ブランコ
夢の中で、ブランコを漕いでた。赤いブランコ。公園で、ひとり。
誰かと遊んでるとか、迎えにくる親を待っているとか、そういうんではなくただ、ひとりでブランコ漕いで遊んでた。
時計の振り子よろしく、ぎいこぎいこぎいこ。
風を切って、世界を揺らして、前に後ろに、行ったり来たり。
時々、つま先で足元の土を削ってみる。
勢いよくスピードを失って慣性の法則でグイと、体が前の方につんのめる。
それでも、すぐには止まらなくて。サンダルの隙間から砂が入ってきてほんのちょっとだけ後悔する。そしてまた、すぐに漕ぎ出す。
赤いブランコ、ぎいこぎいこぎいこ。
ひとりで遊ぶ、ぎいこぎいこぎいこ。
前にも、後ろにも、これ以上は進めない。
冷たい風がブランコの金具を冷やして、握ったところから熱を奪っていく。悴む指先も気にしない。冷や汗でぬかるむ手のひらを、一層強く握りしめる。前に、後ろに、進め、進むな。
てっぺんにある鉄の棒と並行ぐらいまでいけるんじゃないか。
でもそこまでいったら流石に怖いか。
なんてどこかぼんやり考えている。
そんで、ふと、思い出す。
あ、いまここ、夢の中じゃん。
時計の振り子が振り切れた。
その瞬間、
私はぱっと、手を離した。
赤いブランコ、きいきいきい。
放課後のチャイムが、遠くの方から聞こえてきた。
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