祇条錯(saku_shijo)

本の感想や気づいたこと、日常や創作など思いつくことをつれづれなく書いています。 もしよ…

祇条錯(saku_shijo)

本の感想や気づいたこと、日常や創作など思いつくことをつれづれなく書いています。 もしよろしければ記事を一つでも読んでいただけると励みになります。 よろしくお願いします。

マガジン

  • どくしょかんそうぶん

  • 小説

    今まで書いた小説のまとめです。 数分で読める短編が大半なので1つでも読んでくれたら、あわよくばスキorコメントくれたら嬉しいです。

  • 「メモの魔力」自己分析1000問全部解く

    前田裕二さん「メモの魔力」の付録として収録されている自己分析1000問を全部解きます。 かなりプライベートなことを書くため有料記事にしました、ご了承ください。 購入していただける方がいましたら週に3本は必ず更新します。 それまでは最低でも週1本で進めていく予定です。

  • 文鳥文庫全部読む

    無印良品で見つけた名作短編集「文鳥文庫」を全部読みます。

  • 145日もあれば無知無知な理系大学生でも共通テスト世界史8割

    大学で化学を専攻している大学生が、2022年の共通テストの世界史8割を目指してあれやこれややってみるマガジンです。今まで読んだ本の知識や、塾講師の経験を生かした内容となっています。

最近の記事

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「引用」の魅力を伝えたい

 「月が綺麗ですね」これは日本でおそらく最も有名な告白の隠語です。元ネタを探してみるとどうやら作家の夏目漱石が英語の教師をしていたときに”I love you.” を「我君ヲ愛ス」と訳した学生に対し「日本人はそんなこと言わない」とかなんとかいって示した訳文が「月が綺麗ですね」の由来になったんだとか(諸説あり)。つまりこの言葉は夏目漱石の訳を引用したものだったんです。  引用、難しい本やきちんとした文章で多用されるこのテクニック。日常生活で使うことは少ないかもしれません。です

    • 美しき「わからない」を求めてーちいさな美術館の学芸員『学芸員しか知らない美術館が楽しくなる話』

       私は美術館が好きです。隣町の美術館の年間パスポートを持っていますし、近くに美術館があったら基本立ち寄ります。しかし時々考えるのです。 「どうして私は美術館に行くんだ?」  私は壊滅的に絵がヘタクソです。絵の知識もありません、モネとマネの違いは分かりませんし、キュビズムは名前がカッコいいから音を覚えているだけで意味は知りません。  もしかしたら答えを見つけられるかも、私は本書を手に取りました。結論から言うと、本書に先ほどの問いに対する答えはありませんでした。しかし、本書

      • あなたは私ではない。だから傷つき、救われる。朝井リョウ「ままならないから私とあなた」

         ときめくか、ときめかないか。そんな斬新な片づけ術で一躍有名になった近藤麻理恵『人生がときめく片づけの魔法』には次のような一文がある。  この本が発売されたのは2010年、それはインターネットの発達によってプライベートが蝕まれている時代の最中。ときめきを基準とした片づけ術は自分の部屋を聖域とする防御術だったのかもしれない。  それから14年が経過した2024年、プライベートの侵食はついに私の内部にまで到達した。朝井リョウ『ままならないから私とあなた』はそんな侵食の時代を生

        • 破壊と創造、この孤独に繋がりがある 岡本太郎『孤独がきみを強くする』

          「芸術は爆発だ」、”太陽の塔”といえばこの人だろう。芸術家 岡本太郎、名前は聞いたことがある、しかしその生きざまに触れる機会は現代に生きる私達にはほとんどない。  本書はフランス滞在と太平洋戦争を経験した氏の孤独観を写した1冊である。氏の孤独とは徹底的に闘うことだった。 孤独、破壊、創造まず、岡本太郎の“孤独”を正確に定義しなければならない。 孤独者とは一人ぼっちで社会から孤立している人間を指すのではない、他者から傷つけられながらも戦い続ける人間を指すのだ。  そしてこ

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        記事

          作為性は小説の質を落とすのかー乗代雄介『それは誠』から考えるー

           芥川賞の受賞作発表後におこなわれた講評よると、乗代雄介『それは誠』は2番目に高い評価だったがすべて作者の脳内で作られたまとまりのよさを指摘した委員がいたとの理由で落選となりました。乗代雄介さんは今回を含め芥川賞の候補に選ばれた4回すべてにおいて先のような評価を受けています。はたして作為性、すなわち“頭の中でつくった感じ”は小説の質を落とすのでしょうか。 なぜ『それは誠』に作為性を感じるのか 原因は大きく、時刻表トリックを用いた構造と登場人物の性格にあると思います。まず前者

