ノンフィクションが放つ熱量について
二日連続で、着ていた服が裏返しでした。まさか。
こんにちは、嫁です。
以前話したノンフィクションを勝手にレコメンドする活動の第二回目です。
ノンフィクションは読み手を変える力がある、と私は思います。
ということで、そんな話です。ちなみに前回はこんな感じ。
◇◇◇
嫁 さあて、本棚の前に到着しました。
夫 遠かったですね、前回から一週間以上もかかってしまった。
嫁 まあまあ。それで、この間ノンフィクションとして選んだ本リストに入っていないものがあるんじゃないか、ということですが。まずはやっぱり『ヤノマミ』でしょう。これってノンフィクションだよね?
夫 『ヤノマミ』ね。『ヤノマミ』や『ピダハン』は民俗学だと思って。でも著者は学者ではないけど。『ピダハン』はまぁ言語学かな。
嫁 『ピダハン』は人文書だと思うけど、『ヤノマミ』って大宅壮一ノンフィクション賞とってるよ。私、大宅壮一ノンフィクション賞と開高健ノンフィクション賞と講談社ノンフィクション賞は信用してるから。
夫 賞レースに弱いのか。まあいいでしょう。じゃあノンフィクションということで。
嫁 あ、あとこれ、『トヨタ ル・マン24時間レース制覇までの4551日』。これはもう見る人が見たらタイトルだけで目頭がアツくなる感じですね。表紙もかっこいい。
夫 これな!!10年、とかじゃなくて日にちになってるところがずるいよね。三栄書房だから完全に好きな人向けだけどそれでいいんだ。著者もモータースポーツを専門にしているライターだし。そういえば、これはノンフィクションだと思う。開沼博の『漂白される社会』と『タキモトの世界』。
嫁 『漂白される社会』って読んだことないけど社会学だと思ってた。違うの?
夫 確かにさっきの『トヨタ』と違って社会学者が書いてるし、調査の手法は社会学だけど、対象はかなりジャーナリスティックだし、んー、これはノンフィクション的な読み方をした、かな。君はたぶん読んでないだろうけど、ちょっと目次だけでも見てみて。
嫁 はいよ。えーと…これは。すごいな。いやほんと書影にもあるけどこの帯だけで私はもう胸いっぱいというか。こういう本を見ると、著者はどんな心境で取材をしているんだろうか、つらくはないんだろうか、といらんことを考えてしまうのですよ。
夫 いやそこは一歩引いて客観的に見ないと。というか目次だけで満足すんなよ、中身はもっとすごいから。読みなよ。
嫁 ん、いつか読むよ。まあでも一つのケースを掘り下げて一冊書くよりは、読者としては細かくいろいろ知れた方がいいのかな、このジャンルは。なんていうの、「闇ジャンル」?
夫 「闇ジャンル」って、雑。
嫁 すいません、でも嫌いじゃないです。「ねほりんぱほりん」大好き!!
夫 はいはい。あとこれね、『タキモトの世界』。
嫁 うーん、内容はサブカルチャーって感じだけど、ノンフィクションという捉え方もあるのかな。評伝は言い過ぎ?
夫 評伝ってほどじゃないよ(笑)。そういえば、これを忘れていたよ。重要ですよ、我が家のノンフィクションでは。『光の教会 安藤忠雄の現場』と『磯崎新の都庁 戦後日本最大のコンペ』。前にも言ったけどすっごいおもしろいよ。
嫁 私が前に「築城とか建築の過程を書いた小説ないかなー」とか言ってたときに教えてくれた本だよね。まだ読めてはいないけど、建築の専門知識がなくても読めそうだし。なぜか文庫になってないけどね。長いからかな。
夫 まったくだ。資金難をどう乗り越えるかっていう問題とか自分の師であり大御所に挑むっていう状況とか今の時代でも受けそうだけどなあ。まあ、おもしろいのに埋まってしまった本はたくさんあるから仕方ないのかな。
嫁 ところで、というか今回の本題はここからなんですが、小説にはないノンフィクションのいいところって何ですかね。というのも、小説しか読まない人にフィクションを読んでもらうにはどうしたらいいかと思って。
夫 たしかにそういう人いるよね。「書店で働いてる」「読書が趣味」とか言うと、「おもしろい本教えて」って言われることがたまにあるんだけど、暗に小説を指してる、っていう。
嫁 小説は小説で、表現の幅があるし、世界に入り込めるのがいいところではあるんだけど。ほらファンタジーとかは小説じゃないとできないし。ただ、小説を読んでいて時々感じるのは、特にエンタメ系だと人物がどこか非現実的だったり、展開が出来すぎだったりとか、テーマが似てるとどうしてもパターン化してしまいがちだったりするところ。そこを突き抜けられるとベストセラーになったりするわけなんだけど。
夫 そうね。
嫁 んー、そうだな。そう考えると、ノンフィクションは小説よりも「普通」ってところかな。
夫 「ふつう」?
