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怪我したってよ

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ネジひとつ。

ネジひとつ。

ネジが落ちていた。

ついに、外れてしまった頭のネジが視覚的に見えるようになってしまったのかな。
と一瞬本気で思いかけて、

いや、待てよ。
私は今、腰と膝を装具で固められていて、外れちゃいけないネジまみれの生活で、
見逃してしまうかもしれないくらい自然に落ちているこのネジは、本来ここに落ちていていいものではないんだよな。

と、冷静さを取り戻しました。

焦っても仕方ないから、とりあえず落ち着こ

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麻酔vs私 リベンジマッチ

麻酔vs私 リベンジマッチ

麻酔との戦いで大敗を喫したのが約一ヶ月前。
因縁の相手と再び対峙する日がやってきました。

「次は麻酔に勝てるように頑張って」
聞いたことない激励の言葉をいただき、次の手術も楽しみにしていました。

お酒に強い人は麻酔にも強いと風の噂で聞き、一時退院期間中、ここぞとばかりに缶ビールのプルタプを気持ちよく開けました。

元々そんなに強くないうえに、約二ヶ月の間お酒を飲んでいないもんだから、余計弱くな

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麻酔vs私

麻酔vs私

本当に怪我をしているかわからないシュレディンガーの膝の中身を確認してもらう手術をしました。

手術が終わり開口一番
「やっぱり靭帯切れてましたか?」
と先生に質問すると
「そうだね、切れてるね」
と優しく、淡い期待を鋭く切り刻む回答をしてくれました。

まだ体内に残っている麻酔の効果を使い切るように眠りにつこうとする朧げな意識の中で私は麻酔に負けたことをゆっくりと自覚したのでした。

手術前、同じ

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シュレデンガーの膝

膝の靭帯を切ったと診断された私だけど
もしかしたら、本当は、
靭帯なんて切れていないんじゃないかと、思ってしまう自分がいる。

果たしてこれはポジティブシンキングなのか。
それとも、単なる現実逃避に過ぎないのか。

無理やりポジティブに捉えようとしてるわけでも、病院生活が嫌すぎるから現実逃避をしているというわけでもなく、

ただ事実として、実際に切れているところを見てないんだから確認するまでわから

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その旨煮、異議あり

入院患者の楽しみといえば
ごはん。
運んできてもらうトレーにその日のメニューを書いてくれている紙で確認すると。

ふむ、今日の朝ごはんのメニューは、

白米。
お味噌汁。
漬物。
野菜の旨煮…。

やさいのうまに…。

……?

順調に楽しみにしていた私の脳内は突然素通りできない単語が入り込んできたことによりプチパニック。

大変だ。

時刻は朝7時。
こんな朝からプチパニックをおこしていては、今

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時をかけないタイプの少女

わたしはどうやら、ケガをしたらしい。
それもただのケガじゃなくて、大ケガらしい。

レントゲンでスケスケにされ、MRIで輪切りにされて分かったんだけど、背骨は折れていて、膝は靭帯が切れているらしい。

あぁ、そうか。
だからあんなに。

そのことを人に伝えると、わたしよりびっくりして、わたしよりわたしの体を心配してくれていた。

あぁ、そんなに大きなケガなのか。

晴れた日だった。

わたしは先の

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