
【コラム】インドと某国の類似点(2024年4月1日)
『さかたのニュースまとめ』のコラムを執筆するにあたり、インドにスポットライトを当てている。
その理由として、インド海軍が存在感を示すニュースが報じられたことがある(ロイター通信)。
ご一読いただけると幸いである。
はじめに

中国は2013年に“一帯一路”構想を打ち出した。
陸路、そして海上航路を貿易ルートとし、貿易の活発化で経済成長に繋げるというものだ。
この記事では海上航路、とりわけインド周辺に注目している。
中国の戦略的外交
インドについて触れる前に、まずは一帯一路に関わる最近の中国の動きを本項で取り上げたい。
中国のインド周辺における軍事的な動向
中国軍の代表団は13日、二国間の防衛協力強化に向けたモルディブ、スリランカ、ネパールへの訪問を終えた。3カ国は、中国と緊張関係にあるインドが自国の影響圏と見なす地域で、代表団は4日から訪問していた。
(2024年3月14日)
中国とインドは国境の山岳に係争地帯を抱えており、2022年には両軍による武力衝突が起こった(BBC)。
ネパールは中国とインドの間に位置し両国の緩衝地帯となるため、中国のネパールを取り込みたいという思惑は明らかだ。
モルディブとスリランカに関しては後述するが、一帯一路の海上航路における戦略上、重要な役割を果たす国である。
こちらも中国の思惑は覆い難い。
中国、スリランカ港湾へ触手を伸ばす
習主席は「中国は、スリランカと共に、『独立自強、団結互助』という『コメ・ゴム協定』の精神を引き続き発揚し、中国とスリランカの戦略的協力パートナーシップをたえず深化させていきたい」と述べました。
(中略)
グナワルダナ首相は「スリランカは、中国が困難な時にいつも適時に援助の手を差し伸べてくれたことを決して忘れない。コロンボ港湾都市とハンバントタ地区の総合開発などのプロジェクトはスリランカの経済と社会の発展を大きく押し上げた。スリランカは中国と共に『一帯一路』共同建設を引き続き推進し、経済と貿易、教育、観光、貧困削減などの分野で協力を広げ、アジア運命共同体と人類運命共同体の構築を推進していくことを望む」と強調しました。
(2024年3月27日)
スリランカはインドの目と鼻の先にある島国であり、一帯一路の海上航路ではハブ港の役割を果たす。
同国についても後述するが、重要な役割を果たす国となっている。
インドの地理的条件
中国の一帯一路に関する動きを確認したところで、主題であるインドの話に移ろう。
本項ではインドの地理的条件を軸に、一帯一路との関係性やさらには地政学的視点で掘り下げていく。
インドと一帯一路
もう一度、一帯一路の貿易ルートを見てみよう。

インドという国は逆三角状にインド洋に大きく張り出している。
一帯一路の海上航路に対し、鋭い刃を突きつけるような、楔を打つ様にも見れるだろう。
それは見た目上だけではなく、インドの取る位置は中国にとっては排除したい、あるいは抑え込みたい脅威である。
インドと中国の2国間関係は国境を巡る争いだけではなく、インド洋の制海権を争う可能性も孕んでいるとも言えるのである。
インドの置かれる状況
インド洋を巡るインドと中国を俯瞰することで、前半で取り上げた2カ国の重要性に気づくことだろう。
まずはインドとスリランカ、モルディブの位置関係を見てみよう。

前述のとおり、一帯一路の海上航路に楔を打つかの様なインドであるが、それを封じ込めるかの如くスリランカとモルディブ諸島がインド洋に浮かんでいる。
これらの島々が中国の軍事拠点となった場合どうだろうか。
当然、インドは海軍を用いて制海することが困難になる。
そして、スリランカとモルディブの存在がインドに与える影響は、次項に示すとおり歴史が物語っている。
ヨーロッパの某国を想起
大西洋と地中海の貿易ルートに対し、突き出すように存在感を示している国がイタリアである。

一見すると貿易ルートを支配下に置いており、地理的条件で優位だと考えることができる。
しかし、イタリアの東に位置するコルシカ島(コルス島)は複雑な経緯を辿り、現在もフランス領となっている。
さらにシチリア島の南に位置するマルタ島、こちらも他国による統治や占領を受け、現在はマルタ共和国として独立を果たしている。
これら2島は古代・中世より様々な変遷があり、イタリアの海洋進出を妨げてきた。
イタリアは“一等地”に位置しながらも、海上での覇権を握ることはできなかった。
このイタリアの例は、現在のインドに対しても適用できる条件ではないだろうか。
【考察】インドの海洋進出
18世紀、イギリスはスペイン(イベリア半島)南東端に突き出したジブラルタルを海外領土とした。
(下図がイベリア半島・・・西に大西洋、東に地中海)

現代においてもジブラルタル海峡を通る貿易ルートを抑えるイギリスの戦略的要衝となっている。
この先インドがイタリアのような現状に甘んじるのか、スリランカやモルディブを従えインド洋におけるジブラルタルと成るのかによって、中国の“一帯一路”構想の行く末を左右することになるだろう。
それは同時にインド洋の制海権をどの国が握るかという、シーパワーの争いになるのである。
以上の考察をもって締め括ることとしたい。
参考文献(推薦図書)
マハン海上権力史論 - アルフレッド・T・マハン(著),北村謙一(翻訳)
謝辞
この記事を公開するにあたり、見出し画像を共有くださっているZenpaku様に感謝申し上げたい。
©️さかた拓郎