復職の産業医面談に向けて人事担当者はどんな準備をすればよいのか?
事例
ある日、人事部員の朝倉のもとに、適応障害で休職していた社員から診断書が提出されました。
朝倉(ちょうど、なんかの記事で復職時には産業医面談とか読んだな。明日さっそく面談してもらおう。)
訪問当日
朝倉「先生、こんにちは。今日はさっそく復職面談をしてください。時間は20分程度でよいでしょうか?(紹介会社からは面談はその位ときいていたし・・・)」
佐々木「あ、そうなんですね、わかりました。(え、いきなり・・・とりあえず、元気かどうか話を聞けばいいのかな)」
朝倉「じゃあ、休んでいた田中さんはもう来てるのでお願いします。こちら、診断書です」
佐々木「あ、はい・・・(こんな診断書で何をやればいいんだ・・・)」
・・・・・会議室に入り、対象の田中と面談が始まる・・・・・・
田中「初めまして!田中です。」
佐々木「初めまして、産業医の佐々木と申します。」
・・・・いままでの体調の経過や休みに至った経緯を会話する・・・・・
社員「休んでいたときよりだいぶ元気になりました!でもまだしんどいときはあるので、主治医からは時短勤務と業務内容の変更が必要と言われています」
佐々木「なるほど、じゃあ、そのような形で会社に伝えますね(20分だとあまり深い話も聞けないしな・・・)」
・・・・・・・本人との面談を終え、朝倉に結果を伝える・・・・・・・
佐々木「朝倉さん。面談終わりました。本人の様子からは大体元気だけど、しんどい時もあるようです。なので、産業医としては時短勤務と業務内容の変更の上、復職可と考えます」
朝倉「ええ!!時短制度もないし、業務内容変更もできないです・・・それだと現場は困るんですが・・・。いまどのくらい元気かもわからないのですが・・・(これは困ったな・・・これなら私が直接いままでのように対応した方が、話が早いんじゃないだろうか・・・)」
<この記事の事例はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。>
事例の解説
復職面談については、多くの人事担当者が悩まれていることだと思いますので、「事前の準備編」、「面談編」、「面談後編」、という3つのパートに分けて記事を作成します。今回は、「事前の準備」について説明していきます。
事前の準備
産業医が復職面談を行う目的は、復職するにあたり健康面を確認することにあります。
つまり、
①業務をこなせる体調に回復していること
②業務に戻っても体調を維持したまま働けること(再発・再燃しないこと)
③周りの過剰な心配やフォローを必要としないような体調であること
産業医が医学的に健康面を評価をして、会社に意見を出し、最終的に会社が復職させるかどうかを判断をするという流れになります。
今回のケースでは、佐々木がこれらのことを判断するための情報が足りなかったため、産業医としての意見を出したものの人事の朝倉は困ってしまいました。復職面談を行うにあたって、事前の準備が足りなかったのですね。
そこで、復職面談の前には以下の2つのことをまとめておくとよいでしょう。事前に産業医に共有しておくと情報の過不足もわかるのでよいと思います。
・会社としての復職の目安・要求水準
・復職後の働き方やルール
会社としての復職の目安・要求水準を明確にする
会社としての復職の目安の一例
・労働者が十分な意欲を示している
・1人で安全に通勤・退勤ができる
・決まった勤務日、 時間に就労が継続して可能である
・業務遂行に必要な思考力・集中力がある
・業務に支障をきたす症状がない
・再発予防策が立てられている
厚生労働省: 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引きより筆者改変
などです。面談の中では医学的な見地から産業医にこれらを確認してもらいます。
復職後の働き方やルールを決めておく
復職面談の前には、以下のことをまとめておき、事前に産業医に共有しておくと産業医としても判断しやすくなります。
・復職後にやってもらう予定の業務内容
・職場の状況(人員や今後の予定)
・復帰後の就業上の配慮がどの程度、どのくらいの期間可能か
(時間外労働を制限するかどうかや、特定の業務内容について軽減・免除するかどうかなど)
復職後にどのような業務につくか分かっていれば、その業務ができる体調か、業務を続けた際に体調を悪くしないかどうか判断しやすくなります。他にも現場が心配していることなども把握しておくとよいでしょう。
とくに復職後の働き方やルールに関しては下記のような表にあらかじめ管理職と打ち合わせてまとめておいてもらうとスムーズです。
また「復帰後の就業上の配慮がどの程度、どのくらいの期間可能か」に関しては会社であらかじめルールを整備しておくとやりやすいでしょう
今回の記事では『復職面談「事前の準備編」』ということで作成しました。復職面談は、従業員や人事担当者、職場上司などの関係者が考えていることが、それぞれ異なるため、事前にすり合わせを丁寧に行わないと後々のトラブルになってしまいます。復職面談に産業医をうまく活用することで、そのようなトラブルを減らすことができると思います。
次回は、『復職面談「面談編」』という記事を作成しますのでお楽しみにお待ちいただければ幸いです。
本記事担当:@djbboytt
記事は、産業医のトリセツプロジェクトのメンバーで作成・チェックし公開しております。メンバーは以下の通りです。
@hidenori_peaks, @fightingSANGYOI, @ta2norik, @mepdaw19, @tszk_283, @norimaru_n, @ohpforsme, @djbboytt, @NorimitsuNishi1
現役の人事担当者からもアドバイスをいただいております。