          作為性は小説の質を落とすのかー乗代雄介『それは誠』から考えるー

          “雪那”、“せつな”、”ゆき”、そして…児玉雨子『##NAME##』

           第169回芥川賞の選考会が開かれ、私が受賞を予想した児玉雨子さん『##NAME##』は落選となってしまいました。悔しいので感想文を書きます。 あらすじ  雪那は中学受験を控えながらもジュニアアイドル“せつな”として活動している。しかし人気はイマイチ。一方、友人の美砂乃はジュニアアイドルとして活躍の一途を辿っていた。そんな美砂乃は雪那を”ゆき”と呼び、自分の名前を”みさ”と呼んでほしいと言う。  「変態」とバカにされ中学時代、雪那の趣味は夢小説を読むことだった。入力を求め

          “雪那”、“せつな”、”ゆき”、そして…児玉雨子『##NAME##』

          もうこんな文章いやや~! 来世は文豪のイケメン文章にしてくださ~い!

          私は決意しました。今日からダイエットを始めます。肉体的なダイエットは既に実行中です。言葉のダイエットです。今までは画面を文字で染め上げること自体が目的になっていました。これではいけません。書きたいだけ書いてブクブクに太った文章は読み手に不快感を与えてしまいます。 就職活動の面接において大切なことは、結論を先に答える、あとは話し過ぎないことだそうです。これら2点を守った文章とはすなわち、骨格がガッチリとしていて贅肉のない文章、いわばイケメンの文章です。僕はイケメンになりたい。

          もうこんな文章いやや~! 来世は文豪のイケメン文章にしてくださ~い!

          No. 10. 努力と苦労を分けること(グレッグ・マキューン「エフォートレス思考」)

          「大学院生になったんだから今まで以上にたくさん実験をするぞ!」そんな思いでせっせか実験をしていた。実験をする毎日。しかし考えてみれば私は実験をするために大学院に進学したのではなかった。発見をするために大学院に進学したのだ。 「どのように」やるかを極める 本書は「エッセンシャル思考」の著者グレッグ・マキューンの著作第二弾。本書曰くエッセンシャル思考は「何を」やるのかについての思考なのに対しエフォートレス思考は「どのように」やるかを極める技術とのこと。実験で例えるなら、“こんな

          No. 10. 努力と苦労を分けること(グレッグ・マキューン「エフォートレス思考」)

          No. 9. 難しい言葉も使えば分かるし役に立つ(齋藤孝「世界の見方が変わる50の概念」)

          突然ですが次の11ケタの数字、暗記できますか? 14916253649 かなり厳しいと思います。どうやら人間の短期記憶では7ケタ程度の数を覚えるのがやっとみたいです。でも、こう眺めてみてはどうでしょうか。 1 4 9 16 25 36 49 実はこの数字、2乗の数を並べて書いただけです。一見乱雑に見えることでもルールさえ掴むことができれば、案外簡単に見えたりするものです。 難しい”概念”を4ページに 本書は具体的な物事に共通する“概念”を紹介したものです。ですから概念は抽象

          No. 9. 難しい言葉も使えば分かるし役に立つ(齋藤孝「世界の見方が変わる50の概念」)

          No. 8. 仕組みが分かる、世界が変わる(小高知宏「機械学習をめぐる冒険」)

           2022年2月18日、文学賞「星新一賞」で初めてAIを使って執筆した小説が入選を果たしました。星新一といえば言わずと知れたショートショートの神様。そんな星新一の名を冠した文学賞でAIが書いた小説が入選というのはまさに星新一のショートショートのようです。 まずタイトルが好き 本書はそんな機械学習について誰でも分かりやすく全体図を知ることができる1冊です。余談ですがタイトルはおそらく村上春樹の小説「羊をめぐる冒険」のオマージュ。また、本書には電気羊というキャラクターが登場しま

          No. 8. 仕組みが分かる、世界が変わる(小高知宏「機械学習をめぐる冒険」)

