#134 ネロとパトラッシュを追いかけて🇧🇪
来月から日々のタスクが増えるので、「最後の週末」と自分に言い訳をして、先週の日曜日にベルギーのアントワープへ日帰り旅行に行ってきました。お目当ては、アントワープ中央駅、アントワープ王立美術館、聖母大聖堂、聖パウロ教会の四箇所でした。今日は写真で紹介すると共に、旅の後に気づいたことをまとめてみようと思います。
黄緑色のバスで出発
ヨーロッパでは、写真の Flixbus という黄緑色のバスが多くの都市を網羅して走っており、鉄道より手軽で、席が保証されるという利点もあります。値段が安い理由としては、二地点を繋ぐ路線設定ではなく、途中で数都市を経由しながらの長距離運行であることがあります。今回乗ったバスも、パリまで行く路線を途中のアントワープで降りる形で利用しました。
チケットはスマホで予約でき、乗る時も画面の QR コードを見せるだけととても便利です。ヨーロッパは列車の旅が醍醐味ですが、高速道路から眺める風景もいいものです。ヨーロッパ内の移動には Flixbus もとてもおすすめです。
駅が最初の 「お目当ての場所」?
アントワープで最初にじっくり見たかったところは「アントワープ中央駅」です。駅が目的地とは「?」と思われるかもしれませんが、この駅は「世界一美しい駅」の呼び声も高い、美しい駅なのです。
駅の中を歩いてみると、列車を利用するようには見えない観光客も大勢いて、正面の階段でポーズを取って記念撮影をしていました。階段を上がって右側へ行くとおしゃれなカフェがあり、駅舎の中でゆったりした時間を過ごすことができます。じっくり見たい場合は朝早くに行くのがおすすめです。
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「ルーベンスの部屋」 があるアントワープ王立美術館
中央駅から歩いて行ける距離に、アントワープ王立美術館(KMSKA)があります。チケットはスマホで時間指定で買うのがおすすめです。建物内には無料のロッカーもあり、荷物を預けて身軽に見学することができます。写真は「ルーベンスの部屋」で、豪華な部屋で彼の作品を堪能しました。
ルーベンスといえば、同じくアントワープ市内に、ルーベンスが実際に居住しアトリエとして使っていた「ルーベンスの家」があり、とても見応えがあります。今は臨時休館となっていますが、今年8月末に再オープン予定です。昔行きましたが、早くもう一度行ってみたいです。
王立美術館には、ルーベンスに加えて、ブリューゲルの作品も複数展示されています。最初の作品は人々の暮らしを描いた作品で、観察したいことがありました。教育学の世界では、この絵が描かれた当時、ヨーロッパに「子どもはいなかった」とされています。子どもは「小さい大人」であり、半人前の労働力として考えられていたのです。後に教育史上で「子どもの発見」と呼ばれる時期を経て、子どもは保護され教育されるべき存在として認められるようになった歴史があります。
なぜブリューゲルの絵が関係あるかというと、彼の絵に描かれた「小さい人間」は大人と同じ顔をしているのです。1992年に大学の授業で教わったことを、32年後に初めて自分の目で確認しました。とても感動しました。
ヤン・ブリューゲルの方の「バベルの塔」も展示されています。これも、言語学に関係する者としては、ちゃんと見ておきたい絵でした。人間は元々みんな同じ言語を話していたのが、天に届く塔を建てようとしたため、一人一人が別々の言語を話すようにされて世界中に散っていった、というのが、旧約聖書「創世記」第11章の記述です。
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アントワープ聖母大聖堂
残り2つの目的地は教会です。教会というと、「自分はクリスチャンではないから……」とあまり足が向かない人がいるかもしれませんが、それはとてももったいないです。ヨーロッパにおける芸術各分野、つまり絵画、彫刻、建築、音楽の歴史は、キリスト教と切り離せない関係にあります。
教会建築とそこにある絵画や彫刻、またかつては教会で演奏されていた宗教音楽の数々に触れることは、西洋文化に触れることそのものと言ってもいいのではないかと思います。日本の神社と同じく、クリスチャンであるなしを問わずに歓迎されているので、ぜひ教会に足を運んでみてください。
