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2023 小寒 芹乃栄(せり すなわち さかう)
お正月が明けて、明日はいよいよ初釜という一月の一週目。東北のキーンと冷えた寒さの名残りなのか、トーキョーはいくらがあったかい気がする。
お気に入りの青いダッフルコートの前を開けて、電車を乗り継ぎ「あけましておめでとうございます」と先生の家のドアを引くと、ふんわりいい匂いが漂ってきた。
あら、こちらに帰ってきたのね。
今日は、あなたがいらっしゃるからすき焼きにしたのよ。
と先生と旦那様が、お鍋をつついて笑っている。
この日はお稽古というよりは、翌日に控えた初釜の準備をするためにここにきたというのに。すっかり、実家にお昼ご飯を食べにきたみたいな構図になってしまった。
年末は好きな人と、年始は家族とどっぷり一緒に過ごしていたので、一週間ぶりに一人暮らしの部屋で迎えた朝は正直なところ、どうも調子が乗らなかった。だというのに。
ここに来てトーキョーにもちゃんと迎えてくれる人がいるだなんて……‼︎
卵をふたつも割ってお肉とお豆腐と春菊と白滝のたっぷり入ったすき焼きをお腹がはち切れそうになるまでたらふく食べて、翌日に備えてお手前をおさらいしていると、先生の手からあれよあれよとお菓子が出てくる。
どれも、お年賀に相応しいうさぎちゃんが描かれたものばかりで、思わず顔がほころんでしまう。お手伝いに来たはずなのに、この時点でまだ食べてばっかり。
「どうせなら着付けも練習して行きなさい」と久しぶりに着物を着付けるわたしの横で、先生がようやくお茶会の準備を始める。でも、わたしはパンパンのお腹でノロノロと着付けを。
なんとか帯まで締めて、明日の小物も確認したところでやっとお手伝いを始めた頃にはもう日が沈み始めてくる頃。
道具を確認して、炭を組んで、紙小茶巾と茶巾を用意して、お茶碗を用意して……なんとかタスクは完了。
結局ほとんどの時間、おいしいものをモグモグしてたっぷりお腹を満たしてもらうためにご挨拶に伺ったようなそんな1日になってしまったのだけれどもね。なんてこった。
そんなわけで、今年も周りに恵まれておいしいものを食べて心も体も満たされながら楽しく暮らしています。
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