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『鎌倉殿の13人』つれづれ

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2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を見てつれづれ思ったことを書きました。おもにあきれたこと。
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『鎌倉殿の13人』がクズすぎる件(あるいは、ウクライナのこと)

題名のとおりだ。 源平サーガが好きだから、今年はめずらしく大河ドラマを見ている。 だが、ひどい。 とにかくひどい。 ひとことで言うと、頼朝の人物造形がクズすぎる。 親の仇を討つ? 平家を滅ぼして世を正す? お子ちゃま戦隊もののメンタリティーだ。 歪曲されたまましれっと話が進んでいるが、 頼朝の父、義朝は、清盛に殺されたわけではない。 両者は平治の乱で敵味方に分かれて戦っただけだ。 そのあたりは2012年の『平清盛』のほうがよほどきちんと描いていた。 平家のどこが悪いの

続『鎌倉殿の13人』がクズすぎる件(あるいは、ウクライナのこと)

ずっとがまんしてきたが、もう耐えきれなくなったので書いている。 ようするに── 「人間として、これはやらないだろう」という最低ラインを踏みにじったのが、今回のロシアによるウクライナ侵攻だ。 ウクライナが核を放棄するかわりに不可侵条約を結んだはずではないか。 なのに平然と攻め入っている。 今回、ドラマの中で頼朝が上総介に対してした仕打ちは、これとまったく変わらない。 1ミリも感動できない。 ドン引きなだけだ。 フィクションだからと笑って見逃す人は、 フィクションの力を見く

『鎌倉殿の13人』は私たちの社畜魂をここちよく慰撫してくれるクスリだった

前回の投稿後、友人と 私「きっと最終回にさ、さんざん人を殺しまくって一人勝ちした義時くんが目に涙をためて 『俺の人生は何だったんだろう』 とか反省して、恋女房の八重さんに 『殿のせいではありません。殿はよくがんばりました』 って背中よしよししてもらって終わるんだよ」 友人「いやそれはさすがにクズ過ぎるだろ(笑)」 という会話を交わした。 2週間前のことだ。 そしたら、なんと昨日の回のラストシーンが 目に涙をためて反省する義時くんと、その背中をよしよしする八重さん だったので

『鎌倉殿の13人』の頼朝のキャラがブレすぎていて理解できない件

毎回驚かされてばかりの『鎌倉殿の13人』だが、 昨夜の壇ノ浦の回は斬新すぎて、声も出なかった。 まさかと思っていたら、そのまさかだった。 平知盛ぬきの壇ノ浦。 知盛ぬきの壇ノ浦なんて、 丸ビルのない丸の内、 みかんの乗ってない鏡もち、 いやむしろ、鏡もちに乗ってないみかんじゃないか。 あれはみかんじゃなく橙(だいだい)だというツッコミはこの際なしだ。 あきれるあまり、自分でも何を言っているのかわからない。 源平サーガ屈指の名場面、稀代の名台詞、 「見るべきほどのこと

もはや疑問しかない『鎌倉殿の13人』

あんまりばかばかしいからもう書くのは止めようと思っていたら、いまの大河ドラマの内容をまるっと信じているらしいまとめ記事を見つけてしまって、とほうにくれて、またこんな文章を書いている。 以前、 「亀の前のお家を義経がぶち壊したという史実はありません」 とはっきり書いてくれている歴史家の先生がいたのだけど、 本当に私なんかじゃなくプロの方がちゃんと釘をさしてくれないものだろうか。 義経の正妻が、義経を暗殺に来た刺客(土佐坊昌俊)を手引きした? 静御前に嫉妬して、彼女を殺させる

似すぎ。今の日本と『鎌倉殿の13人』

似てる。 似すぎ。 テレビの中に、まるごと今の日本。 烏帽子つけてるだけ。 風刺とはとても思えない。 「昔の人もバカだったんだよねー、僕らと同じで。あははっ」 という、ただ、上目線の現状肯定。 大の男が13人も集まってうだうだ評議する。 みんな私利私欲を言うから当然まとまらない。 出勤すれば職場で見られる風景そのままだ。 烏帽子つけてるだけ。 そもそも鎌倉幕府のおしごとって何? と思っていたら、 簡易裁判所、的なことらしい。 太郎と次郎が土地をとりあってどうたら言ってる

「名こそ惜しけれ」は源氏じゃなくて平家の名台詞なんですが? ~NHK『新・街道を行く 三浦半島記』の鎌倉絶賛が疑問だらけだった件

私は鎌倉が好きで、奈良・京都も好きだ。 どちらも大好きだ。 だから、昨夜(8月6日)放送のNHK『新・街道を行く~三浦半島記』を見て、 中で朗読されていた故・司馬遼太郎の文章を聞いて、驚いた。 「鎌倉幕府がもしつくられなければ、その後の日本史は二流の歴史だったろう」 えっ。 奈良時代と平安時代、全否定? 「この時代から、日本らしい歴史が始まると、極論していい」 よくなくない?! 極論にもほどがありませんか? 司馬遼太郎をちゃんと読んだことがなかったのだけど、 そんな

