手に考えたのではなく、神宮内宮別宮の伊雑宮でいただいたご利益なので、間違いない(写真は早朝の内宮宇治橋)。



仕事につまった同僚

ドイツに来る前に勤めていた会社では、長らく僕と同僚の女性の二人で貿易関連の事務をこなしていた。年間売り上げが80億円ほどあった会社で、その売り上げの8割を依存する海外輸出の事務をやっているのは我々二人だった。当然、業務量は相当なものになる。その同僚はいつもたまりにたまったメールを処理しきれずにいた。ある日別の人がぼそっと言った。

彼女の受信ボックス、未読メールが1,000通超えてるらしいです。今メールしても読まれるのはずっと先ですよ……

この状態の社員一人が従業員100人近くの会社の、売り上げの8割の半分(=32億円)を支えていると思うと、非常に心許ない。一方、僕の受信ボックスは常に0通を維持していた。来たメールはすぐに見て(読んで、ではない)、処理方法別に振り分けるので、見てもいないメールというのはほぼなかった。


毎年恒例の伊勢まいり

夫婦で毎年伊勢参りをするのが習慣だ。それも、外宮と内宮の御正宮にお詣りして終わりではなく、外宮御正宮に続いて域内別宮の多賀宮たかのみや土宮つちのみや風宮かぜのみや、域外別宮の月夜見宮つきよみのみやにお詣りする。次に内宮に移動して、御正宮に続いて域内別宮の荒祭宮あらまつりのみや風日祈宮かざひのみのみや、域外別宮の月讀宮つきよみのみや倭姫宮やまとひめのみやとお詣りする。ここまでは伊勢市中心部にあるので全部徒歩で回っても一日あれば十分だ。

しかし内宮にはあと二つ、遠くにある別宮がある。「遙宮とおのみや」として知られる伊雑宮いざわのみや瀧原宮たきはらのみやだ。われわれはかつてはレンタカーを借りて、その後キャンピングカーで伊勢へ行くようになってからはキャンピングカーで、この二つの別宮にもお詣りした。内宮から伊雑宮へ抜ける道(伊勢道路)は細くうねうねした山道なので、普段車を運転しない人がレンタカーを借りていくと、かなりヒヤヒヤする道だと思う。一方、瀧原宮への道はほぼ高速道路なので快適だ。

外宮・内宮の御正宮に別宮十宮を全てお詣りして、無事我々夫婦の伊勢参りは完了となる。ちなみに、僕のダントツのお気に入りは内宮別宮月讀宮(横に四つお宮が並んでいる)の右から二番目の「月讀尊つきよみのみこと」のお宮だ。月の神様が自分の守り神だと勝手に思っているので、ドイツでも月讀宮のお守りを大切に持っている。

ちなみに、内宮御正宮の神様は天照大御神あまてらすおおみかみ、太陽の神様だ。月の神様である弟神の月讀尊とはお宮が少し離れている。本来太陽と月はペアなのに〜と思うが、実は探せば日本各地に「日月神社」(じつげつ・にちげつ)という、この二柱の神様を一緒に祀っている神社がある。

埼玉県にある日月神社(この神社は「じつげつ」)

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伊雑宮のご利益

そんな伊勢のお宮の中で、比較的地味なのが伊雑宮だ。今日の話題となる大きなご利益はここでいただいた。いよいよ紹介することにする。2018年10月27日(今日でちょうど丸5年)、その日の伊雑宮はいつもと少し違う雰囲気だった。当日の写真がある。

内宮別宮伊雑宮〜落ち葉一枚ないこの参道を見て、心の鏡が静まるのを感じた

お詣りの後にこの風景を見た時、「心の中もこういう状態に保ちたい」と直感的に感じた。そしてそれは帰京後、現実になった。


当時の Facebook 投稿

2018年11月2日付の Facebook 投稿

これは、その約一週間後の Facebook 投稿だ。記事にある通り、その会社に入社して以降5年分のメール数万通(当時はまだクラウド管理ではなかった)と、ハードディスク内部の書類(まだ SSD は高価だった)すべてが消えた。パソコンのスイッチを入れると同時にハードディスクが異音を立ててクラッシュするという、派手な壊れ方だった。先に話題に出た同僚と僕の仕事を半々とするならば、32億円につながる受注メールや売上分析などの資料が全て吹っ飛んだことになる。IT部門の人が懸命に救出作業をしたが無駄だった。

That’s not the end of the world

どんな実害があったか?32億円が失われて会社が倒産することはなく、実は売上が減ることもなく、ほとんど実害はなかった。「メールが全部消えたので、プロフォルマ(=受注確認書)が届いていない発注は再送してください。その他急ぎの未済事案も再度メールをください」と海外全代理店宛に一斉メールを出すと、数日で必要な情報は手元に集まった。
 「重要度は低いが手間がかかる」どうでもいい仕事が一掃されて風通しがよくなり、仕事の能率が劇的に上がった。おそらく相当の仕事をあの時取りこぼしたと思うが、長い目で見て「取りこぼす方が組織のためによかった」内容が消えてくれたのだろう。“That’s not the end of the world” とは、何かよくないことが起きた時に、「大丈夫だ、これで世界が終わるわけじゃない」という意味で使う英語のことわざ的フレーズだ。この時は本当にそう感じた。

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仕事につまった時の万能薬

若い人たちに少しだけアドバイスを。仕事にどうしようもなくつまってしまって、「これでは心が折れてしまう」となった時は、意を決して、メールや仕事の書類をすべて消去しよう。「必要なものは残して……」はよくない。ほとんどの場合、それで会社をクビにはならないし、大切な情報だけが後から戻ってきて、仕事がしやすくなる可能性の方が高い。もしメールや書類を間違って消したくらいでクビになる会社や役所であれば、そんな職場にいる価値はない。

もう一度繰り返しておこう。精神を病むほど仕事に行き詰まって、すぐには仕事を辞められない環境にいるなら、まずはメールを全消去しよう。ほとんどの場合、問題は起きない。仕事のメールよりも、あなたの方が何万倍も大切だ。この知恵が、2018年の今日、伊雑宮でいただいた、ありがたいご利益である。

今日もお読みくださって、ありがとうございました⛩️
(2023年10月27日)

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ささきとおる🇳🇱50歳からの海外博士挑戦
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