持ちつ持たれつ優先席。
持ちつ持たれつ、誰かにお世話になったり、誰かのためになったり。その人に返せなくても、別の人に返していく。お世話になったら嬉しいし、誰かに返せたときは「わたし、できるじゃん」と嬉しくなる。
今日は、終点まであと一駅!というタイミングで、すっごく疲れた顔をした赤子連れのママが乗ってきた。あと一駅ならわたしは余裕だなぁと思って「どうぞ」と席を譲った。
そのママはホッとした顔をして席について、抱っこ紐からのけぞり返っていた赤子も気付いたら隣に座っていたわたしの連れの顔を見てケラケラ笑っていた。
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わたしは、人より三半規管が弱い。大学病院の耳鼻科で精密検査もしてみて「右のお耳は神経そのものが未発達ですね」と太鼓判を押してもらっているくらいには。
右耳が全く聴こえない、気圧に体調が左右されやすくて、乗り物酔いしやすい。それからそれから、平均台もドクターストップ。バランスをとりながらまっすぐ歩くなんて、あぶないあぶないと。
だから、揺れるもの、たとえば電車とかバスとかそういう公共交通機関を利用するときは基本的に椅子に座ることにしている。バランス感覚が悪いというのは、慣性の法則に抗うこともまた苦手なので。
特にバスなんかは身体障害者手帳を提示して割引運賃で乗車することも多いので、乗車時に手帳を手にしているのをみて席を譲ってくださる人もいる。世の中、良い人だらけだなぁといつも思う。特に体調が悪いタイミングで譲ってもらったときは泣いちゃいそうなくらい嬉しかった。
でも、30年近く生きてきてみて、それなりにトライアンドエラーしてはいるので、ちょっとの距離だったら下腹に力を入れてしっかりと両足で地面を踏み締める。あと、吊り革ではなくて手すりをしっかりと握りしめておけば、大抵なんとかなる。あと、優先席が空いていれば、腰をかける。
ただ、優先席というのは常に空にしておく場所ではなくて、席を必要としている人がいたら優先的に座ってもらうところだということは重々承知している。だから、優先席に座るときには特に周りの様子を気にかけるようにしている。
わたし自身体調がすこぶる良い日は上手に踏ん張れるので、赤子連れのママや腰の曲がったご老人が乗ってきたときには「どうぞ」と声をかけて座ってもらうようにしている。自分がしんどい日に手帳片手にバスに乗って、席を譲ってもらった経験があるから。
だから、こうやってたまに誰かに返せるタイミングがくると、やっぱりとても嬉しい。それでホッとした顔をしてくれるとやっぱり嬉しいし、わたしもその嬉しさがよくわかるから。そんなわけで、わたしと、わたしの半径90cmは、今日も平和です。