八窓軒(京都曼殊院の草庵茶室)


「八窓軒(はっそうけん)」

京都三名席(他は大徳寺孤篷庵の忘筌(ぼうせん)と南禅寺金地院の八窓席(はっそうせき))で、曼殊院にあります。

曼殊院は京都市の北、一乗寺にあり、天台宗延暦寺に属する門跡寺院だそうです。

明暦2年(1656年)、良尚法親王が門主のときに洛中から現在の地に移転されました。良尚法親王は、桂離宮を造営した八条宮智仁親王の子です。

院内は大書院、小書院、茶室などで構成され、中でも小書院は貴族らしい美しい意匠が目を引きます。

そこにある茶室がこの八窓軒で、桂離宮の松琴亭茶室にも似た構造で、独特の風格をもつ茶室空間の中には、織部や遠州の手法を取り入れつつも統合された貴族好みの空間構成となっています。

内部は三畳台目。点前座は台目構えで、中柱にはほんのり曲がりのついた桜の皮付きが立ちます。

勝手付には色紙窓(上下の軸をずらした窓)で袖壁の入隅には雲雀棚(上下の棚の大きさが異なる)。これらは織部の用いた手法です。

名前のとおり全八窓で、図の他には化粧屋根裏に突上げ窓(別名「月見の窓」とも呼ばれているそうです)があります。

天井は二分され、床前から点前座にかけて平天井、躙口寄りの東側が化粧屋根裏の掛込天井(斜め)です。躙口の横の上下窓は連子窓の上に横に長い下地窓を重ねており、これは遠州の好んだ手法です。

茶道口、給仕口、床が一列に並ぶのもこの茶室の特色です。給仕口は茶道口よりも背の低い火燈口で、どちらも太鼓襖が張られています。

床柱は赤松皮付で相手柱はくぬぎ皮付、床框は漆の黒塗り。床天井は7尺2寸5分(約2.2m)と茶室としては極めて高く、これは貴族的な作意が込められています。

以上のように、貴族好みの雅な雰囲気の中に、織部や遠州の手法を取り入れ統合され、調和のとれた美しい茶室です。

この草庵風の茶室は今も現存し、重要文化財に指定されています。

(国宝・重文の茶室をまとめています↓)

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