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No. 10. 努力と苦労を分けること(グレッグ・マキューン「エフォートレス思考」)

「大学院生になったんだから今まで以上にたくさん実験をするぞ!」そんな思いでせっせか実験をしていた。実験をする毎日。しかし考えてみれば私は実験をするために大学院に進学したのではなかった。発見をするために大学院に進学したのだ。

「どのように」やるかを極める

 本書は「エッセンシャル思考」の著者グレッグ・マキューンの著作第二弾。本書曰くエッセンシャル思考は「何を」やるのかについての思考なのに対しエフォートレス思考は「どのように」やるかを極める技術とのこと。実験で例えるなら、“こんな実験をしよう“と考えるのがエッセンシャル思考、実験の手順を考えるのがエフォートレス思考だ。
本書ではそのエフォートレス思考を精神、行動、しくみ化の3つに分けて解説している。

エフォートレスな精神は”今”にある

エフォートレスな精神は、心身の重荷がなく、頭がすっきりした状態だ。余計な考えにとらわれず、今この瞬間に集中できる。

グレッグ・マキューン,「エフォートレス思考」, p.42 かんき出版

 まず、エフォートレスな精神を手に入れるにあたって私たちが抜本的に変えなければならないことがある。それは“努力は美徳”という考えだ。私にもある。だって“長年の研究の末、ついに大発見をしました!”なんてカッコいいじゃないですか。しかしここで約400字前のように “たくさん実験するぞ!”と考えるのは本末転倒だ。私するべきことは実験ではない、発見だ。実験はそのための手段に過ぎない。だから別に長時間実験をする必要はない、発見さえできるなら実験時間なんて短いほうがいい。エフォートレスな精神はそこからスタートする。ではエフォートレスな精神を手に入れるための方法とは。本書では方法の1つとして“頭の中の不要物を手放す”ことを挙げている。

足りないものに目を向けると、今あるものが見えなくなる。

同 p. 82


ワンピースで似たようなセリフがあったような気がするがこの考えは重要だ。なぜなら人間の脳はネガティブな感情を優先してしまう傾向があるからだ。なすがままに感情に身を委ねると思考はあっという間にネガティブになり今に集中することは難しくなる。だから今自分が持っているものを意識的に見つめることでエフォートレスな精神が手に入るという。

エフォートレスな行動も小さな一歩から

エフォートレスな行動を身に付ければ、より少ない努力で、余裕の成果が出せるようになる。

同 p. 135

心構えは準備万端。では実際に行動に移していく。エフォートレスな行動で重要なポイントは“明確なゴールに向かって極限まで小さな1歩を踏み出す”ことだ。
 まずは明確なゴールをイメージすること。映像を思い浮かべるといいらしい。たとえば単に“論文を出す”というゴールを“有名雑誌に自分の論文が掲載され、該当ページを開いている自分”という具体的なイメージを作る。次に1歩をとことん小さくする。大きな目標にむかってどんどん進みたいのはやまやまだが一歩が大きすぎて進めないのでは元も子もない。だからどんどん行動を小さくしていく。実験だったらなんだろう、先行研究を調べる、ちょっと大きい。論文を1報読む。英語だし読むのが億劫、まだ大きい。論文を検索する、これくらい小さくするのはどうだろう。なんなら検索ワードを考えるくらい小さくても良いかもしれない。千里の道も一歩から、とにかく一歩を踏み出すことが重要だ。

エフォートレスな行動だけでも成果は出せるが、それは直線的な成果にすぎない。その上にエフォートレスのしくみを設計すれば、レバレッジを聞かせて、利息が積み重なるように成果を増やすことが可能になる。

同 p. 198

”読書”でエフォートレスをしくみ化 

 最後に、エフォートレスを仕組み化することでとことん少ない努力で成果を手に入れる。本書ではその方法の1つとして“読書”を強く薦めている

読書は、この世でもっともレバレッジの高い活動だ

同 p. 215

 テスラ社の社長イーロン・マスクは知識を木にたとえた。枝葉といった細かい知識を覚える前に幹や大きな枝といった土台となる原理を理解することが重要だと。自分に置き換えると痛いほどよく分かる。とにかく論文を読まなければと論文を読んでも一向に進まない。しかし教科書で軽く勉強するとすんなり読み進めることができる。そして一度論文を読むことができればあとは似たような形式なので他の論文も簡単に読める。こうして努力を効率化していくのだ。

努力は成功に必要不可欠だ。しかしわざわざ苦労することはない。努力と苦労を分けること、簡単なようで意外と難しいこの思考がエフォートレス思考への第一歩なのかもしれない。

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