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鹿島槍天狗尾根遭難の報告書から学び取ったこと(原文)⑪

学習院大学山岳部 昭和34年卒 右川清夫

雪崩発生に関して

地こすりと表層雪崩の相違。
 地こすりは雪崩発生の始めから底雪をもさらいますが、流れの途中から底雪をいくらか削りながら流れます。流れの雪を残さないのが特徴です。

 表層雪崩はその名のごとく、底雪の上を流れます。 但し底の構造で、ところどころに雪崩の雪を置いてゆく場合が多くあります。 質問のa,b、に関して発生現場の地形、雪崩の進行方向を見ると当時の大雪崩は、にごり尾根(2図参照)を大きく削っている。 ガイドの田中君(1月6日私と同行)もはっきり見ていますし、底雪崩に相違ありません。 湿雪と云ってもごく柔らかな雪ですが下の雪がクラストしていない場合、いままであった雪よりも新しく降った雪の方が湿っている場合には底雪崩のような形になる場合もあるかと思われます。 しかし春の地こすりと違って周囲の雪が柔らかいので藤原さんの遺体が雪崩の外側におられたため、曲がり角の外壁に押し込まれたのではないでしょうか。

雪崩の進行方向より

a、雪崩の最初に突き当たる尾根はにごり尾根の藤原さんの発見された場所だと思います。
b、今回藤原さん発見場所より考えて
 4人の方は最初大雪崩の下であったと思われますがデブリの形から見まして雪崩の通路になっていますからデブリは削られて下方へ持っていかれていることも考えられます。 時期が早かったから、雪渓の上に出るよりも、下方に落ちる可能性もあります。 澤の形より見て滝の連続のようですから滝壺に入っているかもしれません。 そのような場合早く捜索しませんと土砂などに埋もれる憂いも大いにあります。 尚、夏のまかり沢は誰も入っていませんので詳しいことは分かりません。
(残る3遺体発見のための心配も含めての回答文)

「鹿島槍天狗尾根遭難の報告書から学び取ったこと(原文)⑩」から

「鹿島槍天狗尾根遭難の報告書から学び取ったこと(原文)⑫」へ

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