          5月のある雨降る昼間に100パーセントの割り込みに出会うことについて

          こう考えれば、毎日はきっと面白くなる。 ***  五月のある雨降る昼間、ドン・キホーテのレジ前で僕は100パーセントの割り込みとすれ違う。正直言って腹立たしいことこの上ない。人目をはばからず文句をいう度胸があるわけでもない。だからといっておおらかに見過ごすことができるわけでもない。    突然、目の前からおばあちゃん、母、息子、娘と一緒にお店の店員さんが僕の並ぶレジの前に大量のお寿司を置いた。サーモンだけのパック。豪華絢爛たるネタが敷き詰められたパック、大量だ。“山のよう

          5月のある雨降る昼間に100パーセントの割り込みに出会うことについて

          右から読めば論語、左から読めばワンピース(No. 7. 箕輪厚介「死ぬこと以外かすり傷」)

           私が大学2年のとき祖父が言った「公務員は安定だ。せっかく大学行ったのなら公務員になれ」。同じ年、キレキレのビジネス書を読んだ。本の名前は避けておくがそこにはこんなことが書いてあった。「今の時代、公務員ほど不安定な職業はない」。どっちの言い分もなんとなく理解できる。さあ困った困った、いったい何を信じればいいのか。 ・・・ あ、自分か。 真似のできないビジネス書に意味はあるのか?  筆者の箕輪厚介は幻冬舎の編集者。彼が編集した本には堀江貴文の「他動力」などがある。本書ではそん

          右から読めば論語、左から読めばワンピース(No. 7. 箕輪厚介「死ぬこと以外かすり傷」)

          No. 6. 太陽に向けてナイフを投げよ(田中秦延「会って、話すこと」)

           漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の単行本59巻「テレビでこんにちは! の巻」というお話をご存じだろうか。同話では主人公の両津勘吉がカメラ付きのテレビと電話回線を利用した“リモート同窓会”を実施する。まさに現代でいう“リモート飲み会”である。同エピソードが掲載されたのは1988年、当時の読者は滑稽な“ネタ”として読んでいただろうがおよそ30年後、そのネタはネタみたいなウイルスによって現実になる。そんな時代においては当たり前がネタになる。たとえば“面と向かって話し合う”とい

          No. 6. 太陽に向けてナイフを投げよ(田中秦延「会って、話すこと」)

          小説「星にカメラと細めのロープ」(短編集「さよならをポケットに」第2編)

          午前2時の北海道は静寂に満たされている。冷蔵庫に眠る瓶牛乳みたいに。  広さ6畳のアパートの2階、男は真っ暗な部屋を眺めている。はじめはただ黒で塗りつぶされた部屋も10分、10分経つと次第に瞳孔は開いて、確保できる光の量は増え、部屋の輪郭をつかみ取る。男はただぼんやりと、ただぼんやりとした本棚の前に座る。    大学1年に買った有機化学の教科書、かっこいいからという理由で手を出したけど結局50ページも読まなかった量子化学の教科書。去年買った粉体工学の本もある。内容には多少興

          小説「星にカメラと細めのロープ」(短編集「さよならをポケットに」第2編)

          No. 5. 朝、目をさますときの気持ちは、面白い(太宰治「女生徒」)

           ビジネス書を読んでいると、朝の素晴らしさを得々と語るページをよく見かける。「朝の1時間は夜の○○時間に匹敵する」ひどいものだと「朝の過ごし方が人生を決める」なんていうのもあった。一方で私の友達は「朝は眠くて仕方がない。ずっと寝てたい」なんて言っている。 さあ、あなたはどうか。 朝、目をさますときの気持ちは、面白い  太宰治「女生徒」は次のような書き出しで始まる。   朝、目をさますときの気持ちは、面白い。(中略)箱をあけると、その中に、また小さい箱があって、その小さい

          No. 5. 朝、目をさますときの気持ちは、面白い(太宰治「女生徒」)

          No. 4. 推して、学んで、楽しんで(劇団雌猫監修「世界が広がる 推し活英語」)

           大学3年のとき、3か月間オンライン英会話に通っていた。先生はフィリピン出身の女性だったのだが、どうもウマが合わなかった。問題に間違えると「どうして分からないのか」とキレてくる。分からないからレッスンを受けているのに。気の長い私は訳を調べて後日英語でキレ返した。  お金を払って英語で喧嘩をし続けるというのはよく分からない話だが、3か月たってみると、不思議なことに日常会話程度ならなんとか話せるようになっていたのだ。おそらく、心を込めて話したフレーズは心に残るということだろう。

          No. 4. 推して、学んで、楽しんで(劇団雌猫監修「世界が広がる 推し活英語」)