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“ピダハン「言語本能」を超える文化と世界観” 第5章編
今日のおすすめは!
D・L・エヴェレット “ピダハン 「言語本能」を超える文化と世界観”
屋代通子訳
*本との出逢い
堀元見さんと水野太貴さんのYouTubeチャンネル”ゆる言語ラジオ”で話題となったこちらの1冊。
イビピーオってなんだろう、水野さんが語らなかった箇所について自ら読みたいという想いで手に取りました。
学びがあった記述やピダハンの情報などを、これから各章毎に分けて読書記録を残そうと思います。
ゆる言語ラジオリスナー(ゆるげんがー?用例?)に楽しんで頂けたらと思います。
それでは第5章からどうぞ!
*第5章
〈ピダハンの家〉
・ピダハンの村は複数あり、ブラジルのマイシ川流域、南緯6度25分から7度10分の一帯を占領している。
・ピダハンは村にいる時は、殆どの時間を自分の小屋で過ごす。
しかし、”ジャガーが豚がいると思って食べにくる”からいびきはかかない。
・昼も夜もよくうたた寝をする。
短い時で15分、長い時で2時間。
・ピダハンの生活に水は欠かせないため、村は出来るだけ川近くに作られる。
・ピダハンにはプライバシーを保つが必要ない。
セックスや排泄、他の理由で人目を避けたい時はジャングルに紛れたり、カヌーで村を離れる。
・家は雨風や太陽を適度に遮断して寝るれる場所、飼い犬を繋いだり、少しの所有物を置ける場所であれば充分。ヤシの葉は雨の音を吸収してくれる。
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☆2種類のピダハンの小屋
1.カイーイ=イイー(娘のもの)
→丈夫な小屋
・少し強めの嵐なら耐えられる。
・腐りにくいカリカラという木で作った3本の柱を3列に並べた四角形で、真ん中の列の柱は屋根の傾斜をつける為に高くなっている。
・屋根にする葉は、ピダハンからアビーイシと呼ばれる3mもあるヤシの黄色い若葉。数年毎に葺き替える。
・雨季になると川に沿って、列をなした家を作る。
10歩〜50歩離れた家もあれば、近しい親戚同士だと川を挟んで向かい合って立てる家もある。
・雨季の村は年老いた夫婦と成人した息子や娘達、その配偶者や子供だけで構成される。
2.アイタイーイ=イイー(ヤシのもの)
→簡単な小屋
・杭で幅の広い葉の屋根を支えただけ。
・葉はどんな植物でも良いが大抵はヤシの葉。
・子供の浜辺の日除けに使用。
大人は平気で砂上に寝転んだり、1日中座っていられる。
・強風ですぐひっくり返る。
・乾季になると柔らかい白砂の巨大な岸辺が出現すると、村全体が1番広い河川敷に移動し、アイタイーイ=イイーを作る。
1ヶ所に50人〜100人が集まる。
〈ピダハンの加工品〉
・ピダハンの物質文化は世に知られている中でも最も簡素な部類に入る。
・道具を殆ど作らない。材料や技術を工夫して長く持つような物は作らず、必要な時に2-3回使用して壊れる使い捨ての物を作る。
・各家庭にはアルミの鍋が1〜2つ、
スプーン、ナイフ2丁、外の世界の小物少し、伝来の綿紡ぎのみ。
・物を加工しない。
・芸術品はほぼ皆無。
☆ネックレス
・毎日のように見ている悪霊を避ける為と、飾りの為に女や赤ん坊は男女問わず明るい色のネックレスをする。
手で紡いだ綿糸と種で作ったネックレスに、歯、羽、ビーズ、缶ビールのプルトップなどで装飾を施していく。
飾り付けの均整は取れておらず、作り方もぞんざいでお粗末な代物。
ネックレスがよく目立って悪霊が不意を突かずに済むから。
野生動物と同じで悪霊も不意を疲れた時に攻撃してくると考えている。
☆カヌー
・ピダハンは樹皮でカガホーイーというカヌーを作れるが、村に数が足りていないのに滅多に作る事はない。
大抵はブラジル製の丸太舟やカヌーを盗むか買ってくるのだが、自分達で作ろうとしない。
造り方を知っている近所の人に1週間村に来てもらい教えてもらい完成したが、その後もピダハンは”ピダハンはカヌーを作らない”と言って自ら作る事はしなかった。
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☆耕作道具
・畑を耕す為の貴重な外国製の道具を子どもは川に投げ込んだり、大人は畑に置きっぱなしにする、外からの交易商人が来ると道具をマニオク粉と交換してしまう。
・ピダハンが外の世界の商品を手に入れるにはジャングルの産品を拾い集めて物々交換するしかない。
しかし、交易商人にとって、マイシ川の上流まできてまで、買いたいジャングルの商品はない為、外の道具はとても貴重。
〈ピダハンの食生活〉
・ピダハンは肉を保存するためには、塩漬けしたり燻製する事を知っているが、ブラジル人に会いそうな場所に出かける時のみ実行し、自分達のために加工する事はしない。
獲物はすぐに食べ切ってしまう。
・ピダハンは空腹なのに狩りも漁もせず、鬼ごっこしたり、エヴェレットの手押し一輪車で遊んだり、寝そべっておしゃべりして過ごすことがある。備蓄もないのに、3日間食事をせず、ずっと踊り続けたりする。
