ストレスの抜き方
生きていれば、ストレスフルな日だってある。
そんな時は、GABAを摂るといいらしい。
ストレス低減に"効果がある"、とチョコレートのパッケージに書いてあった。
GABAが、何の略かは知らない。
略なのかどうかも、私にはわからない。
GABAのことは何も知らなくても、GABAによってガス抜きができたという、ひとつのお話。
🍫
10月のとある晴れた日のこと。
その日は、気持ちのよい晴天だった。小学生が画用紙いっぱいに水彩絵の具を塗りたくったような無邪気な空色が、私の頭上に広がっていた。
明るい青空の下、私は憂鬱な表情を浮かべていた。
それはまるで、どんよりとしたどす黒い雨雲のような景気の悪さだったに違いない。
そんな私が手にしていたのは、GABAの入ったチョコレート。味はビター。
「人生には苦味が必要だから、チョコレートはビターと決めてるの」
私はコンビニで買ったビター味のチョコレートを手にし、青空の下で灰色のため息をついた。
その日は朝から疲れていたけれど、仕事には行かなくてはいけない。重たいため息は、いつの間にか灰色のアスファルトと同化していた。
職場につくと、私は早速、チョコレートを口に放り込んだ。
口の中でゆるゆると溶けていくチョコレートは、私の強張った心を溶かすようだった。
少し緊張の解けた口で、上司にトラブルを報告。
そして、吐き出すように「ストレスが溜まってるっぽくて、左の下瞼が痙攣してるんですよ」と伝える。
上司は私の気持ちを受け止めてくれた。
そして、上司は、自身が抱えているトラブルについて、ぽろりとこぼす。
その日は私だけでなく、周りのみんなもストレスを抱えているようだった。そういう時って、どうしてもある。悪いことは重なる、みたいな。
私は机の上に、GABA入りのチョコレートがあることを思い出した。
「ストレス低減チョコでーす」
私は近くにいる人に、チョコレートを配った。私が手渡したチョコレートを皆「ありがとう」と受け取ると、そのチョコを口に放り込み「おいしいね。ストレスが減った気がする」と、笑顔を返してくれた。
その笑顔で、私の心も軽くなった気がした。
それぞれが愚痴をこぼし、甘いチョコレートに癒され、GABAを摂取し、少しだけガス抜きができたようだった。
私もいいガス抜きができたなぁと、柔らかなため息を吐いた。
すると、どこからか音が聞こえた。
プププ
え? なんの音?
と考える必要はなかった。
私にはその音の出所が、すぐにわかった。
私の尻の穴だ。
ストレスのみならず、私は尻からもガス抜きをすることに成功。私はさらにスッキリすることができた。
ささやかな音だったので、周りにはバレていないようだった。
匂いも皆無。何も、問題はない。
昼休みに散歩に行くと、空には神様のおならみたいな白い雲が漂っていた。