わたしを「趣味:戦略」に駆り立てた1冊:『ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件』(2/6)【間違いだらけの読書備忘録(4)】
こんにちは、さらばです。
現在、以下の本について備忘録を書いています。
楠木 建『ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件』
1はこちら。
戦略はバズワード
本書の第1章、"戦略は「ストーリー」"を読んだ時点でわたしがしみじみ思ったのは、
「"戦略"というのはつくづくバズワードなんだなあ……」
ということです。
バズワードとは「もっともらしく使われるが、定義が曖昧な言葉」で、流行り言葉の大半がそうだったりします。例えば昔で言うとIT化とかCloudとか。IoTとかメタバースっていうのも多分そうですね。「そもそも"バズワード"自体がバズワードだ!」って主張もあります。
つまり"戦略"って言葉は誰もが知ってると思いますが、「戦略ってなに?」と訊かれてちゃんと考えを述べられるひとは少ないんじゃないかということです。
本書の第1章では「戦略とは何か」を語るために「(戦略≒ストーリーであるという主張から)ストーリーとは何か」そして「ストーリーとは何ではないか」が多角的に書かれています。
これらを読みながらわたしはこれまでの仕事人生で見てきた"戦略"が、ちっとも戦略じゃなかったなあ、と改めて思った次第。
最も「そうそう!」と思ったのは(戦略とは)"「アクションリスト」ではない"という項です。
過去目にした経営方針とか事業戦略とかいうタイトルの資料にそれらしく書き並べられている内容が、単なる「やることリスト」や「スローガン」だったことは数え切れないほどあります。
当然説明されてもピンとこないんですが、つくった当人は得意げだったり、「これを(自分以外の誰かが)やり切るんだ!」と息巻いていたりしました。
でもピンとこなかった理由を、わたし自身「リソースや能力の観点から現実的じゃないんだよなあ」くらいに捉えていました。
しかし本書を読んでそれ以前に、
「打ち手と打ち手の間に、因果性がない」
「因果がないから、必然性のある順序がない」
「つまりストーリーがない」
という認識に変わりました。
言い換えると、今のわたしが最低限"戦略"と見なせる条件は、
「打ち手と打ち手が必然性のある因果論理で繋がることで、ストーリーになっていること」
です。
必殺技を求める経営者
本章に"「短い話」を長くする"という項があります。
第1章でわたしがとりわけ好きな部分です。
師匠に教わったことのひとつに、
「戦略のような、答えのない答えを探す上で考えをまとめるときは、必ず文章で書け」
というものがあります。その際、
「長いこと自体に意味はないが、成果を出す人間は、常に圧倒的な文章量になる」
と言われ、初めて聞いたときは「?」となりました。わたしはそれまで仕事上では「資料は短いほどいい」と刷り込まれていたからです。
むしろ「さらばは文章が長い」と指摘されてしまうこともしばしばあり、短くしよう、簡潔にしよう、という意識が働いていました。
でも、実際に書けば書くほど、師匠の言葉の意味を実感しました。
文章というのは当たり前ですが"文脈"が必要です。スライド資料のように、ページごとに情報がぶつ切りになっていても成立するものじゃなく(いいスライド資料にはちゃんと文脈があると思いますけど)、前後が"必然性のある因果論理"によって繋がっていなければ、意味が通らなくなります。
だから、「考えがまとまっていない」場合、文章にはできません。書こうとすることで自分の考えがどこまで整理できているかが解りますし、書くことで整理できることもあります。ただ、いずれにせよ「ひとつの結論の裏付けとして膨大な思考があればあるほど、文章は長くなる(長くできる)」というのは確実でしょう。
その意味で、ビジネスにおいて「短い」ことは必ずしも正しくないということを学びました。
上に挙げた"「短い話」を長くする"という項で語られていることは、これと似た話(というかこれをもっと多角的に、豊富な文脈で語っている話)です。
わたしの職場でも上層部の方がよく言うのは「なにをつくれば売れるか考えろ」「どうしたら売れるか考えろ」という類の言葉です。これは要するに文脈という観点がなく「個別の打ち手の質を高めろ」ということで、わたしの解釈だと、
「業績を大幅に改善できるヒット商品を生み出せ!」
「一発逆転の必殺技を編み出せ!」
と言われているに等しいです。いつも「そんなもんないです。夢見てんじゃねえですよ」と言ってやりたい衝動に駆られます。
そんな解りやすい打ち手は、運良く実現できたとしても再現性がなく、成功理由が解りやすいので模倣もされやすい。
ストーリーとしての競争戦略は真逆で、文脈に依存するので"再現性がある"し、成功理由の勘所が端から見て"解りにくい"し、それらの要素からも"模倣されにくい"というのが本書で述べられているところです。
ストーリーづくりは面白い
まず第1章について書いてきましたが、実は本章で一番好きな箇所は最後……"戦略づくりの面白さ"という項です。
「やることリスト」や「スローガン」のように単純なものをつくるより、必然性のある因果論理で結ばれたストーリーのある戦略をつくるのはとても難しいのですが、そのことについて楠木さんはこう記します。
これを締めに持ってくるあたりが本当にすばらしいと感じました。
どうすればできるようになるか、ということについてもこのように書かれています。
物語を18年以上つくり続けてきた人間としては、「ですね!」としか反応しようのないほど正論です。
「面白い物語をつくるにはどうしたらいいですか?」
「まず自分がめっちゃ面白がれ!」
って話と同じだと思います。面白くて仕方ないから、いくらでも時間を費やすし、上手くいかなくても上手くいかせようとする気概が持てます。できるようになるまでこちとら容易には諦めません。だって、楽しいから。
わたしの中で「創作と仕事」の壁をぶち壊そうと思った理由のひとつは、本書のこのあたりの考えによって、
「ああ……! 同じでいいのか!」
と気付いたというのがあります(一方で、「仕事と趣味は違う」という話もあるのですが、これはまた別の機会に)。
そして実際に仕事の場でも事業の"戦略"をつくることをチームメンバーとともに志向し出しているのですが、これが本当に難しくて、面白い。
やればやるほど登る山の高さを自分たちが見誤っていたことに何度も気付き、頂上制覇がいつになるかも解らなくなっていくのですが、少なくとも然るべき装備を揃えて登り始めた実感はあり、必ず制覇してやるという想いだけはむしろ高まっています。
と、いうわけで今回はここまでです。
次回も引き続き本書について語っていこうと思います。
お読みいただきありがとうございます。
さらばでした!
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