壇ノ浦で平家が勝てなかった理由なんてとっくに『平家物語』の中に書いてあった(雑兵の目で見る源平合戦その1)

『鎌倉殿の13人』のひどさにあきれたのがきっかけで、 ドラマじゃない歴史番組を見るようになった。 そして分かったのは、 ドキュメンタリーも、ドラマと、けっきょく同じだということだ。 はじめにストーリーを立てて構想する。 そのストーリーが、偏っていない保証はない。 以前ここにいったん挙げた記事で、じつは削除したものが1本ある。 末尾でNHKの大河タイアップと目される歴史番組をお勧めしてしまったのだが、その後お勧めしたことを後悔したのが、削除の理由の一つだ。 「歴史探偵『源平

義経は卑怯者?(雑兵の目で見る源平合戦その2・前半)

さて、前回積み残した、 旧説2:義経が「卑怯にも」「非戦闘員である」船の漕ぎ手たちを射殺させたため、 平家は負けた。 という俗説についてなのだけど、 書いているうちに、途中でばからしくなってきた。 どっから出てきた話でしょうね。 とっくの昔に一笑に伏されたものとばかり思っていたのに、 驚いたことに、そうでもないらしい。 少なくとも『鎌倉殿の13人』は、そのトンデモ説まる呑みで書かれていたし、 前回から紹介しているNHKの特番「決戦!源平の戦い」 (または「歴史探偵『源平合戦

義経は卑怯者?つづき または、勝つことの意味(雑兵の目で見る源平合戦その2・後半)

前半はこちら。 その4 敵の後ろを襲うのは卑怯なのか特番「決戦!源平の戦い」。 あまりに平家愛がすごすぎて偏りまくってしまったNHK大阪局のアツさ に感動した場面がもう一つあるので、それも書いておく。 壇ノ浦じゃなくて一ノ谷の話なのだが。 再現ドラマで、息を切らせて走って来た武士が知盛に告げる。(番組開始から1時間13分あたり) 「背後から源氏勢が!」 「何?!」と知盛。「背後から不意打ちとは。あり得ぬ。あり得ぬわ」 「九郎義経のしわざかと!」 「おのれ九郎、卑怯なり。こ

『鎌倉殿の13人』善児はどうでもいい

主人公って何だろう。 ヒーローでもヴィランでもいい。 ストーリーを支配してほしい。リードしてほしい。 それが主人公じゃないのか。 今年の大河の主人公は、ヒーローでもヴィランでもない。 何もしない。 人に言われたこと、または/そして、やらんでいいことしかしない。 見せ場がなさすぎる。 北条義時を、どういう人として描きたいの? 彼の何を描きたいの? それがいまだに見えてこない。 義時の見せ場を作る大きなチャンスが一つあったのに、逃した「三谷幸喜は伏線の回収がうまい」 って

『鎌倉殿の13人』小栗旬さんが痛ましくて見ていられない

小栗旬さんが好きだ。 小栗さんは『八重の桜』(2013)では吉田松陰、『西郷どん』(2018)では坂本龍馬を演じていた。 どちらも登場回は少ないながら、素敵だった。わしづかみ。 「この人をもっと見ていたい」 と思った。 俳優にとっていちばん大切なのは、そこだと思う。 演技が上手い、顔が良い、声が良い、いろんな褒め方があるけれど、ようするに、 「この人をずっと見ていたい、聞いていたい」 観客や視聴者にそう思わせたら、勝ちなのだ。 「この人が主役の大河を見てみたい」と思った

畠山重忠という生き方

『鎌倉殿の13人』、今日は良い台詞があった。 「自棄[やけ]ではない。筋を通すだけです」 「もはや今の鎌倉で、生きるつもりはない」 どちらも、死に臨んでの、畠山重忠の台詞だ。 この日が来るのを知ってはいたが、 私も正直、今夜、 殉死したい気分だ。 全キャラの中でいちばん好きな人が、死んでしまった。 それを演じてくれたのが中川大志さんという、全キャラの中でいちばんの美形だったことは、想定外のご褒美でありました。 だいぶ前から── もう今の日本で生きていたくない、と思

みんなで畠山重忠の喪に服そう! ~ドラマ『風よあらしよ』が教えてくれたこと

『鎌倉殿の13人』第36回、「武士の鑑」。 畠山重忠が討たれて、みんなちょっと泣いて、 「さあ次は誰の番?」 ってわくわくしながら来週を待っているんだろうか。 重忠ロスの皆さん。 喪に服すの、1週間じゃ足りなくないですか? 私はここに、 少なくとも今年いっぱいは、愛する畠山重忠の喪に服すことを誓います。 だから何だって話だが、誰にも迷惑かけないからいいのだ。 そう決心した経緯を、ちょっと書きます。 最後までおつきあいいただけたら嬉しいです。 『風よあらしよ』が教えてく