世界一周の旅は続くよどこまでも。転職したら天職になった話。
5大陸の旅から帰国し、8キロの減量の末、無事再就職を果たした。新卒入社した会社で貯めた350万も使い果たしていた。さあ、また稼ぐぞ〜!社会で生きていくぞ〜!と意気込んでいた。
5大陸の旅で様々な国の人たちと出会い、沢山助けてもらった。見ず知らずの私達に、オススメの宿を教えてくれた。美味しい飲食店や素敵な場所も教えてくれた。一緒にストーンヘンジを見に行こうとバスの運転手に話してくれたり、モンマルトルの丘まで案内してくれたり、カイロ空港でホテルまでタクシーに相乗りさせてくれたり。流暢に英語の話せない私達の宿を代わりに予約してくれたり。ご飯をご馳走してくれたり。お別れの時には「Have a nice trip」と笑顔で送り出してくれた。「ありがとう」の言葉では足りない。今度会う時にはご恩を返します!と言いたいところだが、今度会うことが叶わない人たちだ。沢山の人に出会い、受け取った恩を自分で止めてはならないと思った。これから人生の旅で出会っていく人たちに、このご恩を返していきたいと思った。
そして、私は転職エージェントのキャリアアドバイザーになった。キャリアアドバイザーの仕事は、私にとって旅の続きだった。私にとっての旅は、人や場所との出会いだ。5大陸の旅では、行く先々で出会う人から話を聴いて、次の行き先を考え決めていた。同じように世界を周る旅人の情報もあれば、地元の人からオススメの市場やお店、宿を教えてもらうこともあった。日本からはるか遠く離れたスペイン・バレンシアでは、同じ佐賀出身、福岡の大学を卒業後、単身スペインに渡り、ホステルで働きながら暮らしている青年に出会った。「大学を卒業したら就職し、働き続ける」ことを当然のように思っていたが、その青年との出会いは私の価値観を大きく変えた。
「自分がやりたいからやっている」
ヒロは、自分の意思で決めてそこにいた。私たちも、自分の意思で決めて旅に出た。そして、旅路で人と出会い、多様な価値観に触れる。キャリアアドバイザーの仕事も、同じだ。お客さんが面談にやってくる。それが出会いだ。そこで多様な価値観に触れる。旅の途中で出会った人と、これまでの話、今の話、これからの話をする。お互い赤の他人同士だからこそ、この広い宇宙で出会ったご縁を感じる。脈絡もなく始まる話が面白すぎる。偶然の出会いが嬉しい。誰との出会いも偶然であり、必然なのだ。
そんな想いで最初の面談に臨む。
お互いに人生を旅する旅人どうしだ。
キャリアアドバイザーの仕事は、ダイレクトに恩返しができる仕事。仕事を始めてすぐに夢中になった。旅人の話を聴く、自分が持てる情報を提供する。自分に情報がなければ必死で情報を集める。自分と出会ってくれた旅人に恩を返したい。自分がやりたいことをやって、お金をもらえるなんて。なんて幸せなんだ。嬉しくて、楽しくて、全身全霊全力で仕事する。入社当時は資格も経験もない私だったが、出会った人に恩返しをしたいとの想いだけで動いていた。私は一人じゃなかった。優秀な同僚や先輩、後輩たちがいた。求めれば何でも教えてくれた。情報と情報を繋いで、人と企業のご縁を紡いでいく、そんな仕事に遣り甲斐を感じていた。
「親身になる」って言葉がある。よく組織の中では、自分の身内だったら……と思って対応することで、 サービスの質が向上すると言われていた。私の中での「親身」とは、旅先で出会う人たちが、見ず知らずの私たちを助けてくれる「親身」のことだ。身内かどうかは関係ない。出会った人には「親身」になるのだ。
その想いひとつで行動を続けた結果、自分でも信じられないような仕事の成果が出た。
「想いってすごいなぁ」
「ナレッジを展開してください」
と言われても困った。想いひとつでやったこと。想いがどのように行動に繋がったのか?結果、やったことは何か?と問われると、親身に、沢山の方のサポートをする……と言うような抽象的な話の共有となってしまった。どんなマインドで仕事をしているのか、思いを熱く語ると、ロジカルな人が多い社内では少し引かれた気がした。でも、私の想いを理解してくれる人がいた。
「社会に通用する想い派になろう!」当時の上司が異動前に私にくれた言葉だ。認めてくれて、尊重してくれて、好きなだけ思いっきり仕事をさせてくれた上司。ロジカルの塊のような会社で、「想い派」というのもあっていいんだとホッとした。上司も「想い派」のひとだった。
旅を通して天職に出会えた。幸せだと感じていた。
いつしか、天職なのに……全身全霊で向き合えていない。仕事に向き合う自分の気持ちに戸惑いを感じていた。家族ができ、自分の時間は限られ、自分の全てを旅にささげられなくなっていた。
天職だって休んでいい。天職だってカタチを変えていい。時が経ち、自分も変わったことを受け入れる時がきている。転職を全うせねば、との自分自身を少しずつ解放していこう。今やっとそう思えてきた。
新しい景色、新しい出会い、この目で見たい。その匂い、空気を感じたい。
そこに立つわたしは何を感じるのか、この目で確かめたい。
13年間、動かず旅を続けてきた。
これから向かう先を選ぶのはわたし。一歩踏み出すのもわたし。
noteの向こうで、私がわたしを応援している。
◉「社会で通用する想い派」って言葉を残して去っていった上司。今でもわたしに名言を与えてくれている。最近ではコメダ珈琲で「余熱人材」って言葉を残して去って行きました。
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