嫁 そう、普通。たとえば小説だと、特別な能力をもった人がいたり、それぞれ別の特性をもった人たちが集まってバランスが取れてたりすることが多いけど、そんな都合のいいことってなかなか起きないじゃない。基本的には、どこにでもいそうな普通の人が努力を積み重ねて何かを成し遂げる。これがノンフィクションの醍醐味。たとえば『しんがり 山一證券最後の12人』とか『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』とか。つい「自分だったらできるのか、どうするか」って考えてしまうし、そうすると余計にすごいって思う。
夫 なるほどね。でも『聖の青春』とかもいいじゃない。こういう特別な誰かの軌跡を書いたのもいいよね。
嫁 そうだね、『聖の青春』は本当にいいよねぇ。大崎善生は小説も書いてるけど、書き方が本当に丁寧でうまい。それでいくと、『こんな夜更けにバナナかよ』もおもしろいよ。医療もののノンフィクションは読んでて辛い内容のが多いから通読できないことが多かったけど、これはすごいよ、本当に「戦場」って感じで、読んでてめそめそしてる暇ないからね。
夫 そうか、読んだことないな。大泉洋で映画になるのだよね。
嫁 そうです、それです。
夫 だんだん論点がずれて好きな本を並べているだけになっているようだけど、結局小説しか読まない層にアピールできるポイントとはなんでしょう?
嫁 そうだな、とにかくエネルギーに満ちているところかな。なんかわからないけど、読み終わると「自分もなにかできるかも」「明日からまたがんばろう」って思えるところでしょうか。「ああ面白かった」で次の瞬間には忘れちゃう、とかじゃなくてずっと心の中でくすぶる感じって言うのかな。
夫 ちょっと待って。今思ったけど、フィクションだからとかノンフィクションだからとかじゃなく、やっぱり面白いものはどんなジャンルでも読者の心に火をつけることは出来るんじゃないかな。フィクションとノンフィクションの境目が曖昧に見える作品もあるし。前に読んだ『罪の声』とか凄くて、実際の未解決事件をモチーフにしてるんだけど、もしかしたら真実はこうだったんじゃないかって思わせるような内容だった。結論も書き方も凄く説得力がある。
嫁 それでいえば『空飛ぶタイヤ』もそうだよね。実際に起きた事件を基にしてる。
夫 そうね。ノンフィクションだって小説みたいな書き方をしてる本もあるしね。
嫁 そうなるともう本当にどっちが、みたいなのはないのかもね。おもしろいものはジャンルを問わず読んでほしい、っていうところでしょうかね。
夫 なんかいろんなところに話が転がったうえに結論は別のところに落ち着いてしまったね。しかも長い。まあ、これこそがリアルってことなんですかね。我々の日常なんてこんなもんだ。
◇◇◇
いや、今回は本当に最長かもしれません。しかも話も散らかりましたね。
でも、ここで挙げている本はどれもおもしろいので気になるものがあったらぜひ読んでみてほしいです。
で、話にも出てきたEテレ「ねほりんぱほりん」の新シリーズがまた10月から放送されます!やったぜ!!
下世話な番組が嫌いな夫に嫌がられながら観たいと思います!