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韓日ウェブ漫画翻訳【設定集】は無償?有償?

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匿名メッセージサービス マシュマロへのお返事記事第2弾は、韓日ウェブ漫画翻訳における「設定集は無償か有償か」をお送りいたします。

結論から言いますと、私は無償で設定集を作成しています

かつては、版元かプラットフォーム側か、はたまた翻訳会社側から設定済み設定集が渡されていたんですよ。

基本的な登場人物の韓国語名と日本語名、年齢や特徴などがすでに設定済みで、そのとおりに翻訳作業を行っていました。(とはいえその当時も、新たに登場した登場人物の命名と設定集への追加は翻訳者のお仕事でした。)

そのためある日突然「これからは翻訳者さんが設定集の作成をお願いします」と言われた時は

え、それ、私の仕事ですか?


って、ぶっちゃけ思ってしまいました。

なので、お世話になっている翻訳会社さんの担当者さんが特別に最初だけ設定集手当てとして別途報酬をくれていたように記憶しています。

が、「設定集=翻訳者の仕事」という習慣が出来上がってしまってからは、私の取引先は「単価に設定集作成料も含ませていただきました」というスタンスに変わりましたね。(したがって実質無償ではなく有償説)

ただ~し


今となっては、設定を自分で作ることに更なるやりがいを感じ、むしろ「これからはまた版元が設定集を作成します!」と言われたら嫌かもしれません。

「これまでどおり、私に設定を作らせてください!」って言っちゃいそう。

なぜなら、

私が名付け親です。


作者じゃないのに自分で登場人物の名前を決められるって、すごくないですか?(ローカライズ翻訳に限りますが)

SNSなどで、読者の皆さんが私の名づけた名前でキャラクターを呼んでくれているの、とっても嬉しいです。

特に、アニメ化されて、私が名づけた名前がテレビの中で呼ばれているのを観た時は、感動しました。

より、作品への愛着を感じられるようになりました。

作品への理解が深まる。


「設定集を作る際は、大体10~20話くらいまで読み進めてください。」とお願いされることが多いですが、私は設定ミスをなくすために最新話or最終話まで読破してから設定集を作るようにしています。

ノベル(小説)が原作の作品なら、そのノベルも全巻買って

・登場人物の名前の由来
・固有名詞の意味など
・その後の展開、登場人物の関係性など

まで把握してから設定集を作っています。

「翻訳者は全員そこまですべき!」とは思いませんが、こうすることにより作品の展開を把握でき、翻訳作業で気をつけるべき点(伏線等)が明確になりますし、設定を慎重かつ間違いなく作ることによってのちに自分の首を絞めることがなくなります。

結果、翻訳クオリティーの大幅な向上に繋がるんです。

「翻訳クオリティー=単価」だというお話を前回しましたよね?

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作品はいいのにタイトルがダサいとディスられる。


とはいえ、こんなこともあります。笑

悲しい時~ 渾身のタイトルが滑った時~(そしてこれも滑る)

大抵3つくらいタイトル候補を提出するんですけどね。

最近じゃもっぱら選ばれないんですけどね。

昔はよく翻訳者の意見が取り入れられていました。

私が考えたタイトルで作品が親しまれていると、これもまた名付け親として鼻が高いわけです。

それと同時に、「タイトルはダサい」なんて言われたら作者様に申し訳なかったですね…。

候補の中からそのタイトルをピックした人との連帯責任ってことで…。

設定集、めっちゃ書き込んでます。


といった感じで、私は「翻訳者が設定集を作ること」について賛成派です。

恐ろしいくらい細かく情報を書き込んでいます。

作品によっては最初の10話で用語の数が500を超えたりするくらい書き込んでいます。

エキストラもちゃんと登場人物に加えてますし、各登場人物の口調まで細かく足していきますし、登場人物の登場回数は回想含めて話数もページ数も全部記録してあります。固有名詞以外も、漢字表記なのか平仮名表記なのかなどまで。

こうすることによって回想シーンをすぐに見つけられたり、久しぶりに出てきた登場人物の口調や呼称に悩まなかったり、万が一私に何かあった時にスムーズに別の翻訳者様に引き継げたり(まだそんな事態は起きたことありませんが)、結果自分を助けることになるんですよね。

それに、作品をチェックする方(PDさんや監修さん)もきっと助かると思います。一緒に働きやすい翻訳者だと思っていただけるかもしれません。

いかがですか?

設定集を自分で作るの、悪くないと思いませんか?


そう思えると、無償(単価・報酬に含まれている)でも納得できるかもしれません。

「タダ働きを受け入れろ」という話ではなく、どうせなら設定集を含め楽しく翻訳したほうがモチベーションもアップするんじゃないかなぁという私個人の意見です。

とはいえ、どうしても設定集を作成するのが負担になる単価でのお仕事なら、担当者様と相談されてみるといいかもしれません。

お返事になったかわかりませんが、以上とさせていただきます。

ご質問ありがとうございました!

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このマガジンは、韓日翻訳家のかぶりSakeが共同で執筆・運営しています。

かぶり@Hidemi_K
1997年より韓日翻訳に携わり、字幕やウェブ漫画翻訳など多方面で活動中。著書に「ドラマで読む韓国: なぜ主人公は復讐を遂げるのか 」(NHK出版新書)「韓国語ネイティブ単語集」(扶桑社)「ためぐち韓国語」(四方田犬彦共著、平凡社)、翻訳書に「グッドライフ」「クミョンに灯る愛」(ともに小学館)「ヒトは誰も真実恐怖症」「オトコとオンナのもやもやモード」(ともに講談社)などがある。

Sake@koalaeatsmaccas
2013年より韓日ウェブ漫画翻訳を始め、人気作の翻訳やウェブ漫画翻訳者の新人養成、監修、出版用ウェブ漫画の翻訳も手がける。これまでに訳した話数は1万話ほど。南半球で隠居中。

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