・ピダハンの平均身長は男女共に150cm〜160cm。
体重45〜56kg程の痩せ型で、強靭な体格。
☆ピダハンの食べ物
・魚。
マニオク粉と混ぜてマイシ川の水を飲みながら食べる。
昼夜問わず漁に行く。
・バナナ
・野生動物
・幼虫、昆虫
・ブラジルナッツ
・電気ウナギ
・ウナギ
・カワウソ
・ワニ など
しかし、爬虫類と両生類は通常口にしない。
・ピダハンは漁や採集を労働とは捉えず、楽しい活動になっている。
・男の漁は1日4-6時間程度。女の収穫や採集は1週間に12 時間程度。
誰もが週15-20時間程度働いている。
〈ピダハンの埋葬〉
・誰かが死ぬと、腐り始めるのを避けるために決して放置せず、必ず埋葬する。
・死者は、その人の持ち物(10個程)
に囲まれた状態で座った姿勢で埋められたり、うつ伏せで埋葬される。
・滅多にないが、交易商人やエヴェレットが放置している板と釘があれば、西洋風の棺桶らしきものを作ろうとする。
・エヴェレットが目撃したのは1度だけで、幼い赤ん坊が、ブラジル商人がたまたまいる折に死んだ時のみ。
・穴に遺体が納め、故人の物を入れた後、木の枝が遺体を覆うように渡されて穴にしっかりと突き刺され、バナナの葉か、バナナの葉ように幅の広い葉で覆う。そして土をかける。
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・時々、ブラジル風の墓を模して十字架が立てられることもあり、墓碑銘を真似て何かしらの模様が彫られている。
・故人が大柄だった場合は、掘る分が少なくなる為、座位で埋葬される事が多い。
・亡くなった人は殆ど間をおかずに川の土手近くに埋められる。
・2年もすると墓は侵食されて流されてしまう。
・墓穴を掘るのは、大抵近い親戚の男達1〜2人。
・埋葬そのやり方は変化に富んでいてふたつと同じ埋葬を見たことがない。
・埋葬がその場に合わせてなされることと、すぐに腐り始める遺体を地面に放置する不都合を避ける合理的な解決策である事から、エヴェレットは埋葬は儀式でないと結論付けている。
〈ピダハンの性行為〉
・性と婚姻にも儀式は見当たらない。
・ピダハンは自分自身の性行為の詳細を語りたがらないが、時には一般論として性的なことを口にする。
・性行為を大いに楽しみ、自分の行為を遠回しに仄めかしたり、人の性生活をこだわりなく話題にしたりする。
・口唇性交を”犬のように舐める”と表現するが、犬になぞられえるのはその行為を貶めようとする意図ではなく、動物を、どのように生きるのが良いかの見本として考えている。
・性行為は”彼女/彼を食べた”と表現する。
・結婚している男女の場合は配偶者とジャングルに入っていき性行為する。
・結婚していないピダハンは気の赴くままジャングルに入り性行為する。
・婚姻は同棲する事で認知される。
・男女片方ないし両方が既婚者の場合は数日間村を離れて性行為する。
2人が村に戻ってきても一緒に居続けるようであれば離別し、新しい相手と結婚する。
・2人が一緒に居続けたいと思わなかった場合、浮気された方の伴侶は相手が戻ってくるのを許すかもしれないし、許さないかもしれない。
・駆け落ち組が戻ってきた後は表向きは浮気を取り沙汰されたり、文句が言われたりする事はない。
・駆け落ちされている数日間、伴侶に逃げられた当人達は相手を捜しまわり、嘆き悲しみ、誰かれ構わずに不満をぶつける。
〈ピダハンの踊り〉
・ピダハンの営みで最も儀式に近いのは踊り。
・村中の男女が入り乱れ、戯れ、笑い、楽しむ。
・楽器はなく、歌と手拍子、足拍子だけが伴奏。
・大抵満月の夜に催される。
・その間は結婚していない男女も、既婚者同士も、別の伴侶とも、かなり奔放に性交する。
・少し羽目を外したような性行為や、レイプのような深刻な性行為、暴力沙汰も起きる。
しかし暴力沙汰が黙認される事はない。
〈ピダハンの思考〉
・将来を気に病まないことが文化的な価値がある。
・未来を描くよりも現在の1日をあるがままに楽しむ傾向にある。
・ピダハンはどんなに役立つ知識でも外の世界の知識や習慣をやすやすと取り入れない。
・ピダハンが西欧文明と初めて接触した1714年からおよそ300年にわたる記録からは、ピダハンの文化がヨーロッパ人と接触した後殆どその姿を変えていないとクルト・エムエンダジュが論文に書いている。
・物を長持ちさせるなどせず、人の動きの方に物を合わせている。
最低限必要とされる以上のエネルギーを注いだりしない。
・ピダハンは空腹を自分を鍛える良い方法だと考える。
・ピダハンに儀式や口承伝承が見受けられないのは、経験の直接性を重んじる原則で説明できる。
*次回はゆる言語ラジオで驚愕したピダハンの子育てのお話。
赤ちゃんが包丁を振り回して落とした時、ピダハン母は拾い上げて持たせてあげます。
ゆる言語ラジオでは語られなかったエピソードもいくつかありましたので是非読んでみてください!
*次は第6章でお会いしましょう!