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霧島はるか
2024年6月28日 17:29
ちょうどいい悪夢を人は好むから私は自分の体を小分けにして売ることにした今日は親指一本今日は太ももを一切れ今日は舌を一つ今日は乳首を一つ明日のお客さんには耳を一つあげようか小さく小さく切り分けた私をみんなは嬉しそうに食べてくれたある日私の体全部がほしいって人がきた綺麗なお姉さんだった私は喜んで全てを差し出したお姉さんはゆっくり私を食べた足の親指をかじったと思ったら太
2021年4月21日 20:26
きっと誰でもいいのだろう嘔吐しきれなかった憂鬱を一緒に噛みしめてくれるのならきっと誰でもいいのだろう優しく溢れる陰鬱を一緒に舐めあってくれるのなら苦し紛れで歩みを続けて鋭く虚栄をまき散らすさすような冷雨に似た黒髪永久凍土のなれの果て君と僕は同じだねなんて言ったら怒るかなどこ吹く風で歩みを続けて漂う虚構に身を任せる酔ったまなこで見つめる街はいつか観た35ミリの淡い夢
2022年9月3日 16:44
ガラス玉みたいな君の瞳をえぐりだして飲みこんだ冷たくなってく首筋を冷たい両手で絞め続けた終わらない終わらない吐き気がするくらいにうるさかった蝉の声にみたされた帰り道もう一度あの日からやり直せるかな深夜2時の憂鬱を目をつむってやり過ごそう変わらない教室の黒板に残る君の文字柔らかな思い出を柔らかな舌でころがしたなくならないなくならない息苦しいくらいにうるさかった
2022年8月14日 20:27
子供のころに戻ったみたいなんだいい思い出なんてないはずなのに花火の煙とシロップと柔軟剤とシャンプーと汗にぬれた後れ毛と子供のころに戻ったみたいなんだいい思い出なんてないはずなのに君が子供のうちに殺しておくべきだったかな殺して食べちゃえばよかったかな私の手を引く後ろ姿は変わらないはずなのにねおいてかないでって泣くのはみっともないからせめて後ろで束ねたその髪に触れてるくらいは
2022年5月25日 22:25
錯雑としたおもちゃ箱をひっくり返したような町並みを抜け、砂浜に出た。乳白色の月明かりが照らすのっぺりとした海面。緩やかな波が慎ましく白浜を濡らす。高密度のかき氷みたいな砂の上を歩くたび、ぎゅっ、ぎゅっと音がした。侘しさすら感じなくなった僕は、海と浜の境界をおぼつかない足取りで進む。遠くにぼんやりとうかぶ小さな漁港は心許ない灯りのもと、ぽっかりとあけた口を静かな海に向けていた。随分まえに通り過ぎた居
2022年5月29日 23:01
糜爛したきみの眼球がとけだしたとき、僕はようやく雨の美しさを知った。幾層にもかさねた肉厚の絵の具のように凝った赤黒い血を爪で削り取りながら、窓を打つ驟雨のリズムに目をつむる。放恣な生活を送り続けた僕を、明るい笑顔で見守り続けたきみのその嘘に、気づいていないわけじゃなかったよ。けど僕は怖かった。きみが向けてくれた純然たる愛に正面切って向き合うのが怖かったんだ。それは僕が今まで一度も触れたことも、向け
2022年5月23日 20:04
海辺を逍遥している時だった。久しぶりに匂いを感じた。日焼け止めと、乾いた塩の香り。それが嬉しくて、十一個目のピアスを外して飲み下した。月のない星空。真っ暗な砂浜。数メートル先にぼんやりと佇む影を見た。K君の幽霊だと思った。月世界に行ってしまったK君を想い、もう少しでコンバースに触れる距離にうち寄せる波に一歩足を踏み入れた。海は海であることを強要されていた。私であろうとしたゆえに味わった苦しみを思い
2022年6月3日 18:36
朝まだきの往還は、奥ゆかしい静けさに包まれていた。しとどなアスファルトから立ち込める独特の香りが鼻腔をくすぐる。浅春の冷たい風が前髪をゆらすたびにおでこに感じるくすぐったさになんとも言えない切なさを覚えた。肺腑にたまったどうしようもない侘しさも、この穏やかな静寂にひたされるうちに溶解していくようだった。と、後ろから荒々しく風を切る車の音が聞こえてきた。すっかり現実に引き戻されてしまった私は憮然と背
2021年5月1日 12:25
その張りつめた君の魅力がどこから来たのか知ってるよたらふく飲みすぎた泥水は飽和点なんかとっくにこえて君のバランスを崩すわけだけどぷっつり糸が切れる前の最期の痙攣が伝わって背筋を伝う憎悪の甘みと奈落の吐息で身罷る快感舌でころがし脳汁すすって同族嫌悪でしめつける裏腹の優しさと滑らかな憎しみを今日も非生産的に抱きしめようかかじりとった憐れみの果汁がしたたり鎖骨を濡らすぬ
2021年5月25日 22:29
ここに来て得たのは退屈だった認めたくはないけれどきっと張り合いがなくなったんだ今の僕は死んでいる殺される直前ほど生きたいって思うのはやっぱり当たり前のことみたいで甘い香りが一面漂うマシュマロみたいなこの町は僕の気力を奪うだけ排水溝に飛び込めばいい淵めがけて飛び込めばいいでも今の僕には願うだけで何もできやしない最低限の興味すらも最低限の気力すらもマシュマロみたいな
2021年5月26日 22:58
羅刹になりきり不幸を喰らうどうせ有限その他大勢はき違えの個性で優劣つけようと無我夢中で貪り尽くし嚥下し消化し血肉にし覚悟もないのに踏み入れたぬかるみ冷たく腐臭を放ち気づいた時には空まで覆った汚泥の天井光は届かず目隠しされた百鬼夜行が本能のままに踊り狂う求め続けた退廃と広げられた空洞で羅刹になりきり不幸を喰らう見知らぬ苦悩は羨望し馴染んだ苦悩は忌み嫌う羅刹になりき
2022年4月4日 02:07
散り散りにはじけた私を集めて君の体を作ってみたよ足の長さがずれちゃったけど意外とうまく笑えたよお腹の中が空っぽで困ってるんだ臓器はさすがに腐っちゃってお腹に戻す気になれなくて君の可愛がってたみーちゃんを代わりに入れてみたんだけど爪とぎしないと気がすまないみたいでそのたびお腹のつなぎ目がほつれて破れて困ってます右の手首に大きな瞳左の手首はまっさらでやっぱりかわいそうに
2021年5月6日 19:35
傷口から溢れる優しさを必死で舐めとろうとした君と傷口から溢れる優しさに必死で夢を見出そうとした僕は世界の隅っこの湿気だらけの部屋の中お互いの憂愁を天秤にかけ危うい綱渡りに身をやつした背負った重みの優劣を比べる必要はなかったけれど脆くて頼りない砂の城をなんとか守りぬけたのは比べて蔑み同情し絡んでもつれてこじらせて憤怒と慈愛と嫌悪なんかをないまぜにした強固な城壁を築くこと
2021年6月1日 20:49
壊れるあなたを見てみたいパンケーキみたいな甘い香りに包まれて小さな幸せを謙虚に永続させてパンケーキの油みたいにじわじわとあなたの脳に侵蝕するそれは脳のシワをいつのまにか溶かしちゃってあなたは惰性の幸福をそれとしらずに食み続けるんだだからあなたに壊れてほしい何十年もどんよりと輝き続けるよりも一日だけ目も眩むほどの輝きを蛍の光が綺麗なのってきっとそういうことなんじゃないかなあ