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推敲、寝かせてそして腐らせて。

ごめんね…こんな風にしちゃって…。


あの時は確かに夢中で、真剣に、魂の限りに書いた。涙を浮かべたり、Enterキーを押す手にッターンと力を込めた。辞書をひき、この使い方で間違いないか確認して、行間にも想いを込めた。出来上がったものを悦に入って読んだはず。


その記事がどういう訳か、未だに「下書き」として残っている。

そしてその記事を今日こそ出そう、出そうと思ってもう1度読むと、もはやそれらは陳腐なコトバの連なりにしか見えず、こんなもん出さなくて正解だったかもしれないな、としょんぼりする。


あの時込めた魂は、もはや腐ってしまった。


こねくり回したり、推敲しているうちに、キラキラとした輝きや込めた熱も全て消え失せて、醗酵してドロドロとした自意識の塊になってしまった。


魂と塊って字が似てるね。どっちも鬼がつくんだって今、思った。
鬼の首を取るかのように怒りを込めた文章も、そのおどろおどろしい塊も、外に出すことなく封印し続けたら、鬼なんていなかったような腐ったものになってしまうみたいだ。


noteイベントでジェーン・スーさんと伊藤亜和さんの対談を見た。

「感情がたかぶってしまうものを書くときどうしてるか?」といった質問に対してお2人はこんな風に言っていた。

亜和さん「昂って泣きながら書く」
ジェーン・スーさん「最後まで絶対書いて、後日狩り整えていく」


さらに亜和さんは何度か「推敲はしない」と言った。


私は自分が書く文章にとことん自信がない。

それは学歴がない、教養がないのと同じコンプレックスで、とにかく土台もない、実績もない、経験もない、ないものだらけ。何もないのに、畏れ多くも「書く」という茨の道を素手で歩こうとしている。

そんな私に唯一出来ることが「魂の限りに書くこと」そしてそれを「推敲すること」である、と思っていた。


がむしゃらに書いて、見つめる。
「これで本当にいいの?」
そうして推敲推敲推敲…。


私が書く記事は少なくとも3日、長くて1か月以上も寝かせられている。そして投稿される前に何度も手を加えられている。


本当にそれでいいのかな…と不安になった。

3日経つと、冷静に自分の文章を見つめなおすことが出来て、より正しい文章に直すことができる。

無いもの尽くしの私にできる武器だと思っていた。

だけど「より正しい文章」を目指すうちに削ったものは何だったんだろう。
3日もたったら鮮度が落ちる。熱が冷める。
1週間たったら魂も抜ける。
1か月経ったらもう、それらは外に出せないほどに腐ったものになっている、ような気がしてしまう。

文中に出てくるカラスに、イチゴに、ごめんね。と言う。

比喩表現として描かれたその生き物や食べ物も一緒に腐ってしまった気持ちすらしてくる。


……やめようかな、推敲。


「下書き」の記事を見つめる。
カラスやイチゴは、このまま出してもいいのだろうか。読み手の方はどう思うだろうか。


推敲の推敲をしている間、やっぱり私はまだ投稿ボタンを押せずにいる。


ーーこれが一昨日までの私。


ーーそしてここから今日の私。

昨日、そのうちのひとつでもある「カラス」の記事を投稿した。

最初に書いたのは5/16。
その時はカラスはいなかったはず。

そこから何度も推敲して練り直して、あまりにも自信がなくてずっと下書きになっていた。
これ以上、手の加え方が分からなかった。


本当に、腐っちゃったのか、確かめたかった。


だから、読者の方には申し訳ないのだけど、自意識の塊でドロドロしたらごめんって思いながら世に出した。「ええい!ままよ!」



結果だけ言うと、腐ったりしてなかった。


それはコメントで伝わってきた。
コメントをくださったみなさまありがとうございます。

あの時込めたものは確かに残ってて、受け取ってもらえたように感じた。推敲して、寝かせたのも間違ってなかったのかなって思う。

いまだにどっちが正解とかは分からない。


けど、同じように、書いたけど出せない人に伝えたい。


こんなの出せないって悩んで悩んで下書きに入れ続けていたものも、思い切って出してみてほしい。

悩んで悩み抜いたそのコトバたちは腐ったりしない。むしろ悩んだ分だけ、発酵して美味しくなる可能性もある。


こうゆうの、熟成っていうんだって。
#熟成下書き
タグもあったよ。


「投稿」ボタン、すっごい勇気いるよね。

ましてやコンテスト、創作大賞に出す作品ならなおさら。

でももう、これ以上どうしたらいいか分からないくらい推敲したなら出しちゃったらいいと思う。

一昨日までの私にもそう言ってあげたい。

大丈夫大丈夫!そんなに身構えなくても、心配しなくても、出してみないと分かんないよ!って。背中押したい。


推敲しない文章も。
推敲しすぎた文章も。


そこに込めたものがあるならきっと伝わる。



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