山芋鉄板、恐ろしい子......!
スーパーに行ったら、山芋鉄板のもと、的なものが売っていた。夫と「山芋鉄板美味しいよね!」って話になった。買ってみようと手に取ってから、私は思う。
別に素なんかなくても作れるやろ、と。
私は手に取った素をそっと棚に戻した。
その場で適当にネットで作り方を確認する。
山芋鉄板を作るのに必要な材料を調べた。長芋と卵と出汁だけでできそうだ。なんてお手軽なの山芋鉄板!我が家に鉄板料理になりそうよ!
私は早速長芋を購入。卵も出汁も家にストックがあるので購入不要。
しかしここでひとつの問題に気づく。私は長芋をすりおろすと手が痒くなるのだ。私は夫に話しかけた。
「おとんがすりおろすなら山芋鉄板作ってもいいけど。私は手が痒くなるけん、山芋すりおろすのは無理」
「別にいいよ〜」
「絶対にすりおろしてよ」
「わかった〜」
「山芋鉄板食べたいけん、よろしく頼んだぞ」
家に帰って「やっぱりすりおろすのキャンセルで」、と言われたら困るので、私はしつこく何度も確認した。夫のことを信用していないわけではないが、絶対に長芋をすりおろしたくない。手がベタベタするし。
言質をとり家に帰り、夫の気が変わる前に早速夫に長芋をすりおろしてもらう。どうせならいっぱい食べたいよなと550gの長芋にして、卵は3個使うことにした。
ソースをかけてもいいけど、ダシが効いてるので、そのままで。一口、口に含むとふんわりとろとろでおいしいっ!軽い口当たりで、歯が要らない。こんがりしたところと柔らかいところがコントラストになっていて、どちらも美味しい。これはチーズとか明太子とかを入れたかったやつでは? と思いながらもノーマルな山芋鉄板を次から次に口の中に放り込んでは、飲み込んでいく。
ゆるゆると暖かい山芋鉄板がとろとろと喉を滑り落ちていく快感に、恍惚とした表情を浮かべ、そこでビールをぐびっと流し込む。最高かよ山芋鉄板。
と、気づいたらでっかいフライパンにいっぱい作ったはずの山芋鉄板が消えていた。なぜ? そんなに食べたつもりはないのに。あの軽い存在感。山芋鉄板に実体などなかったのではなかったのだろうかと、この30分程度のことを振り返る。
まさに夢か幻か山芋鉄板か。
私を虜にしつつも泡のように消えていく山芋鉄板。
山芋鉄板……恐ろしい子!
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