入場は無料のところが多いですが、0.5〜1€ の献金をするとキャンドルをもらえるので、いつも灯してくるようにしています🕯️
アントワープには多くの教会がありますが、聖母大聖堂は日本でも有名な物語、『フランダースの犬』の最後のシーンで、少年ネロと犬のパトラッシュが息を引き取った場所です。聖堂前にはネロとパトラッシュの像も新しく作られました(ヘッダ画像がそれです)。
物語の最後では、画家を志望していたネロが、どうしても見たかったルーベンスの絵画、『キリスト昇架』(キリストが十字架にかけられる場面)と『キリスト降架』(死後のキリストが十字架から降ろされる場面)を見ることができ、その場でパトラッシュと共に息絶える様子が描かれています。
物語の設定では、当時ルーベンスのこの二組の絵は、お金を払わなければ見られないことになっていましたが、実は今でもそうです! 教会なのですが入館料は 12€(約2,000円)で、物語の設定通りです!そして、ネロが見たかったのは二組の絵なのですが、この二組は聖堂正面の左右に分かれて配置されているので、息絶えたのはそのどちらかの前だったはずです。ネット上では情報が見つかりませんでしたが、僕は右側の「キリスト降架」の方ではなかったかと想像しています。普通は「キリスト昇架」→ 「キリスト降架」の順に鑑賞するからです。
ちょうど二人組が絵に見入っていて、その様子がネロとパトラッシュを彷彿とさせたので、あえて少し遠くから見た「キリスト降架」の写真を見ていただきたいと思います。個人的にこの写真をとても気に入っています。
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アントワープ聖パウロ教会
次は聖母大聖堂から徒歩8分ほどの距離にある、「聖パウロ教会」です。この教会は13年前の2011年に一度行ったことがあり、その美しさに息を呑んだ思い出があります。聖母大聖堂よりは小さい教会なのですが、とにかくその彫刻と絵画、色合いが美しいのです。さらに、「聖パウロ」は英語では St. Paul 、僕がドイツへ来る前に所属していた立教大学の英語名は St. Paul’s University なので、つまり同じ守護聖人をいただく縁のある場所だったわけです。
この教会は、ご覧の通り白と黒のコントラストが格別に美しい教会です。聖母大聖堂ほど有名ではないので人も少なく、僕はアントワープ一番の名所ではないかと思っています。入り口が大通りの反対側にあるので、いらっしゃる方は「あれ、閉まっている」と思わず、敷地の反対側へ回ってください。
少し「作品」写真も
聖パウロ教会では、カメラをモノクロに切り替えて、少し「作品」としての写真も撮りました。モノクロ写真は、カラー情報がない分、光の陰影やものの形に意識を集中させることができていいですね。今後も進んでモノクロの写真を撮りたいと思います。昔教員時代に、写真部の指導で暗室にこもって薬品の匂いの中、現像や焼き付けの作業をしたことを思い出しました。
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行きたかった所には、 行った
ドイツへ来る前から、「どこへ行きたい?」と言われた時には、「ベルギーのアントワープ」と答えていました。主には、2011年に訪ねて以来魅了されていた、聖パウロ教会を再訪するのが何よりの願いでした。そして、その願いは新プロジェクトが始まる3日前に無事叶いました。
それでも、心の中に満たされない隙間があるように感じています。それはきっと、使命感を感じている研究にこの note、そして新しく始めた「しあわせ探求庁」の活動の3つが、自分の中で大きくなっているからだと思います。「憧れの場所に行き、憧れのものを見て、食べたかったものを食べても、全ては満たされない」ことに気づきました。最後はやはり、受け身ではなく「自分(たち)で発信する」ことから、しあわせが生まれるのだと思います。
そんな想いで、明日は恐れずに新プロジェクトに入っていきたいと思います。
詳細は、明日の記事で書きますね。
今日もお読みくださって、ありがとうございました🇧🇪
(2024年4月30日)
サポートってどういうものなのだろう?もしいただけたら、金額の多少に関わらず、うーんと使い道を考えて、そのお金をどう使ったかを note 記事にします☕️